
1984年に社会思想社から発売されたゲームブック火吹山の魔法使いです。スティーブ・ジャクソン、イアン・リビングストンという2人のイギリス人ゲームデザイナーによって書かれた、ファイティング・ファンタジー・シリーズの第1作目にあたります。日本ではこれが発売された時には、まだドラゴンクエスト(1986)も発売されておらずPCゲーム等でどうやらRPGという遊びがあるらしい、ということが知られ始めた頃です。新しい遊びへの期待感もあってか、この作品はかなりのベストセラーとなったようです。

遊び方としては、文章の各項ごとに数字が振ってあり、自分が物語の主人公となって文章間を行き来して行動を決められるようになっています。またサイコロを振ってその数値によって戦闘を行い勝敗を決めるといった、TRPGのダンジョンズ&ドラゴンズなどの影響も受けています。いわば複数でないと遊べなかったTRPGを一人でも気軽に遊べるようにしたものといっても良いでしょう。(TRPGにも一人用のソロシナリオはありますが)

物語は冒険者となって、邪悪な魔法使いの住む火吹山へ潜入をするという話です。個性の異なる2人のデザイナーの合作による物で、前半までをリビングストン、後半部分の川を越えて以降をジャクソンが担当した物となっています。その後も2人はそれぞれゲームブックを書き続けますが、2人の個性の違いがこの第1作目ですでに見て取れるのがわかります。ゲームブック界の藤子不二雄(あるいはゆでたまご?)とでも言えるでしょうか。
当時まだRPGは一般的ではありませんでしたから、ゴブリンやオークなどファンタジーの世界を日本人に教えてくれるという役割も果たしていました。遊んだ感じとしては、他に類する物がありませんでしたから、とにかく新鮮で面白かったという印象だったでしょうか。PCのRPGと違って戦って経験値を上げるのではなく、知恵をこらしてなるべく戦闘を回避したり、できるだけ有利にいくよう行動するという辺りが、想像力を刺激してよりリアルに感じる部分でした。

これはそうとう売れたためか、結構今でも100円コーナー等で見かけます。扶桑社より復刻もされましたので、今でもわりと簡単に手に入れる事が出来ます。さすがに今となっては、サイコロを振り計算をしながら遊ぶのはしんどいでしょうが。
