ザイルと焚火と焼酎と

ザイルを使う登山にちょっぴり憧れ、山中に泊まると焚火を囲み、下山後は焼酎でほのかに酩酊。いい加減なのんびり登山の日記です

海沢谷の支流にひそむ枠木大滝の登攀は面白いものでした

2014年07月13日 | 沢登り/多摩川本流

2014/7/6  U田君から「沢登りに行きませんか?」とメールが入ったのが一週間前。僕が断ろうはずもなく、彼が計画してくれた沢が海沢谷とその支流・枠木沢。
海沢谷には何回も行ったことがありますが、瀑流帯(天地沢出合~海沢園地)が2、3回で、あと数え切れないくらいは海沢園地から大滝の上流部で登山道と合流するところまで。ですから、行ったことのない枠木沢には興味津々なのです。

沢の経験はもちろん僕の方が多いのですが、U田君は急速に密度濃く経験を積み重ねつつあり、クライミング能力も僕を軽く追い越してしまっていますから、僕自身は実にお気楽な「連れて行ってもらうモード」に突入しちゃってます。

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▲白丸駅で下車し、海沢林道を海沢園地まで歩きます。男同士だと、どうしても歩くスピードが速くなってしまい、けっこう疲れます。女性など体力的に自分より弱いメンバーがいると、その人に合わせるようなペース配分を考慮するのですが、男同士だと遠慮なし。まあ、U田君から考慮すべき相手だとまだ思われていないことは嬉しいことではありますね。
海沢園地で沢装備を整え、いざ出発! 10:06ころ。

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▲すぐに三ッ釜の滝が現れます。美しい滝。U田君はそのサイズに少々ガッカリ感を漂わせていましたが。でも、僕は好きです。10:11ころ。
「いつもはどう登ってるんですか?」とU田君が聞くので、「初心者がいることが多いし、念のためにザイル出すよ」と答えます。「あ、そうですか」とU田君、ノーザイルでスタスタ。

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▲上の写真では見えていなかった滝と釜がこれ。三ッ釜の滝と呼ぶくらいですから、この釜も含めての名称だと思います。ここでは今のようにキャニオニングが盛んになる以前から、滑り台のような滝を滑って遊ぶ人がいました。10:15ころ。

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▲これはねじれの滝。10:24ころ。
左の写真の外からバンドをトラバースし、残置シュリンゲのある箇所で1歩だけクライムダウンし、下段の滝の落ち口に立ちます。続いて、上段の滝の右壁を登っていけば登攀終了。
丁度この時、上段の滝の左壁を空中懸垂する人たちがいました。懸垂して遊んでいるのでしょうか?

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▲写真中央の人がたくさんいる場所の左奥にねじれの滝があります。U田君も本当は登攀したかったのでしょうが、このたくさんのパーティーが先行していましたから、このパーティーが終了するのを待つ気にもなれなかったようです。
僕はと言えば、ねじれの滝を登らなかったことがありません。つまり、ここを高巻いたことがなかったのです。個人的には高巻きルートに興味津々! 10:27ころ。

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▲途中、こんな頑丈な鎖まで設置してあるんですね! 10:27ころ。

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▲高巻きの途中から、すぐ上流の小滝で懸垂下降の練習をしているパーティーを見ました。ネオプレーンのダイバーが着るようなウェアを身に着けているので、キャニオニングを楽しんでいるのだと思います。10:31ころ。
僕はこの小滝も一緒に高巻きましたが、U田君は横を登って行きました。左下に写っているのはU田君。

ところで、キャニオニングですが、キャーキャーと叫び声が聞こえたり、実に楽しそうです。でも、その楽しさは僕たち沢屋の楽しみ方とは根本的に違うように感じました。遊園地で絶叫系のジェットコースターなどに乗って興奮を味わっている、それと共通した楽しみ方のようです。
でも、最初はそうでも、日本の渓谷の素晴らしさに感動し、渓谷そのものを楽しむようになって欲しいと願っています。

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▲ゴルジュの中の小滝が続きます。10:35ころ。

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▲こんな小滝でもどこからどうやって登るのかを瞬時に判断するのが楽しみでもあります。10:36ころ。

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▲大滝20mです。10:39ころ。

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▲この大滝の高巻きで本日の僕の「連れて行ってもらうモード」が顕現!
海沢谷ではこれまで毎回この大滝の高巻きをしていたのです。間違えたことは一回もありません。いつも僕がリーダーとして先頭でルートファインディングしていたのです。ところが今日の「連れて行ってもらうモード」。僕の高巻きルートを読む目は完全に人任せ、真剣味はゼロ。適当に意見は言いますが、基本U田君の後に付いて行くだけ。
そして、この結果。大滝右岸のかなり上部を通っているモノレールの軌道まで上がってしまいました。
まあ、上がり過ぎても酷いことにはならないと、予測は出来ていましたから、「連れて行ってもらうモード」のままでおれたのでしょう。でも、心の持ちようがこれほど影響するとは! 反省ですね。人任せ、リーダー任せではいけません! 11:00ころ。

