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ケイン・トードとゴブリン・シャーク

(昨日、墓地からの眺め、雲が冬の雲ではない)

テレビを見ていると全く新しい知識を得ることも多い。最近のテレビで、そんな生き物が居たのかという話を2つ書いてみよう。

一つはオーストラリアを占領する勢いのケイン・トードと呼ばれる蛙の話である。

話は、1930年に、サトウキビ畑の害虫駆除が目的で、南アメリカ産の蛙が導入されたことに始まる。ケイン・トードは大型のヒキガエルのような蛙だが、頭の後ろに毒袋があって、この蛙を食べると、この毒でクロコダイルや蛇さえも数分で死んでしまう。オーストラリアだけで棲息する小動物など、この蛙を食べて絶滅の危機を迎えているという。

ケイン・トードは導入されたオーストラリア東北部から、南へ、東へと年に30kmのスピードで勢力範囲を広げており、必死の駆除作戦が続いている。しかしながら現在のところ駆除の有効な手立てがないというのが実情のようだ。

ケイン・トードが来た地域は、餌として食べる虫類が居なくなり、また蛙を食餌としている動物が死に絶えていく。まさに動物がケイン・トードしかいなくなってしまう酷い状態になってしまう。

ケイン・トードは天敵すら駆逐していく間に、年々大型化しているという。それは、バッタが群れを作って大陸を横断していく際に、より強力な種に変身していくのと似ている。

テレビでは今も何とか西へ生育域を増大しようとするケイン・トードと、それを食い止めようとするボランティアの戦いが描かれていた。もっとも有効な手段が、一匹ずつ捕まえて、ビニール袋に炭酸ガスを注入して処分する事だという。原産地から連れて来られ、増えたといって殺されるケイン・トードにとっても大悲劇である。

オーストラリアでは人海戦術のために軍隊の出動すら検討されているという。

もう一つは東京湾の深海に棲息する深海ザメの話である。

和名「ミツクリザメ」、体長は最大3メートルにもおよび、鼻の部分がへらのように発達し、その下にある上下の顎が飛び出して餌を襲う。世界のわずかな発見例も死体だけで、上下の顎が飛び出した形で発見されるため、海外ではその凄まじい容貌からゴブリン・シャーク(悪魔のサメ)と呼ばれる。生態が全く判らなかったゴブリン・シャークは「幻のサメ」と呼ばれてきた。

そんなゴブリン・シャークが、こともあろうに東京湾の先の「東京海底谷」と呼ばれる深海に沢山棲息していることがわかり、NHKと老練な漁師、深海調査の専門機関が共同で、世界で初めてゴブリン・シャークの泳ぐ姿と上下の顎を飛び出させて獲物に噛み付く姿が撮影された。ハリウッドのエイリアンはこの姿を真似たのではと思わせるような、予想を超えた奇怪な姿であった。

一億年もの長い間、ゴブリン・シャークは「東京海底谷」で生き延びてきたと思われる。東京湾が汚れたといっても、東京湾では富栄養価の海水で沢山の有機物が発生して、「東京海底谷」に流れ込んで来るため、ゴブリン・シャークにとってはまことに棲みやすい環境であったというのである。

日本は日本海溝という世界でも有数の深海を国土のすぐそばに持っている。だから日本の深海調査の技術は世界の先端を行くというが、まだまだ知られていないことが多い。
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