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100% pure モノクロの故郷に、百彩の花が咲いて、朝に夕に、日に月に、涼やかな雨風が吹いて、彩り豊かな光景が甦る。

広島宇品編 6 ~事務職~

2010年06月15日 | 人生航海
そうして、私は事務員に選ばれることになったが、何の特技も学歴もない私が、何故選ばれたのか不思議に思えてならず、恥ずかしいような思いもあった。

だが折角、事務員に採用された以上は努力する他ないと思い、それからは勉強して頑張ろうと心に決めて勤めようと思った。

他に選ばれた中の一人は、徳島県出身の方で名前は「久一成功さん」という30歳ぐらいの驚く程、達筆の方であった・・それまであんなに字の上手な人に会った事はなかった。

もう一人の方は、私よりも20歳ぐらい年長の方で、以前は会社の事務員だったという事であった。

いずれにしても、選ばれたからには真面目に勤めるのが何より大事だと思ったのである。

労働作業ではなく、大勢の中から選ばれたので、これも運勢だと思い嬉しくもあったので喜んで仕事に励むことができた。

事務所勤務は、毎日葉書や手紙の検閲や書類の整理、運輸部本部との連絡や雑用で忙しく、多忙な日が続いた。

その頃にも、人生の運不運を感じるようになっていた。

戦時下にあっても、大勢の人の中には色んな人達がいて、酒癖の悪い者達や、または喧嘩早い者もいたし、暴力をふるう者様々いた。

休みの日には、必ず誰かが問題を起こして制裁を受けていた。

そのうち事務所の仕事にも慣れた頃に、私達軍属にもまた移動の前兆があった。

私は、まえに一度墓参りの休暇を出せなくて帰省が延びていたので、思い切って何とか少しの間でもと、墓参りの休暇願いを出す事にした。

「そんな事なら、すぐにでも帰ってもよい」と簡単に三日間の休暇の許可が下りたのである。

久しぶりの帰省で、ようやくの墓参りが叶ったのである。