新月伐採と関連して、木を倒す方向についても一言。
私が初めて具体的な林業作業を勉強するために通った吉野では、みんな尾根側に倒す。切り株の上に乗せるようにするのがプロだ。そして何か月か葉枯らしする。すると、まだ生きた葉が水分を蒸散させるから、かなり含水率が下がって、心材の色も黒からピンクに変わる。これをアク抜きと言った。
アク抜きは、吉野材の特徴で、水分の多いスギに必要らしい。他の地域では言わないからだ。面倒だが、アク抜き後のピンクの木肌はほれぼれするほど美しい。
しかし、木を尾根側に倒すのは、結構大変だ。通常斜面に生えている木は、谷側に枝を伸ばしていて、重心も谷にかかっているものだ。それを反対側に倒すためには、切り口の作り方などに様々な技量がいる。ロープをひっかけて引っ張るような努力もする。
川上村の辻谷さんは、倒す方向に意味があるのか、と若いころに実験的に谷側に倒して葉枯らしをしたそうだ。しかし結果は、乾燥がものすごく遅かったという。
また谷側に倒すと、木がそのまま斜面を滑り落ちる可能性が高くて、危険だし、木も傷つく。やはり吉野の知恵はすごいのだ、と思わせる。
ところが、その後ほかの林業地を歩いて、倒す方向にこだわりのないところが多くて驚いた。どっちに倒したって、重機で運び出す(葉枯らしをしない)のだから構わないじゃないか、と言う人さえいた。すると、倒しやすいのは谷側だ。
意外と、しっかりした林業技術というものは、伝わらないものである。
素人考えだが、やはり切り口を下向き(梢を尾根側)にしないと、樹液は抜けにくいのかもしれない。しかし幹の導管は、上に水を運ぶ構造になっているから、谷側に倒しても、梢側を伐ったら、つまり末口を作ったら、案外樹液が抜けやすくなって乾燥しやすいかもしれない。
「新月伐採」に関しても、いつ伐るかよりも、倒す方向や葉枯らしの内容の方が重要な気がするのも、そんな思いからだ。
http://www.nw-mori.or.jp/vgs2003/6jikanme/battousagyo06_02.html
でも、尾根側に倒す場合は、切り株に切り口を乗せるような形になるので滑り落ちず、谷側に倒すとストッパーがなく、滑り落ちやすい……こんな理屈だと思います。
ただ枝振りによっては、切り方も変えるし、倒す方向も違います。横に岩のある場合、木が二股の場合、みんな独自の技術があるそうです。
この違いや理論は、本職に聞いてみないと確実なことは言えないのですが、吉野は他の地方とは違った独特な技術があることは確かです。
それらの技術を映像で記録したいと考えているんですが、予算がなあ……。
黒ジンの材を大量に購入してしまい親父に怒られた経験があります。丸太のとき水に浸けておくと黒が抜けるのにと言われました。
田中さんの人脈だったら羽鳥孝明さんや石山恵子さんのこともご存知でしょうね。
みどりのブックレットに山の親父のひとりごと1,2というのがあります。 中味は昔の職人の技を聞き書きで記録に残したもので、想像力を働かせながら読む必要のある本でしたが、結構面白かったです。(isbn4-88965-141-1,-160-8)
田中さんのビデオが出来て市販されるようになったら多分真っ先に買いますよ(笑)
ちなみに、地方によってはアク抜きをしなくても最初からピンクだとか。木というのは、本当に個体差があって難しい。
羽島さんなど名前は存じあげていますが、接点はないですね。一度お逢いしたいものです。山の技は、今記録しないと消えてしまうでしょう。
「森の聞き書き甲子園」という高校生に農林業の技を聞き取らせる事業を農水省でやっていましたが、木の倒し方、なんてマニアックな記録は取れないなあ。
どう頑張っても採算取れないから、補助金もらってやりたいと思っています。といつもの補助金批判を忘れて書く(^o^)。
>木の倒し方、なんてマニアックな記録は取れないなあ。
個人的には,ブリ縄を会得したいところですね.まさか絶滅寸前の技ではないとは思うのですが,習得にはもう急いだほうがいいのでしょうか・・・?
東大の秩父演習林の方には何度か話を伺ったし静止画では見ているのですが,まだ動画では,あるいは実見としては,見ていないのです.
北米に行ったとき,セコイア国立公園のビジターセンター(レッドウッド国立公園だったかもしれません)でみた過去の森林職人の映像が印象てきでした.ブリ縄とはまた違い,一本のループになったロープを用いて,ホールドのない木をどこまでも登ってゆくのです.
