ザイルと焚火と焼酎と

ザイルを使う登山にちょっぴり憧れ、山中に泊まると焚火を囲み、下山後は焼酎でほのかに酩酊。いい加減なのんびり登山の日記です

北アルプス北穂高岳滝谷ドーム中央稜を登攀しました

2013年09月05日 | 岩登り/北アルプス

2013/8/28~30  O橋君の計画でドーム中央稜の登攀に出かけました。滝谷です。滝谷を訪れるのは23年ぶり。その1990年8月にドーム中央稜を登攀する予定でした。第三尾根を登攀し、ドーム中央稜の取り付きまで来たのですが、先行パーティーが待てど暮らせど1ピッチ目から先に進まないのです。3人パーティーでした。いい加減しびれが切れたころ、雷鳴が聞こえ始めましたから、登攀を諦め、草付を登って登山道から北穂の小屋へと帰ったのです。
それ以来、ドーム中央稜はいつか必ず登ってみたいルートとして心の中に刻まれていたのです。それは一緒に登っていたS子も同じでしたが、S子は1998年2月の大怪我以降、この夢を諦めざるを得なくなりました。そこへこのO橋君の計画です。嬉しい計画でした。

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▲いつもは上高地に早朝着くバスに乗るのですが、O橋君の仕事の関係で今回は正午到着でした。上高地も5年ぶりです。12:24ころ。

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▲明神付近から望む明神岳主稜の峰々です。おそらく薄っすらと雲がかかっている峰が主峰、いちばん左端は五峰だろうと思います。右端の丸いピークは長七ノ頭ですが、その左下のコルにひょうたん池があります。僕は2回ひょうたん池に行ったことがあります。一度は明神岳東稜を登った際、もう一度は“穂高岳お池巡り”の際です。13:12ころ。

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▲新村橋の近くから眺めた前穂東壁です。中央が前穂高岳、右の稜線が前穂北尾根、左の稜線は明神岳主稜だと思います。14:24ころ。

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▲同じ場所からの望遠写真です。中央の雪渓がある谷は奥又白谷。雪渓の左方向に奥又白池があります。奥又白池には3回ほど行ったことがあります。素晴らしい場所で、天空の別天地のようですよ。14:24ころ。
写真の右端に見えるコルはおそらく5・6のコルだと思います。
1996年8月、S子と奥又白池をスタートし、A沢から前穂高岳へ、前穂北尾根を5・6のコルまで下降し、再び奥又白池まで戻って来ました。
2007年8月には、Y根君とS崎君との3人で“穂高お池巡り”をした際に、ひょうたん池からこの写真左の下又白谷~奥又白池~5・6のコルへとトラバースしました。

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▲横尾、本谷橋と通り過ぎ、横尾本谷が望める場所まで来ました。この谷はW.ウェストンが槍ヶ岳に登頂した際の登路でもあります。16:17ころ。

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▲初日のまだ体が山に慣れていないアプローチはけっこう疲れますね。もうすぐ涸沢到着。歩いているのは僕です。(O橋君撮影)

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▲涸沢到着です。左が前穂高岳、右に奥穂高岳があり、間がそれをつなぐ吊尾根です。17:46ころ。

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▲中央が北穂高岳。その右の岩稜は北穂の東稜です。今回、状況次第ではこの岩稜を登るかもしれません。(O橋君撮影)

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▲僕たちのテントの前で寛ぐ小生。(O橋君撮影)

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▲O橋君が持って来てくれた「極食・なすの揚げ煮」です。極食シリーズは現時点での究極のフリーズドドライ食品だと思います。高価なのが玉にきず。実にウマイ! 18:55ころ。
他にも幾つも極食シリーズを食べさせてもらいました。

◆◇◆2日目・ドーム中央稜登攀の日◆◇◆

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▲3時起床4時出発の予定でしたが、日の出の時刻も5時10分くらいですし、結局4時40分ころのスタートとなりました。東の空が美しいブルーに染まっていました。4:37ころ。

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▲奥穂高岳の岩壁がモルゲンロートで、輝いています。5:23ころ。

