文化大革命やポル・ポト政権ではエリートや知識人、専門家を弾圧し殺害しました。
ネトウヨも知識人、学者、専門家を敵視し、素人、普通の人々の庶民感覚を重視します。
つまり、反知性です。
西尾幹二「私は現代史に専門家が存在することを認めていません」
お二人とも歴史の専門家ではありません。
裁判員制度も市民感覚ということで始まりました。
ところが裁判員裁判では厳罰の判決が出ることが多く、二審で一審よりも軽い判決が出されることがあります。
普通の人が専門家より正しい判断が下せるのでしょうか。
庶民の素朴な感覚は、戦争はイヤだし、原発は怖い。
しかし、ムチとアメでだまされるし、感情に流されることがあります。
セルゲイ・ロズニツァ『粛清裁判』は、1930年の産業党裁判の記録映像を基に製作したドキュメンタリーです。
何人もの科学者と経済学者が西側諸国と結託してクーデターを企てたとして告訴され、被告たちはすべてを認めて有罪判決を受けました。
セルゲイ・ロズニツァはこう語っています。
https://eiga.com/news/20201113/10/
アメリカには反エリート、反権威、反科学、反知性の伝統があり、科学に不信感を持つアメリカ人は多いそうです。
三井誠『ルポ 人は科学が苦手』は、地球温暖化否定派と進化論を否定する創造論者を取り上げています。
ギャラップ社の2017年の世論調査
「神が過去1万年のある時に人類を創造した」との考え(創造論)を支持する回答は38%。
「人類は数百万年にわたり進化してきたが、そこには神の導きがあった」とする回答の支持も38%。
「神の関与なしに人類は数百万年にわたり進化した」とする回答は19%と少数派。
教会に頻繁に行く人ほど科学への信頼が低下している。
2011年の公立高校の生物学教師へのアンケート調査
進化論をきちんと教える先生は約28%。
創造説を教える先生は約13%。
ミネソタ州の教師「私は自分の生物のクラスで進化論を教えない。低レベルの科学を教える時間などない」
残りの約60%は、親や地域住民からの批判を恐れて両方を教えるなど、煮え切らない立場だった。
「(進化論や創造論などのなかで)どれが正しいのかを子どもたちが自分自身で決めるべきだ」
「子どもたちは進化論を学ぶ必要があるが、それはただ、進化論が本当であるかのように生物学のカリキュラムに書かれているからだ」
反知性といっても、知性がない人だというわけではありません。
トランプ政権のミック・マルバニー行政管理予算局長は記者会見でこう言った。
「(地球温暖化の研究に)もうお金は使わない。税金の無駄だ」
2018年のギャラップ社の世論調査
地球温暖化は人間活動が原因なのか、それとも自然変動の結果なのかを聞いた質問で、「人間活動が原因」と答えた人は64%だった。
支持政党ごとに見ると、共和党支持者では35%、民主党支持者では89%。
2010~2015年、ギャラップ社は地球温暖化に対する考え方と学歴との関係を調べた。
「地球温暖化は自然の変動によるものだ」と回答した人。
高校卒業までの人の場合は民主党支持者では35%、共和党支持者では54%。
大学を卒業した人では、民主党支持者の13%、共和党支持者の66%。
ちなみに、2009年の調査によると、
三井誠さんはこう述べています。
勉強すればするほど正しい理解に結び付き、誤解は解消し、わかり合えると思いがちだが、実際は学歴が高い人ほど支持する政党の違いに応じて、考え方の違いが際立つようになる。
科学的知識が少ない場合は支持政党による違いはないが、知識が増えるほど支持政党に応じた考え方の違いが大きくなる。
エール大学教授ダン・カハン
共和党支持者は地球温暖化の知識があっても、自分の考え方と違うので、逆の方向に理論武装して、「多くの科学者はそう言うけど、本当は違うんだ」というふうに自分の信念を強めている。
温暖化の知識が増えても共通の理解につながらず、逆に見方が偏っていく。
その人の考え方を支配する宗教的、政治的なバイアスがある。
政治や宗教などの個人の思いによって、情報が「大事な情報」と「嫌な情報」に分けられてしまう。
人は自分の思いを強めてくれる「大事な情報」をありがたがる。
「見たいものだけ見える」
「見たくないものは見えない」
これは陰謀論や歴史修正主義と共通していると思います。