この軌道を先に進めば、岩茸石沢に出ることは分かっていますから、そうしました。

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▲ちょっと進むと、下方から滝の音が聞こえ、樹間から不動滝が見えました。11:01ころ。

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▲岩茸石沢の上部に出てしまっていますから、出合近くまで下降しなければなりません。11:05ころ。

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▲出合までは問題なく下れました。不動滝も近くに見えています。その落ち口に向かってトラバース。11:11ころ。

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▲不動滝の上流で沢床へ懸垂下降。11:21ころ。

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▲〇で示した木を支点に懸垂下降しました。11:27ころ。

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▲再び、コルジュが続きます。11:34ころ。

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▲これくらいの小滝が時々ある沢歩きがいいですね。11:40ころ。

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▲枠木沢出合でしばし休憩。枠木沢に入ります。12:08ころ。

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▲枠木大滝の出現です。大滝といってもそれほど高さのある滝ではありません。せいぜい8mといった程度でしょう。本当は右奥に上段の滝4mも隠れているので、2段12mといった程度の高さです。しかし、この滝の威圧感は滝両サイドの岩壁。数十メートルはあろうかという高さです。しかもほぼ垂直。
僕など、この滝が登れそうだなんて思いもよりません。最初に登った人は偉いですね。よほど大高巻きするのが嫌いだったのでしょう。12:18ころ。

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▲写真中央を左から右へ幾つかの矢印が記されています。これが僕たちの辿った登攀ルートです。多分、ほぼガイドブック通り。〇印のある木は確保に使用した木です。分かりにくいかと思いますから、写真をクリックして拡大してご覧ください。12:19ころ。

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▲1ピッチ目です。滝の左手前の凹角から登攀しました。U田君ももちろん初めてのルートですから慎重に進みます。途中、3箇所でカム(昔はフレンズと呼んでいたギア)を噛ませて、安全を期します。この写真のU田くんの位置よりもう少し進んだ樹林の中で1ピッチ目を切りました。12:31ころ。

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▲今日のリードは全部U田君にお任せですが、2ピッチ目はちょっとだけの泥斜面のトラバースでしたから、僕がそのままトップで進みました。写真はフォロウしてくるU田君。12:53ころ。

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▲3ピッチ目をリードしているU田君。13:11ころ。
今僕がいる確保している場所はテラスと呼んでいいほどの安定した場所です。しっかりした木が3本生えています。
このテラスでしばらく、U田君とあ~でもないこ~でもないと登攀ルートを検討し合いました。話し合っているうちに次第にルートの弱点も見えて来ます。写真左上の木にはプロテクションとしてのシュリンゲ以外に4本の長めのシュリンゲをつないだのが下がっています。これはクライムダウンする時の補助用のもの。この補助がなくてもクライムダウンできるのではと思いますが、あった方が安心ですね。
ガイドブックには「3m下のバンドへゴボウで下降」とか「別のザイルを掛け、3mほど懸垂して仮固定」とかありますけれど、この長めのシュリンゲを設置した箇所でせいぜい1.5mほど下降しただけで、3mも下降するケースはありませんでした。岩自体も思いのほかしっかりしています。

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▲前の写真より右に少しトラバースしたところです。U田君の頭上の木の右へ出るように登るのです。13:12ころ。
ガイドブックにはこの辺りに関しても「向かいの露岩に飛び移り、連結スリングを投げ縄で上部バンドの始まりの立木に掛ける。ゴボウで上がり」とあります。
ガイドブックの解説者が遡行したのは2007年のことです。当時とはこの辺りの状況がだいぶん変ってしまったのでしょうか?

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▲いまU田君のいる場所もしっかりしたテラスです。残置ハーケンとカムで確保していました。13:16ころ。

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▲3本の木が生えているテラスにいたころ、6、7人のパーティーが滝下に到着しました。ねじれの滝で登ろうとしていたあのパーティーのようです。13:28ころ。

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▲上段の滝下に懸垂下降します。降りてからは滝の流れの左側を簡単に登れます。13:32ころ。

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▲上段の滝も登りきった後、後ろのパーティーの様子を見ました。全員それなりに沢慣れているパーティーのようです。どこかの山岳会でしょう。3本の木のテラスにもう4人ほどの姿が見えます。1ピッチでテラスまで来ているので、この大滝の経験者がリーダーなのでしょうね。13:46ころ。

結局、僕たちはこの枠木大滝登攀に1時間以上かかったことになります。登攀自体よりも、どこをどう登るかを考え、決断するために時間を多く費やしたようです。なかなか面白い登攀でしたね。

