三日坊主日記

本を読んだり、映画を見たり、宗教を考えたり、死刑や厳罰化を危惧したり。

アメリカの多様性

2019年07月23日 | 日記

ジョン・ワッツ『スパイダーマン:ファー・フロム・ホーム』は、スパイダーマン(ピーター・パーカー)が高校の研修旅行に行きます。
同級生は国際色が豊か。
スパイダーマン役のトム・ホランドはイギリス出身の白人。
あこがれのMJのゼンデイヤは、父がアフリカ系アメリカ人、母はオランダ系アメリカ人。
親友のネッド・リーズ役のジェイコブ・バタロンの両親はフィリピン人。
アンガーリー・ライスは白人ですが、オーストラリア生まれ。
ジョージ・レンデボーグ・Jrはドミニカ共和国生まれ。
恋敵役のレミー・ハイはオーストラリア生まれで、父は中国系のマレーシア人、母はイギリス人。
トニー・レヴォロリの両親はグアテマラ出身。

WASPはいないし、両親が黒人の俳優もいません。
ピーター・パーカーはクイーンズ住まい。
クイーンズのジャクソンハイツでは167の言語が話されているそうですが、人種の人口比はどうなのでしょうか。

映画の脚本作りに行き詰まったミランダ・ジュライは、無料配布される雑誌の「売ります」広告を出している人に会いに行きます。
『あなたを選んでくれるもの』は、そこで出会った人たちのことを書いた本です。
写真もたくさん。
インタビューを申し込んでも、たいていは断られたそうですが、応じてくれる人は変な人ばかり。

最初は革ジャケットを10ドルで売る60すぎの男。
性転換をしている最中で、化粧をし、女性の服を着ている写真にまず驚きます。
他人の写真アルバムを売るギリシャから来た女性。
ウシガエルのオタマジャクシを売る男子高校生。
GPSを足首につけている男性。


キューバ移民の女性と弟。
古いドライヤー5ドル。
などなど、10人へのインタビューです。

カメラマンとアシスタントを連れ、会ってくれた人に50ドルを支払っています。
ということは、最初から出版する予定だったのか。
となると、変わった人を選んで本にしたのかと疑問が沸いてきます。
中には本人が読んだらどう思うんだろうというとこもあり、たとえばフルーツサラダをいやいやもらって帰り、すぐに捨ててしまったことも書かれています。
インタビューした人に『あなたを選んでくれるもの』を謹呈していないのでしょうか。
モキュメンタリーなのかと思いながら読みました。

レイチェル・ドレッツィン『いろとりどりの親子』は障害を持つ子供とその親、6組の親子のドキュメンタリー映画です。
その中で、子供に障害がないと思われる家族が出てきます。
6年前、16歳の息子が8歳の子供を殺して無期懲役になります。
両親、そして弟妹もカメラに向かって自分の気持ちを語るんですね。
刑務所にいる息子と電話で話したり、面会の時に一緒に写真を撮ったり。
日本ではあり得ない話で、ここらがアメリカのよさだと思います。
とはいえ、「加害者のくせに」などとネットで叩かれないのか気になります。

渡辺靖『沈まぬアメリカ』は2015年の出版なので、トランプの登場によって古くさくなったかと思ったら、そんなことは全くありません。
アメリカの大学の海外分校、ウォルマート、メガチャーチ、セサミストリート、政治コンサルタント、ロータリークラブ、ヒップホップを手がかりに、アメリカ文化の世界中への拡散、越境、浸透が語られます。
渡辺靖氏は「アメリカの文化的影響力というのは――少なくとも規範や制度の世界的拡張という点に関しては――世間で言われているほど普遍的でも、圧倒的でもないのではないか」と最後に書いています。
しかし、私の読後感は逆で、これからさらにアメリカ文化が世界を覆うようになるのではと思いました。

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