サピエンス上
ユヴァル・ノア・ハラリ
柴田裕之・訳
河出書房新書
だいぶ前だが、読み終えた。
そのとんでもない独創的過ぎ
る考え方に、愕然とする。
その本の上巻の表紙の裏に
は、次のような文章があっ
た。
アフリカでほそぼそと暮ら
していたホモ・サピエンス
が、食物連鎖の頂点に立ち、
文明を築いたのはなぜか。
その答えを解く鍵は「虚構」
にある。
我々が当たり前のように信
じている国家や国民、企業
や法律、さらには人権や平
等といった考えまでもが虚
構であり、虚構こそが見知
らぬ人同士が協力すること
を可能にしたのだ。
やがて人類は農耕を始めた
が、農業革命は狩猟採集社
会よりも苛酷な生活を人類
に強いた、史上最大の詐欺
だった。
そして歴史は統一へと向か
う。その原動力の一つが究
極の虚構であり最も効率的
な相互信頼の制度である貨
幣だった。
なぜ我々はこのような世界
に生きているのかを読み解
く、記念碑的名著!
次は、上巻の目次である。
第1部認知革命
第1章 唯一生き延びた人類種
不面目な秘密/思考力
の代償/調理をする動
物/兄弟たちはどう
なったか?
第2章 虚構が協力を可能にし
たプジョー伝説/ゲノ
ムを迂回する/歴史と
生物学
第3章 狩猟採集民の豊かな暮
らし
原初の豊かな社会/口
を利く死者の霊/平和
か戦争か?/沈黙の帳
第4章 史上最も危険な種
告発のとおり有罪/オ
オナマヶモノの最期/
ノアの方舟
第2部 農業吊命
第5章 農耕がもたらした繁栄と
悲劇
贅沢の罠/聖なる介入/
革命の犠牲者たち
第6章 神話による社会の拡大
未来に関する懸念/想像
上の秩序/真の信奉者たち
/脱出不能の監獄
第7章 書記体系の発明
「クシム」という署名/官
僚制の驚異/数の言語
第8章 想像上のヒエラルキーと
差別
悪循環/アメリカ大陸にお
ける清浄/男女間の格差
生物学的な性別と社会的・
文化的性別/男性のどこ
がそれほど優れているの
か?/筋力/攻撃性/家
父長制の遺伝子
第3部人類の統一
第9章 統一へ向かう世界
歴史は統.に向かって
進み続ける/グローバ
ルなビジョン
第10章 最強の征服者、貨幣
物々交換の限界/貝殻
とタバコ/貨幣はどの
ように機能するのか?
/金の福音/貨幣の代
償
第11章 グローバル化を進める
帝国のビジョン
帝国とは何か?ノ悪の
帝国?/これはお前た
ちのためなのだ/「彼
ら」が「私たち」にな
るとき/歴史の中の善
人と悪人/新しいグロ
ーバル帝国
さて、次の文章は、下巻の
表紙の裏の文章である。
近代に至って、なぜ文明は爆
発的攻進歩を遂げ、ヨーロッ
パは世界の覇権を握ったのか?
その答えは「帝国、科学、資
本」のフィードバック・ルー
プにあった。
帝国に支援された科学技術の
発展にともなって、「未来は現
在より豊かになる」という、
将来への信頼が生まれ、起業
や投資を加速させる「拡大す
るパイ」という、資本主義の
魔法がもたらされたのだ。
そして今、ホモ・サピエンス
は何を望み、テクノロジーは
あなたをどのような世界に連
れて行くのだろうか?
人類史全体をたどることで、
我々はどのような存在なのか
を明らかにする、かつてない
スケールの大著!
以上。
次ぎに下巻の目次の紹介であ
る。
第12章 宗教という超人間的秩序
神々の台頭と人類の地位
/偶像崇拝の恩恵/神は
一つ/善と悪の戦い/自
然の法則/人間の崇拝
第13章 歴史の必然と謎めいた選択
1後知恵の誤謬/2 盲
目のクレイオ
第4部 科学革命
第14章 無知の発見と近代科
学の成立
無知な人/科学界の教義
/知は力/進歩の理想/
ギルガメシュ・プロジェ
クト/科学を気前良く援
助する人々
15章 科学と帝国の融合
なぜヨーロッパなのか?
/征服の精神構造/空白
のある地図/宇宙からの
侵略/帝国が支援した近
代科学
第16章 拡大するパイという
資本主義のマジック
拡大するパイ/コロンブス、
投資家を探す/資本の名の
下に/自由市場というカル
ト/資本主義の地獄
17章 産業の推進力
熱を運動に変換する/エネ
ルギーの大洋/ベルトコン
ベヤー上の命/ショッピン
グの時代
第18章 国家と市場経済がもた
らした世界平和心
近代の時間/家族とコ
ミュニティの崩壊/想
像上のコミュニティ/変
化し続ける近代社会/現
代の平和/帝国の撤退/
原子の平和
第19章 文明は人問を幸福にした
のか
幸福度を測る/化学から
見た幸福/人生の意義
/汝自身を知れ
第20章 超ホモ・サピエンス
の時代ヘ
マウスとヒトの合成/ネア
ンデルタール人の復活/バ
イオニック生命体/別の
生命/特異点/フランケ
ンシュタインの予言
あとがき-神になった動物
以上である。
この本の感想を述べたいのだが、
「役者あとがき」の文章をまず
紹介してみたい。
訳者あとがき
読書の醍醐味の一つは、自分の
先人観や固定観念、常識を覆され、
視野が拡がり、新しい目で物事を
眺められるようになること、いわ
ゆる「目から鱗が落ちる」体験を
することだろう。読んでいる本が、
難しい言葉で書かれた抽象論だら
けではなく、一般人でも隔たりを
感じずにすっと入っていける内容
が、わかりやすい言葉で綴られて
いるものだと、なおありがたい
「まさにそのような醍醐味を満喫
させてくれるのが本書『サピエン
ス全史」だ。
以上。
この文章が、まさに、この本の
読後感を語っていて、嬉しく感
じられてやまない。
かなり、昔のことだが、共同幻
想論、唯幻論等の言葉にふれた
ことがあった。
この『サピエンス全史』を読ん
でこの言葉を思い出した。
その拡大版みたいな気もする。
そして、非常に乱暴な話だが、
「赤信号みんなで 渡れば怖く
ない」という文章を思い出して
しまった。
もしかすると、人類は、赤信
号を強引に渡ってきたかもし
れぬ。
また、「嘘も100回言えば真実
になる」というのもあったが、
この本を読むと、人類の存在
そのものが、結果的に、壮大
な虚構、妄想のもとに、成り
立っているのではと、感想を
持った。怖いことに、説得力
があるのだ。
この本を、ぜひとも多くの方
に読んでもらいたいと思った。
あまり、感受性がありすぎる
と、精神的なダメージを与
えるかもしれぬ。
自分の精神が自由になると
いうふうに考えれば、幸い
なのだが。
個人的な受け止め方として、
結局、自分の都合のいい妄想
を楽しく生きる生き方も
「在り」だという受け止め方
もできるのではと思った。
いつの間にか、誰かの都合の
いい妄想で踊るより、自分の
心地よい妄想を生きた方が幸
せかもしれぬ。である。
勿論、身の程をわきまえたも
のでなれば、ということであ
る。
トランプ氏柄にもなく、大統
領のまねごとをしたかったよ
うだが、それが、吉にでるか
狂にでるか、見守っていたい
ものだ。