goo blog サービス終了のお知らせ 

消費期限終了

リタイアーのよもやま話

経験

2017-05-04 21:01:30 | 読書

上橋菜穂子の「物語ること、
生きること」にあった文章であ
る。

経験は大切です。
でも、べつに、人と違うことを
たくさんしなければいけないと
いうことではなくて、むしろ、
人と同じことをしていながら、
そこに人とは違うものを感じ取
ることのほうが大切だと思いま
す。

以上。

この文章を読んで、ハッとして
しまった。

私達は、往々にして、

「人と違うことをたくさんしなけ
ればいけない」という思いが何処
かにあって、

時間があると、それを退屈な時間
と感じ、無為な時間かという焦り
のもと、何かと、忙しく立ち回る
ところがあるものだ。そして、忙
しい暇がないと、嘆いたりするも
のだ。

私達は、自分の人生に自信がない
ものだから、さも、有意義な存在
かと、思うために、何かとやりた
がる。

しかし、
「人と違うことをたくさんしなけれ
ばいけない」と思いつつも、自分が
見たいものを(いつも同じ内容だが)
見ていて、同じことを何度も繰り返
しているだけのことになりがちだ。
実際は。

ところで、
だいぶ前に、感服した言葉があった。

次のような文章だ。

「美しい景色を探すな。景色の中に美し
いものを探すのだ」―ゴッホ

「発見の旅とは、新しい景色を探すこと
ではない。
新しい目を持つことなのだ」―ブルースト

「おもしろがる実力があれば、世界中どこ
でもおもしろい。実力がない人は変わった
ものでないと、よく見えない」―西江雅之

何かと、これらの文章を思い出し、気を引
き締めている。

おそらく、最悪は。これだ。

一つの考え方しかできないのであれば、
その考え方に沿った生き方しかできな
くなってしまう。

20年の経験をもっている人がいる。しかし、
1年の経験を20回繰り返しているだけの人
もいる。


物語ること、生きること

2017-05-03 20:38:07 | 読書

少し前に、上橋菜穂子の「獣の
奏者」を読み終えた。

前に彼女の「精霊の守り人」シリ
ーを読んでいたせいもあって、読
む気になったからだ。

そして、その勢いで、彼女の「物
語ること、生きること」も読み終
えた。

この本の帯びの表には、
「どうしたら作家になれますか?」
とある。

そして、裏には
「物語に夢中だった少女が、作家に
なるまで。」とある。

読んで、思いだしたことがあった。

それは、「獣の奏者のⅢ」にあっ
た文章である。

次の内容が、それだった。

 しかし、話してみれば、ダミヤさま
は、思っていたよりもずっと懐の深い
男だった。

世の穢れにさらされて長いあいだ
生きてきた大人は、清廉な志を気恥ず
かしく思うものなのだよ。

と、ダミヤさまは、明るい声で言った。

だが、ほんとうに大切なのは、ど
れほど世の穢れにさらされても、清廉な
志を捨てずに生きることなのだ。

以上。

である。

ここで言う。

「清廉な志を捨てずに生きる」という
一途な思いを抱き続けている人こそが、
実は、上橋菜穂子自身のことのように
思えたのである。

この本は、「どうしたら 作家になれ
ますか?」への答えとして、書かれた
ように思われる。

しかし、読んで思うに、誰もが作家に
はなれない。というのが、私の答えだっ
た。

この本を読むと、努力して作家になれ
るものではない。というのが結論だ。

彼女は、作家になる以外の生き方は、
できないのである。

非常に文学的表現だが、「神から選
ばれた人」なのだ。

いとも気軽に作家になろうという人
を戒める本ではなかろうか?

松本人志は、「哲学」という本で
こう厳しく言っている。

才能がなかったらこの世界に入っ
てきてはいけない

いってる意味、わかります?

