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「事実証談巻4(人霊部上)」 24 第14話の2

(静岡中央図書館前花壇のツマグロヒョウモン/昨日撮影)

台風21号が近付いている。明日の投票日を危ぶみて、ミンクルは期日前投票の人で混み合っていた。自分も講座に出るついでに、投票を済ませた。

今日の講座は、「古文書に親しむ(経験者)」講座で、自分が教授である。先月に続いて、報徳関係の文書を読む。

午前中に但馬のふるさとより、渋柿を送って来た。60個ほど入っていた。台風が去って天気が回復したら、早速、干し柿にしよう。今年も干し柿の季節がやって来た。

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「事実証談巻4(人霊部上)」の解読を続ける。

かくて暫時(しばし)の程は、老母気侭(きまま)の計らいもなく、物和(やわ)らかに取なしけるまゝ、若者ども常に出入りをなし、老母の心を取りたりしが、月日ふるまゝに、又しも老母の気侭起りて、何時しかと疎ましき事ども出来つゝ、性なく疎び罵る事、多かりけれども、常の疎びに聞き流し置きけるを、なお弥増(いやま)しに怒り罵り、若者の契約に違(たが)い、終に、かの男をも追い出したり。
※ 心を取る - 機嫌をとる。
※ 性なし(さがなし)- 意地悪だ。性格が悪い。
※ 疎び(うとび)- いやがらせ。


若者は言うもさらにて、人皆な老母の、世に類い無き心様(こころざま)を悪(にく)み、それより交わりを断ちて、更に何事も取り合う者なきにより、あるに甲斐なき身とや思い定めけん。或る時、隣家の者、垣越しに見れば、二人とも髪結い、湯浴みなどして、衣服を改め、身粧(みよそお)いをなしける故、いづくへ行くにかと、余所に見なしてありし程に、外へは出ずして雨戸を鎖(さ)したり。
※ 余所に見なす(よそにみなす)- 自分とは関係のないものとして、放っておく。

隣家の者、怪しみ、密かに戸の隙間より窺い見れば、炉辺に縊れ死(くびれし)にたるさま見えたり。驚き、近隣の人々に告げて、外の方より雨戸を放ち入りて見るに、奥の方にもまた縊れ死にて有りけるが、二人とも座しながら縊れ死にたるなり。いよゝ怪しみ、村中に沙汰して、とかく言えども、詮方なき事なりければ、村中の計らいにて、二人の屍をは葬(ほうぶ)り納めたりしかど、亡き後弔う者だにも無ければ、詮方なく菩提所の寺を頼みて、七々日の霊祭までも怠り無くなさせし由。
※ 七々日(しちしちにち)- 人が死んでから49日目。四十九日。なななぬか。


読書:「山の怪談」 岡本綺堂他 著
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