『現代日本人の意識構造』は、NHKが1973年から5年に一度行っているアンケート調査をまとめたものである。
いろんな事柄についての質問があり、なかなか面白い。
「権利についての知識」という質問
「リストには、いろいろなことがらが並んでいますが、この中で、憲法によって、義務ではなく、国民の権利ときめられているのはどれだと思いますか。いくつでもあげてください」
リストとそれが国民の権利だと答えた人の率は次の通り。
73年 88年 03年
ア.思っていることを世間に発表する 49.4 43.4 36.2
イ.税金を納める 33.9 7.2 42.2
ウ.目上の人に従う 5.6 7.7 6.6
エ.道路の右側を歩く 19.9 16.5 14.6
オ.人間らしい暮らしをする 69.6 76.3 75.5
カ.労働組合をつくる 39.4 27.1 20.4
キ.わからない、無回答 7.8 6.0 5.0
憲法で定められている国民の権利は、アとオとカである。
正答は1点として、
73年 88年 03年
3点 18% 13% 10%
2点 22% 21% 17%
1点 23% 27% 29%
0点 37% 39% 44%
本文の見出しが「低下した権利知識」とあるように、権利が何かをわからない人が増えている。
「税金を納める」ことが権利だと思っている人がぐんぐん増えているのに、「思っていることを世間に発表する」権利や、「労働組合をつくる」権利が、憲法で認められていることを知っている人が少ないことには驚きである。
最近の人は権利ばかり主張して義務を果たそうとしない、と言われ、権利を制限すべきだとまで主張する人がいる。
しかし、権利とは何かを、私も含めて多くの人が知らない。
まずは、国民にはどういう権利があるのか、基本的人権とは何かを教えることが先ではないかと思う。
『現代日本人の意識構造』には「結婚観」についての質問もある。
甲 人は結婚するのが当たり前だ
乙 必ずしも結婚する必要はない
93年 03年
甲に近い 44.6% 35.9%
乙に近い 50.5% 59.4%
甲 結婚しても、必ずしも子どもを持たなくてもよい
乙 結婚したら、子どもを持つのが当たり前だ
93年 03年
甲に近い 40.2% 49.8%
乙に近い 53.5% 43.9%
別に結婚なんてしなくって、という人が半分以上いて、しかも増えている。
そして、子供がいなくても、と考える人のほうが多くなっているのが現状である。
どうしてなのかはこれだけではわからないが、30歳で結婚していない人が、男は4割、女は3割らしい。
結婚観、家族観が変われば、宗教観も変わるのか。
「信仰・信心」についての質問を見てみましょう。
「宗教とかに関係すると思われることがらで、あなたが信じているものがありますか。もしあれば、リストの中からいくつでもあげてください」
73年 88年 03年
ア、神 32.5% 36.0 30.9
イ、仏 41.6 44.6 38.6
ウ、聖書や経典などの教え 9.7 7.5 6.4
エ、あの世、来世 6.6 11.9 10.9
オ、奇跡 12.8 14.4 15.3
カ、お守りやおふだなどの力 13.6 14.4 15.3
キ、易や占い 6.0 7.0 7.4
ク、宗教とか信仰に関係していると思われることがらは、何も信じていない
30.4 25.8 25.6
ケ、その他 0.2 0.4 0.9
コ、わからない、無回答 5.3 5.4 8.0
5年ごとの変化をみると、「聖書や経典などの教え」以外は増えたり減ったりである。
今のところ日本人の宗教観は急激な変化はしていないと思う。
しかし、葬式を近所の人や親戚に知らせない人が増えている。
家制度や地域共同体がさらに崩れていけば、これからは先祖崇拝・祖霊信仰という日本教も衰退するだろう。
それにしても、「聖書や経典などの教え」を信じる人が着実に減っているのが、やはり悲しい。