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▲大滝の上流部は平凡な流れになりますが、唯一アクセントになるのがこのモノレール軌道です。このまま軌道を左へ辿れば、早く下山できるようですね。13:59ころ。

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▲支沢も多く現われますが、迷うようなところでは右を選べば間違いありません。14:06ころ。

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▲連瀑が現れました。奥ノ大滝なのでしょうか。14:41ころ。

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▲前の写真の一番下の段を登るU田君。14:43ころ。

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▲2段目も簡単に登り、3段目の滝の真下に立ちました。どうやらこの滝は無理なようです。14:47ころ。

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▲滝の左斜面を高巻きスタートです。14:51ころ。

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▲巻き終わって、沢に戻ると再び2段の滝が現われました。上の滝はチョックストン滝です。14:58ころ。

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▲下の滝はこのようなトイ状の滝。15:04ころ。
上の滝を見てから、降りて来る途中で撮りましたから、時間的には逆転しています。

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▲上の滝の近くまで来て、登攀可能ルートを見つけようとしているU田君。右壁のクラック沿いのルートに可能性を見たようですが、今日は諦めました。見えている薄茶色の木肌の木でプロテクションが取れれば何とかなると考えたのだと思います。
確かに、登れるかもしれませんね。14:59ころ。

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▲結局この滝も2段まとめて高巻くことになりました。写真はチョックストン滝の落ち口です。
この写真を撮りに行った際、本当はもっと前に出たかったのですが、足元のチョックストンの隙間に枯れ木や枯れ葉や小石が詰まっていて、隙間だったのでしょう。踏んだら隙間の奥の方で崩れる音がしました。ビクッとして急いで離れてこの写真を撮ったというわけです。15:11ころ。
石や流木が溜まっていて、その下に空間があるような場所は気を付けなければなりません。昔、そんな場所を踏みぬいて、肝を冷やしたことがありましたから。15:11ころ。

どの滝のことを「奥ノ大滝」と呼ぶのでしょうか? おそらくこの名前は地元で昔から呼ばれていた名前ではないような気がします。おそらく沢屋さんや釣師が便宜的に付けた呼び名なのではないでしょうか? そうであるならば、どの1段も「奥ノ大滝」と呼ぶほどのさほど飛び抜けた滝ではありませんから、5段全部で「奥ノ大滝」と呼ぶのがふさわしいと感じますが、どうでしょうね?

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▲ガイドブックには奥ノ大滝上流には滝の表示がありません。時間も時間ですし、これ以上の遡行は諦めて左岸の尾根に逃げ上がることにしました。標高1060mあたりです。左岸の尾根の標高は1070~1080mですから、すぐそこに見えている尾根なのです。簡単に登り、左へ進むとすぐに標識が出て来ました。海沢探勝路です。15:31ころ。

海沢探勝路を下り、海沢本流に出ると、僕の希望でしばらく若宮沢の白糸の滝を探しました。おそらくはもっと下流だったのでしょう。今日は見つかりませんでした。
以前、2000年の夏に海沢谷を遡行し、時間に余裕があったせいでしょうか、海沢探勝路と交わってからもさらに上流を遡行した際に見つけたことがありました。出合にかかる7、8mの滝をザイル使用で越えると、数十メートルにも見える大きな幅広の滝があったのです。下部を少しだけ登ってみましたが、それ以上登る準備もしていませんでしたし、初心者も一緒でしたから、その日は諦めたのです。フリーで登れそうな、傾斜もさほどない大きな滝でした。

10m以上は常に前を歩くU田君を追いかけるようにしながら、下山の道を急ぎました。海沢園地にはあの枠木大滝のパーティーが先に到着していました。枠木大滝上流のモノレール軌道から下山したのでしょう。彼らはここから車で下山です。
僕たちは海沢林道を歩きます。多摩川本流右岸の車道に出てからも天益への道を急ぎます。U田君も僕も途中で歩きながら各自の下山報告を携帯で済ませました。

天益へも電話してみました。どうやら満席のよう。着いて見ると、ドアの外にはたくさんのザックが、そしてカウンターには地元の人々の顔ぶれで満席以上です。
僕たち二人には外で飲み食いできるように席をセットしていただきました。
U田君は遠いので7時台の電車で帰ることに一旦はしたのですが、地元の方々の引き留めで8時台の電車に変更。席も空いたのでカウンターに座らせてもらいました。
天益ではこのような地元の方々との交流が楽しみのひとつでもあります。山のことをよくご存知の警察や消防署関係の方もよく来られます。お世話になることがあってはならない山岳救助隊の関係者なのです。

前回の葛葉川本谷の後では、筋肉痛に苦しめられましたが、それを一度体験しているので、今回は何ともありませんでした。時々はこのレベルで肉体を使わないといけませんね。


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