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ノルウェイの森 Norwegian Wood・アスミック/フジテレビ・ソニーピクチャーズエンターテイメント

2014-07-27 17:14:05 | 映画・DVD・CD

 ノルウェイの森 Norwegian woodは、2010年に製作された日本製作の映画。世界50の地域で公開配給された。


 原作は、いわずと知れた1987年に発表されて記録的なベストセラーとなった村上春樹氏の小説。原作は、日本国内だけで1000万部越えを果たした超ベストセラーで、英語、中国語、ドイツ語、フランス語を初めとして30言語以上に翻訳されており、世界各国で出版されている。青いパパイヤの香りや夏至など、叙情的な作風で知られるベトナム系フランス人のトラン・アン・ユン監督により映像化された。主役のワタナベ役には松山ケンイチさん、直子役に菊池凛子さん、緑役に水原希子さんが出演している。


 物語は、ドイツのハンブルク空港でふと流れてきたビートルズのノルウェイの森を聞いて、激しい混乱を覚えた37歳になった僕の回想より始まる。大学に入学したばかりの僕は、あらゆる物事と自分の間にしかるべき距離を置くことを自分に課していた。そんな時に自殺してしまった親友キズキの恋人であった直子との再開を果たす。そこに外務省入りを目指す2学年上の東大生永沢とその恋人のハツミ、春を迎えて世界に飛び出したばかりの小動物のように瑞々しい生命感を体中からほとばしらせているミドリという同級生の女の子が絡んできて、彼、彼女らとの関係を軸にして物語は展開していく。


 長いこと日本で最も多く売れた小説(現在は異なる)として知られた原作の映画化ですから、評価することがかなり難しい作品だと思います。村上春樹氏の初期の代表作ということもあり、思い入れの強い人も多いのか、アマゾンや映画サイトでの評価も星★~★★★★★とばらばら。しかも、単行本2冊分の長編小説を133分の映画にするのですからなおさら。そこに時代背景などを知る日本人監督をあえて使わずに、映像派の作風で知られるベトナム系フランス人の監督を使ったかなりの変化球(冒険)は、個人的には良かったのではないかと思います。原作冒頭のドイツのハンブルク空港のシーンこそ省かれましたが、大学に入学したところから、どこでもない場所の真ん中からミドリへ電話をかけるラストシーンまで、日本とは思えない幻想的な風景とともに、しっかりと映画の中に再現されて収められています。


 物語の舞台となるのは、70年安保闘争の吹き荒れる私立大学(村上春樹氏の母校、早稲田がモデルともいわれる)のキャンパス。映画には、今見るとまるで学祭のようなキャンパスの喧騒が再現されていますが、私自身はこの時代を知らないため、時代のリアリティや空気感のようなものが表現できているのか、どうかはわかりません。原作が出版されたのは1987年のバブル景気の頃で、この頃に原作を読んでいたのは、この時代を直接には知らない若い読者が多かったのではないかと思います。この頃には、現代思想が流行っていたりして、純文学を読んでいるのがちょっとかっこいいという時代背景もありました。自分がこの本を読んだのは、それよりもさらに少し遅れて90年代に入ってからでした。


 学生運動というお祭り(祝祭の空間)の物語が、バブル景気というお祭り(祝祭の空間)の時代に出版されたという構造(時代背景)が、この作品にはあると思います。自殺した友人や精神科に通う友人の元彼女など、もともとそれほど身近なリアリティのある話ではありませんし、物語自体も37歳になった“僕”の回想という形を取っており、そういう意味ではどこにも存在しない場所の物語だといえるのかも。しかも、この原作が出た当時の若い読者にとっては、想像するしかない(親の世代の)時代背景の中での物語なので、そういった意味でも時代背景を知らない映像派の外国人監督の手による映画化というのは、ぴったりだったのかもしれません。


 講談社より発売された映画版ノルウェイの森の公式本。トラン・アン・ユン監督や役者さん、スタッフのインタビュー、撮影の様子、ロケ地などが解説してある。


 原作の舞台となったのは、村上春樹の母校である早稲田大学といわれているが、映画でも早稲田大学や神戸大学などでロケが行われている。


 タイトルとなったノルウェイの森が収められたビートルズのラバーソウル。アイドルからアーティストへの転換期のアルバムにあたり、自由な感じのする作品が多い。


 ノルウェイ製の木材を使った内装の女性の部屋で一夜を過ごし、朝起きると彼女はいなくなってしまったという、ジョンらしい軽い内容の詩。ノルウェイの森なのか、家具なのかという話がありますが、Knowing She Wouldを語呂合わせでNorwegian Woodとしたという説も村上氏は紹介している。朝起きると小鳥は飛んでいってしまったという一節があることから、両方の意味をかけているということで良いのでしょう。それにしても、ノルウェイ製の(安物の)家具というタイトルの歌詞に、ジョージの引くシタールの効果も大きいのでしょうが、これほど幻想的で感傷的なメロディをつけるとは。ごく当たり前のように映画本編でも流れますが、楽曲の使用許可が下りたこと自体は、奇跡に近いことなのだとか。


 原作を読んだのは、90年代に入ってから、ねじまき鳥クロニクルが出たあたり。村上春樹を熱狂的に好きな友人がいて、その存在はそれ以前から知っていたのですが、手に取る機会がなかった。ということで、原作の内容自体もドイツのハンブルク空港でのオープニングと、どこでもない場所の真ん中からミドリに電話をかけるラストシーン以外はほとんど忘れていた。映画(DVD)を見たのは2年くらい前で、その時にはなぜだか分からないけどすっと入ってきて泣けました。原作を読んだのは20代の頃で、その時には37歳になった僕が、18年も前のことを思い出してそんなに混乱するのものなのか不思議だった。それが、わかるような年齢になっていたということなのでしょうかね。ということで、個人的評価は星★★★★。この原作を、よくこの形に映像化できたなと思う、良い映画でした。



参考:Wiki ノルウェイの森 Norwegian Woodの項、ノルウェイの森 公式ガイドブック/講談社


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