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夏山の雪渓歩き

                         (白馬大雪渓)

昨日に続いて、7月の夏山の話である。

この季節、北アルプスの谷間にはまだまだ雪渓が残っている。日本三大雪渓と呼ばれているのは、白馬大雪渓、針ノ木大雪渓、剱沢大雪渓のいずれの北アルプス北部の豪雪地帯にある。それらの大雪渓では登山者は延々と何時間も雪渓の上を登って行く。

雪渓上はスプーンカットと呼ばれる、融けてゆく雪渓の表面がスプーンで掬い取ったような模様になっている。その一つ一つがちょうど段になって、それをたどって登る。雪渓の下は溶けた雪が流れになってトンネルを作っていることが多い。雪が腐って(融雪が進む状態をいう)くれば、大きな落とし穴の上を歩くようなものである。だから登山道には安全な部分に赤い粉を一筋、印に撒いて、登山者はその線から外れないように歩く。

雪渓の上を歩くには登山靴に簡単なアイゼンを付けると歩きやすい。登山靴の土踏まずの所に金属製の爪のある金具を付ける。その爪がやわらかい雪渓の表面をとらえて滑らないから、一歩一歩、確実に歩を進めることが出来る。夏山では雪渓がアイスバーンになっていることはまずないから、その程度のアイゼンでも十分である。

傾斜した雪渓を横切る時はもっとも緊張する。ステップが切られている所は良いが、登山者が少ない時は、雪渓で登山道が途切れ、雪渓の向こうに登山道が見える。その斜面をステップを切りながら横切る。斜面は滑り出すと止まりそうにないほどの傾斜があり、ピッケルを使って滑ったときの静止訓練なども必要かと思うこともある。

雪渓上の登山は、谷間のでこぼこが真っ平らになるので、歩きやすい。雪渓の上は下りより登りのほうが歩きやすいから、雪渓上の登山道は主に登りに利用される。慣れて来ると雪渓を滑って降りる人もいる。

尾根上の山小屋では雪渓が溶け出した水を集めて生活用水に使っている。貴重な水源である。山頂に近い雪渓から、きれいな部分を取って練乳をかけると、即席のかき氷が出来る。こんなことも登山の楽しみの一つである。
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