フィリピンのレイテ島で発生した地滑りは、村を丸ごと飲み込み、犠牲者はどうやら3000人を越えそうという。
しかし不思議なのは、映像などを見ても、そんな危険なところには見えないことである。そんな急峻な山が背後にあるわけではなく、比較的なだらかな地形をしているのだ。よほど地面が液状化し、ズブズブの流れやすい状態になっていたのだろう。
一応、2週間続いた雨と直前にあった地震のためだと言われているが、どうもピンと来ない。
そこで指摘されるのが、違法伐採。森林伐採が続いていたから地盤が緩んでいたという説である。
あまりに現場の情報が少ないため、私には判断しかねるが、こういう地滑り・山崩れの時は、常に森林伐採が原因に指摘される。これは、森林は地盤を守っているという常識が強いからだろう。なんだか、森林に過剰な期待を背負わせているようで、可哀相な気もする。
以前、これもフィリピンだが、川の氾濫によって数千人が亡くなった災害があり、その時も森林伐採の影響が伝えられた。ところが、後に肝心の伐採現場は分水嶺の向こう側であり、洪水と関係ないことがわかった。そして洪水自体が、さほど常識外の大きなものでないことも指摘された。
実は、数十年に一度、普通に氾濫する河川敷に人々が住み始め、そこにスラムを形成したことがたくさんの犠牲者を出した理由だったのである。
災害の原因も、よほど気をつけないと誤った認識に囚われる。
それが、今回と同じレイテ島なんですね。1991年11月にオルモックという町を襲った洪水で、なんと8000人が亡くなっていました。人口13万人の町で、です。
中州や河口にあったスラム街が丸ごと流されたのでした。
が、何の証拠もない。それなのに思いつきが既成事実化して語られることが怖い。
地滑りの原因を突き止めるのは極めて科学的な作業なのに、思いつき優先なのは困りものです。
最近は、政治も経済も、思いつきが多いような気がします。その政策を実行する理由をちゃんと説明しないし、反論に応えない。売上につながらない営業や広告コストをかける。なんだかなあ、と思うのであります。