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▲前穂北尾根です。右端のピークが前穂高岳(1峰)、2峰、3峰と近接してあり、さらに左へ4峰、5峰、6峰と見えています。北尾根上半部のアプローチである5・6のコルへ雪渓が伸びています。5:24ころ。

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▲前穂北尾根の下部です。顕著なピークは8峰でしょうか? その左遠方に富士山が見えました。5:38ころ。

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▲5・6のコルです。左が6峰ですが、タヌキ岩の腹にも朝日があたっています。5:39ころ。
タヌキ岩は6峰左部分の途中の小さな岩峰、大きな腹のタヌキに似ています。

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▲たったの30分しかたっていないのに、モルゲンロートは失せ、普通の岩の色になってしまいます。5:57ころ。

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▲左は奥穂高岳。その右に影をともなって延びているのが西穂に続く稜線です。ジャンダルムと飛騨尾根が見えています。そして中央には涸沢岳、右に延びる支尾根は涸沢岳西尾根でしょう。6:45ころ。

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▲何を想うか、O橋君。6:46ころ。

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▲北穂と奥穂への分岐です。7:03ころ。

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▲今日は実に素晴らしい登攀日和! 遠く槍ヶ岳も微笑んでいます。7:07ころ。

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▲登山道から眺めたドームです。このドームを通り過ぎ、鎖場を越えたあたりから右下に下降します。中央稜はこの写真の真反対ですが、ドームの右のピークに出て来ました。終了後は中央のコル状から手前に下降し、登山道と合流するのです。7:10ころ。

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▲奥穂高岳や涸沢岳とほぼ同じ高度です。このあたりから右へと下降します。7:25ころ。

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▲かすかな踏み跡を拾いながらどんどん下って行きます。7:46ころ。

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▲予想していたよりもずいぶん下まで下りました。第三尾根の懸垂下降点が見つかりました。8:09ころ。

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▲まずは僕が懸垂下降します。(O橋君撮影)
ガイドブックには20mとなっていますけれど、ジャスト25mありました。

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▲続いて、O橋君が懸垂下降して来ます。8:13ころ。

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▲ドーム中央稜取り付きからの景色です。笠ヶ岳は滝谷登攀の際には常に背中から見守ってくれる存在です。8:27ころ。

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▲槍ヶ岳も見えています。8:27ころ。

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▲ドーム中央稜1ピッチ目。上部のチムニーとチョックストーンが見えています。8:28ころ。

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▲ドーム中央稜は全5ピッチ。2ピッチ目と4ピッチ目が核心だと言われています。若者に花を送るという意味合いも込めてO橋君に偶数ピッチをしてもらうつもりではいました。それに加えて、初めての岩場での最初のピッチにも特別の意味合いがあります。僕の滝谷初見参(ういげんざん)はクラック尾根でしたが、お師匠さんパーティーが後ろに控えて、先行させてもらいました。すべてを自分で判断していく経験は何よりも貴重なものでした。ちなみに、この滝谷クラック尾根でS子と初めてザイルを組んだのです。28年前のことです。8:58ころ。

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▲O橋君が最上部のチムニーの中に入って、見えなくなってしまいました。いったい何をしているのか? どうしようとしているのか? さっぱり分かりません。滝谷にはなかなか陽が当たりませんから、じっと確保だけしていると、体がどんどん冷えて来ます。両腕を鳥のようにバタバタさせてみたり、足は貧乏ゆすりのように揺らしてみたり、体温を上げる努力をします。9:06ころ。

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▲やっとチムニーから姿を現し、チムニー左のフェースを登り始めました。9:33ころ。