好きなら才能はあるか。

それは絶対に違う。好きでも、才
能のない人間はいる。

 さっきも書いたけれど、才能が
なかったらそれは辞めないといけ
ない。

好きならやっていいのか、好きだ
ったらやる権利はあるのか。

僕はそんな権利はないと思う。

才能がなかったら、辞めないと迷
惑だ。

一所懸命やってる奴にも迷惑だし、
見てる側にも迷惑だ。

才能がないにもかかわらず、やろ
うとするのはワガママというか、
その人のエゴだ

と思う。それは、自分の才能を信
じるということとは違う。

 昔、こいつ才能ないなあという後
輩がいて、いったことがある。

「辞めろ。辞めた方がええよ、絶対
に無理やから」って。

「いや、好きなんですよ」ってその
男はいっていたけれど。

好きならやっていいのか。

それは違うだろう。

以上。

こういう厳しいことを彼は言って
いる。

わたしは、こう言いきられて、自分
の人生を反省した。

しかし、無い才能に人生を浪費した
気もしないこともないが、結果的に
言い意味で、平凡で、人生を大過な
く過ごせた気もしないでもない。

無い才能にしがみついたおかげで、
人生を棒に振るようなことが起こら
なかった気もするからである。

複雑な気分であるが。

少なくとも、退職してみて、ちゃんと
年金があるという事実は、重たいもの
がある。

「見果てぬ夢」に拘り続けて、人生
を棒に振った先輩や後輩を思うと、
その重みは、一段と増す。

それは、さておき。

自分は、本当のところ、何をやりた
かったのだろう。と思う毎日である。

You Tubeで、Gerald Finzi を聴いて
いたら、そのうち、日頃聴いてない曲が
ながれてきた。

今日は、なんとなくこの曲に親しみが
わいている。







獣の奏者

2017-04-20 20:56:11 | 読書

獣の奏者

上橋菜穂子

講談社

を一気に読み終えた。

前に「精霊の守人」の読んだが、似た
イメージである。

大人の童話と言えると思う。

ストーリーは、主人公の少女エリンが成長して
展開されるが、どうしてどうして、哲学的だ。

 
特に、個人的に衝撃的な文章に出会った。

これである。

 

クリウは書物を開き、ぱらぱらとめく
ってみせた。

 

「これは、わたしがいま書いている本。
二つの隊商都市が辿ってきた歴史を比較
しているの。面白いわよ。こういう作業
をすると、なにが街を動かし、国を動か
すのか、よく見えるわ。

 

長い時の流れの中で多くの人々がくり返
してきた選択と、愚行。そういうものを
見つめていると、人というものが、どれ
ほど多様で、でも、どれほど似ているか
が見えてくる」

 

クリウの話を聞きながら、エリンは胸の
底が疼くような感覚を味わっていた。
子どものころに、よく感じた衝動だった。

 

なにか、自分がこれまで気づかなかった
こと- この世を動かしている、目に見え
ぬ糸に連なるなにかが、すぐそこに見
えそうになっているという、あの胸が熱
くなるような予感。

 

「わたしは┄┄」

 

思わず、エリンは口を開いた。

 

「生き物の理を学んでいます。この世に
生きる膨大で多様な生き物が、どうして、
このように在るのか知りたくて」

 

そっとクリウの本に触れながら、エリン
は言った。

 

「あなたがいま、おっしゃったことは、
人という生き物の、それですね」

 

