AGNUS DEI - Sacred Choral Music - The Choir
of New College, Oxford. E.HIGGINBOTTOM
[Full Album]
上橋菜穂子の「鹿の王」を、だいぶ
前に読み終えた。
その4巻に、気を引いた文章があった。
ヴァンは、ぼんやりと天幕の筋交い
を見ながら、ふっと頭に浮かんでき
たことを口にした。
「父が言っていた。人というのは
哀しいもので、なにをやっても、ど
こかに悔いが残るもんだと」
「……」
「人に比べれば獣はあっさりとし
たもので、迷いなんぞないように見
えるが、それも、おれたちが勝手に
そう思っているだけで、獣には獣な
りの悩みがあるのかもしれん。
この世に生まれたものは、みな、ど
うもがいても結局、悔いを背負って
生きるのかもしれん、と」
そう言っていた父の顔を思いだし、
ヴァンは苦笑を浮かべた。
である。
実は、「死ぬ前に後悔すること」なん
て本があって、何冊か読んだ記憶が
ある。
いろんな患者の言葉を紹介している。
読んで、どれもこれも思いあたるもの
があって、やるせないものがあったが、
自分が、違う人生を選択できたかとい
うと、それも否であったので、複雑な
気分になった。
先にあげた「鹿の王」の文章に出会っ
て、「死ぬ前に後悔すること」の本を
思いだして、ふと気づいたことがある。
何らの人生を選択することは、他の
人生を放棄することである。という
事実である。
さて、
「死ぬ前に後悔すること」という本
に関心がわくじたい、もう人生が出
来上がっている人が大多数であるは
ずだから、読んだからって、大方の
人は、手遅れではないかと思うのだ
が、どうだろう。
ところで、
仮に、大学を卒業したばかりの人が
この本を選んで、後悔しない人生を
目指すことで、後悔しない人生が可
能かというのも、おおいに疑問符が
つくのではなかろうか。
つまり、何かを選択しないといけな
いからだ。
もしかして、
後悔しないことに拘泥した人生を後
悔することになるかも知れぬ。
等、いろいろと考えてしまったので
ある。
ところで、このブログを書いている
うちに、ネットでとんでもない記事
を見つけた。
これである。
【幸せの定義 ケース−7】 人生の勝
ち組として歩んできた男が定年後に悩
み、苦しんだ事は何なのか?年代を問
わず皆さんに読んで頂きたい話。
今回は、世間一般で言う”成功”
を収め、順風満帆に生きてきた60
過ぎの男が、定年退職を機に、観念
的に”死への恐怖”や社会から離れ
ていく寂しや哀しさなどの虚無感
や焦燥感を抱き、悩み苦しんでしま
ったケースです。
誰もが羨むような人生の勝ち組で
ある男
岡田さん(仮名)は団塊世代の生ま
れで、受験戦争や出世争い、伴侶
の争奪、その全てに勝利してこの
3月に無事定年退職します。
勤め先は一流電機メーカーなので、
退職金も半端ではなく、老後の年
金生活にも不安はありません。
二人の娘は有名女子大を卒業させ、
安心できる家へ嫁がせています。
彼は『自分は人生の成功者だ』と
つい最近まで信じて疑いませんで
した。
過去を振り返ってみても、中学で
はスポーツ万能で成績も優秀。
学年で500人中トップ3から下
がった事はなく、高校も都内有数
の超一流進学校へ進み、硬式野球
に打ち込みながらも現役でこれ
また誰でも知っている国内最高峰
の超有名大学へ入学。
卒業後は難なく一流電機メーカー
へ就職し、言うまでもなく仕事が
出来るので、すぐに出世コースへ。
仕事は云うまでもなく出来てすぐ
に出世コースにのる。
美人な嫁さんも押しの強さでもの
にし、仕事と家庭を見事に両立し
今まで来たそうです。
こんな人間が実際にいるのか、と
私も少し驚きました。
以上。記事の一部を抜粋してみました。
この記事を最後まで読んでみて驚いて
いる。
団塊世代、我々の世代で、あの学生
運動の時代に、このような生き方を
している人がいたのだ。
結局、こうなると、どのような生き方
をしても、どこかに悔いは残るものだ
ということかも知れぬ。
「棒ほど願って針ほど叶う」
という言葉があったが、
針ほどでも願いが叶ったら良しと、
納得するしかないかも知れぬ。