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▲O橋君から「ビレー解除~ぉ!」のコールが届き、いよいよ僕が続きます。フォロウですから、気楽にスピーディーに登攀。チムニー直下から真上を向いてこの写真をとりました。この時、9:58ころ。O橋君はこの1ピッチを約1時間かけたことになります。
このチムニーはザックを背負っていなかったらチョックストーンの内側の穴を通り抜けることができ、簡単なのだそうです。しかし、実際にそこまで行ってみると分かるのですが、ザックを背負っていては狭すぎて体が通り抜けられないのです! O橋君もいったん少しこのチムニーに入ってみたものの、どうしようもなくなり、ザックを下ろしてハーネスにぶら下げたり、様々トライしたみたいです。
チムニーの中に2ヶ所プロテクションを取ってありましたから、外すためにチムニーの中に入ります。1本取ったところで、それ以上チムニーの中に入るのは不可能だと確信。チムニーに強く挟まってしまっていますから、下に下がることも難しい状況です。すぐ上で確保してくれているO橋君に「少しだけザイルにぶら下がるから、少しだけ下げて」と叫んで、チムニーの外側へ体を移動させました。後は、強引に左のフェースをA0で突破。
と言うのも、この1ピッチ目の登攀中に麓から霧が上がって来て、滝谷を覆ってしまっていたのです。天候が悪化し、途中から雨や雷になるかもしれません。

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▲1ピッチ目終了点から見たチョックストーン(写真中央上)とチムニー。10:14ころ。
結局、すべてを終了してから振り返ると、この1ピッチ目がいちばん困難なピッチでした。チムニー左のフェースを登ることになりますから、グレードはⅤ級です。

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▲2ピッチ目もO橋君のリードです。リッジやカンテのすっきりしたⅤ級のピッチ。10:18ころ。

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▲O橋君撮影の写真ですが、おそらく2ピッチ目のものではないでしょうか? 僕が霧の中から登って来ます。

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▲3ピッチ目はコンテでも大丈夫なピッチ。Ⅰ~Ⅱ級です。正面はフェースですが、少し右に行き、この写真の凹角部分が4ピッチ目の取り付きです。Ⅳ+級。11:20ころ。

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▲5ピッチ目は僕がリードしました。最後の抜け口のハングか核心部です。右に抜けるとⅣ級と書いてありましたが、僕には左のフェース(写真では右)からの方が易しそうに見えました。でも、左はⅤ級だとか。
写真はフォロウするO橋君。12:29ころ。

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▲ドーム中央稜の登攀を終了し、写真上部のドームのコル状部分からクライムダウンし、ほぼ安全な場所まで降りて来ました。12:58ころ。

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▲滝谷側はガスっていましたが、涸沢側へ出て来ると、青空が広がっていました。冷たい風も吹いていません。13:46ころ。
手前の岩尾根は北穂東稜、遠く常念岳も見えています。

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▲涸沢の天場へ帰るO橋君です。明日は荷物を全部背負って、眼前の前穂北尾根を登攀し、岳沢経由で上高地へ下山する予定です。14:57ころ。

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▲涸沢へ戻って来ました。ピストンした北穂南稜。涸沢ベースで滝谷登攀する連中がいることは知っていましたが、けっこうハードでした。16:43ころ。

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▲これも極食です。味がいいですね。長期山行でアクセントを与えてくれる贅沢品だと思いました。これを中心にした食料計画では、ひどく高価な食事になってしまいそうです。18:49ころ。

何時ころからだったでしょうか、雨が降り始めました。風もそれなりに強く、テントのポールが風で大きくたわみます。落石のような轟音も遠くで響いたりもしました。
とりあえず明日の予定はそのままということですが、早朝から晴天になるとは到底思えません。明日はどこも登らず上高地に下山するだけになることでしょう。

◆◇◆3日目・下山の日◆◇◆

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▲3時に目を覚ましましたが、雨。北尾根登攀は即座に中止。5時まで眠ることにします。
朝食後、テントを撤収し下山開始です。ずうっと降っていた雨は出発する頃にはかなり小降りになりました。でも、稜線方向を見上げると、ガスで覆われ何も見えません。7:44ころ。

上高地に着くと、帰りの路線バスの予約をし(順番券が渡されます)、上高地アルペンホテルへ入浴しに行きました。一人500円で14:30まで入浴可能です。バスは新島々で電車に乗り換え、松本へ。
松本で入ったのは『どまんなか』という名の居酒屋でしたが、お魚が新鮮で、いいお店でした。僕の好きな日本酒「〆張鶴」があったので飲みました。

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