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「江戸繁昌記 ニ篇」 79 街輿(付猪牙舟)1

(散歩道のイソギク)

今年も早くも師走に突入した。散歩道にめっきり花が少なくなって、今、目立つ花はイソギクぐらいである。

「江戸繁昌記 二編」、「街輿(付猪牙舟)」の項の解読を、今日より始める。

     街輿(ヨツデカゴ)付猪牙舩
※ 街輿 - よつでかご。四本の竹を四隅の柱とし、割竹を編んで作った粗末な駕籠。庶民が辻駕籠として利用した。
※ 猪牙舩(ちょきぶね)- 江戸時代、屋根のない舳先のとがった、細長い形の小舟。江戸市中の河川で使われ、特に、浅草山谷にあった新吉原へ通う遊客に多く用いられた。

前人、句あり。云う、前雁は高く鳴き、後雁は低し。高低相喚(よび)て、長堤を度(わた)ると。唯、尻の動くを見て、脚の動くを見ず。人をして足無くして、飛んで天街を行かしむる者は、街頭肩輿これなり。
※ 肩輿(けんよ)- 肩で担ぐ乗り物の総称。輿や駕籠などをいう。

その群集中に雄奔する。巧みに避け、妙に譲る。肩で以って群を撥(はねかえ)す。真に虚邑に上る。矢を縦(はな)ち、を追い、奔逸絶塵、衆皆な尻を仰ぎて瞠たり。都人の、事に奔(はし)るを知らず。何ぞ、多きこと、この如くなる、何ぞ、急なること、この如くなる。
※ 雄奔(ゆうほん)- 力強く走ること。
※ 虚邑に上る -「虚邑」は「人のいない村」。無人の村を行くように、何の妨げもなく進む。
※ 猋(ひょう)- つむじかぜ。
※ 奔逸絶塵(ほんいつぜつじん)- 塵一つ立てないほど速く走ること。ものすごく速く走ること。
※ 瞠たり(どうたり)- 目を見張る。


東郭西橋、奔走烟りの如く、南坊北街、経緯(たてよこ)織るが如し。上(かみ)にして馬せず、この急脚を借りる、何の変事を上げる。僧にしてせず、この急尻を買う、何の法会に参ずる。(尻を買う、僧の本分)
※ 錫(しゃく)- 僧の杖。錫杖。

轎夫(カゴカキ)駿足を貴(たっと)ぶや。後るゝ夫は凶なり。百歩を以って五十を笑う。前輿に(す)ぐるを以て雄と為す。走りて褌(ふんどし)解ければ、則ち、身走りて、手で結ぶ。慣るゝと雖も、なお妙なり。或は蹶(つまづ)きて趾(あし)を滅するも、血を躡(ふ)みて雄走す。爪を拾うに遑(いとま)あらず。
※ 軼(す)ぐる - 前へ出る。

その家、程を計りて値を定む。この駿足と雖も、特に貴きには非ざるなり。値同じで尻異なり。聞く、今、駿を以って鳴る者を赤岩(アカイワ)と曰い、十の字と曰う。曰く何に、曰く何に。駿、相軋(きし)ると云う。
※ 鳴る(なる)- 名声などが、広く世間に知れわたる。
※ 相軋る(あいきしる)- 反目する。争う。
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