元ケイバーとして,長いロープと金具をつかった垂直の登降技術はある程度マスターしているつもりですが,しかしシンプルな木登り技術もなにかと知りたいところであります.
http://blog.livedoor.jp/mokuren3/archives/50499516.html
材料は麻縄なんですかね?
新月伐採
デジタル台風:月齢とアメダス1時間降水量の関係
http://agora.ex.nii.ac.jp/digital-typhoon/amedas/survey/moon_phase_rain.html.ja
1時間降水量75mm以上の出現回数:月齢04と月齢16~18に多い?
1時間降水量50mm以上の出現回数:月齢04と月齢11~16に多い?
よくわかりません。
>どちらに倒す
森からの宅配便>林業試行錯誤>間伐葉枯らし体験
http://www.yasuda-t.com/test/testindex.htm
山側に倒してますね
でも傾斜がきつければ、そのまま作業者に
向かってくるので
林災防は谷側に倒せでしょ
木の倒し方も、いかに正確に倒すか競技にしてしまうとか。昨年の川上村杣人選手権では、そんな項目もあったな。競技でバンバン木を伐採したら、環境破壊と言われるか。
それにしても、デジタル台風の
>1時間降水量75mm以上の出現回数:月齢04と月齢16~18に多い?
>1時間降水量50mm以上の出現回数:月齢04と月齢11~16に多い?
は、結局、新月と降雨量との相関を見いだすことはできなかったことになるのでしょうか。
まあ、こういうこと研究してる人もいるということで
伐倒方向と葉枯らし乾燥の効果について
はっきり言及しているのは三重県だけでした
木の仕事 山の仕事
http://blogs.yahoo.co.jp/morisho5/7380799.html
通常の皆伐による集材の場合,
木の伐倒方向は基本的に山手になる。
葉枯らし乾燥の効果もあるし,架線で出す際も,
元をくくれば比較的容易に線下へ全幹(木まるまる1本)で吊ることができる。
上村林業(熊本県)
http://ww71.tiki.ne.jp/~uemura/info.htm
伐倒方向による含水率低下の差は少ないことから、伐倒方向は作業上安全な方向とし、極力隣接した伐倒木の枝葉が重ならないようにする。
石川県資料
http://www.pref.ishikawa.jp/ringyo/asunaro/handbook/irghb_b10a.pdf#search=%22%E8%91%89%E6%9E%AF%E3%82%89%E3%81%97%20%E4%BC%90%E5%80%92%E6%96%B9%E5%90%91%22
P62
葉枯らし後の搬出を考慮して、伐倒は搬出地点に遠い位置から順次行い、元口を搬出方向に向ける。
岐阜明宝村森林組合
http://www.pref.miyagi.jp/ringyos/kikai/h15/18.pdf#search=%22%E8%91%89%E6%9E%AF%E3%82%89%E3%81%97%20%E4%BC%90%E5%80%92%E6%96%B9%E5%90%91%22
伐倒方向は通常と全く逆である。スイングヤーダ集材では材の元から引き寄せるのが一般的であるが、梢端部から引き寄せた方が根株や残存木にかかりにくい面があることから、上げ荷の場合はクサビを使って斜面上方へ伐倒し、下げ荷の場合は斜面下方へ伐倒する。
岐阜明宝村森林組合
http://www.iwafuji.co.jp/system/sympo/sympo18/sympo18.htm
8~9月に伐出する場合、あらかじめ枝葉を上にして伐倒し約2週間放置するとかなりの軽量化が図られスイングヤーダ集材、特に上げ荷集材のスピードアップやトラックへの積込作業を容易にするなどの効果がある。
徳島県・徳島県木材協同組合連合会
http://www.green.pref.tokushima.jp/shinrin/ringyo/pdf/sugihagarashikansou.pdf#search=%22%E8%91%89%E6%9E%AF%E3%82%89%E3%81%97%20%E4%BC%90%E5%80%92%E6%96%B9%E5%90%91%22
原則として、伐倒木の梢端部を峰方向に伐倒するものとする。ただし、作業の安全確保については、十分に留意するものとする。
三重県科学技術振興センター研究成果
http://db.mpstpc.pref.mie.jp/MSTcom/MST0010.asp?summary=Y103994.txt
葉枯らしの乾燥効果は,伐倒方向の違いで差は認められず,現地状況,作業性に応じた方向に伐倒すればよいことが示唆された
いろいろ聞いてみたい。
私には尾根側なんて偶然以外無理です。
谷側にもなかなか倒せないけど(汗)
倒す方向を見定めるのすら、かなり経験がいるんだなあと
思ったもの。
尾根側に倒している吉野は、傾斜どのくらいなんでしょうか。
受け口って尾根側に作るんでしょうか。
どんな作り方するのかな。
とっても、知りたいです。