クリウの目が輝いた。

以上。

実は、わたしの気持ちのなかにも、こ
のような感情が潜んでいる。

「生き物」を「人生」に置き換えても
いいし、「人」に置き換えてもいい。

十分に正確に言い表せないが。

いずれにせよ。

このような真摯な心持ちを、登場人物
に託して、語る作品は、わたしの読む
本の領域が狭いのか、今までの記憶に
ない。

小説がメルヘンっぽいので、深刻に
ならないのだが、それでも、人の
人生を語る小説だと思う。


できれば、政治家に読んでもらいた
いものだ。


今、北朝鮮とアメリカが挑発し合って
いるが。


登場してくる王獣と闘蛇が「核」にも
思えたりして、意味深な気分になるが。


日本人が教えたい新しい世界史

2017-04-07 10:29:51 | 読書

日本人が教えたい
新しい世界史

宮脇淳子

徳間書店

を読み終えた。

最近、日本史関係で、面白い本を
続けざまに読んでいる。

そこで、最近、本屋で日本史を覗
いたら、この本が目についた。

読んで、最高である。

目次はこうである。

第1章 「歴史とは何か」という
大問題

第2章 歴史のある文明と
のない文明

第3章 世界で初めて歴史をつ
くったヘロドトス

第4章 キリスト教文明が地中海
文明に加わった

第5章 中国は日本人がつくった

第6章 『史記』に呪縛された中
華圈の歴史観

第7章 日本文明はいかにして成
立したか

第8章 『日本書紀』の歴史とは
何か

第9章 国民国家が世界史を変えた

第10章 マルクスに騙され続けて
いる世界史

第11章 日本の歴史教育の大問題

第12章 日本人がつくる世界史

以上。

 

第3章では、アジアの概念につい
て取り上げられている。

これが、目から鱗が落ちる思いで
最高である。

第5章も面白い。
中国に関する内容である。
焚書というのがあったが、この
本質が語られていて、これも
目から鱗が落ちる思いである。


第8章では、「日本の成立」に
ついてである。これが、非常に
面白い。ユダヤ国家の成立を思
い出した。

邪馬台国の問題より、こっちの
方が重要である。

第9章国民国家が世界史
を変えた

フランス革命とナポレオンに
ついての記述が非常に面白か
った。

わたしたちは、歴史で、フラ
ンス革命とナポレオン(皇帝)
を違和感なく、受け入れている。

何かしたら、腑に落ちないもの
があったが、その原因が分かっ
た。

外の本にもあったが、もしか
すると、本当は「フランス革
命」は失敗で、たまたま収拾
がつかないところを、ナポレ
オンが台頭して、フランス国
家を成立させたというのが、
本当かもしれない。

たまたま、このナポレオンの
フランス以降ヨーロッパで、
近代国家を作り出す機運が、
起こり、フランス革命が成功
したかのような、受け止め方
をされたかもしれない。

結局、セレンディピティのな
せる業だったかもしれない。

その後、ヨーロッパの近代国
家群の歴史を牽引した時代が
続いたということかも知れな
い┄┄!。

いずれにせよ、高校生の必修
副読本にしてもらいたい本で
ある。

そして、ぜひ、多くの国民に
読まれて欲しい本だと、思わ
れた。

よく、本を読み続けて、何の
益があったんだろうと思うこ
とが、多々あったりしたのだ
が、このような本に出会うと
本を読む習慣があったことを
幸運に思う。

よくぞこの本を書いてくれた
と著者に感謝したい。


東大流よみなおし日本史講義を読んで⑶

2017-03-11 21:09:03 | 読書

東大流よみなおし日本史講義
を読んで⑶

東大流よみなおし日本史講義

山本博文 東京大学教授

PHP

 

読み終わった。


その中で、

学生叛乱はどうして起きたの
ですか?

というのがあって、興味深く
読み始めた。


ところが、である。

その内容が、抱腹絶倒の訳の
分からない文章が書きつらね
られていて、卒倒しそう。

ここで、コメントをした人は、
それなりの実績のある人たち
なのだが、どうして、この程
度の理解しかできないのだろ
う。と不思議でしようがない。

そういう意味では、この項目
は、設定してほしくなかった。

このような見当違いの見解が
流布するのは、すごく残念
である。

わたし自身、あの時代はなん
だったのかと、ズーっと自問
自答してきた。

未だに、その思いをまとめ上
げることはできていないが、
少しずつ、その、言葉が見つ
かりつつあるところである。

いつの日か。である。

このブログを読まれている
方で、あの時代に立ち会っ
た人がいれば、どのような
感想をもたれるか、興味
深いのだが

本屋で、ちょっとその箇所
だけでも、覗いていただけ
ればと、願っているところ
である。