三日坊主日記

本を読んだり、映画を見たり、宗教を考えたり、死刑や厳罰化を危惧したり。

ロシアのウクライナ侵攻と陰謀論(2)

2022年04月27日 | 陰謀論

トランプ前大統領もロシアのウクライナ侵攻はアメリカの挑発が原因だと言っています。

「プーチンを援護射撃するトランプ氏とフォックス・ニュース(JBpress2022年4月18日)
「米国内にはウラジーミル・プーチン露大統領のウクライナ侵攻を「支持」する者がいる。
ドナルド・トランプ前大統領と同氏を支持する保守派フォックス・ニュースだ。(略)
トランプ氏はこれまで「ロシアがウクライナに侵攻したのは、ウクライナをNATO加盟させようとしたのが原因だ」という主張を繰り返してきた」
https://news.yahoo.co.jp/articles/e841f3c3716b595f0af11216792c034a66524b61?page=3

この記事で気になるのが、ロシアとの取引を続けたい産業界はプーチン大統領を支持しているということです。
これは地球温暖化を認めない企業もそうなのですが、目先の利益しか考えていない人たちが自分の利益のために陰謀論をまき散らしているわけです。

三井誠『ルポ人は科学が苦手』に、20世紀後半から、規制を嫌う産業界と中絶に反対するキリスト教福音派が結びついて反科学勢力となり、共和党に大きな影響力を持つようになったとあります。
キリスト教福音派もロシア支持だそうです。

真鍋厚「ロシア情報戦に「Qアノン・反ワクチン」が接近…人が自らフェイクを求める理由とは?社会への不信の行き先」(ウィズニュース2022年3月25日)
「反ワクチンや福音主義者、極右などコロナに懐疑的なグループにおいて、ウクライナ侵攻をディープステートへの攻撃と称賛する陰謀論であふれかえっている。(略)
宗教学者のアンシア・バトラーは、アメリカの福音主義者たちが「イスラム教徒に対する強硬姿勢や、何よりも反LGBTQを掲げているロシア大統領に長い間惹かれてきた」事実に触れ、「プーチンの国家、家族、教会(この例ではロシア正教会)についてのレトリックは多くの人を魅了し、ここアメリカでも同様の政治的行動をとるように駆り立てた」と述べます。(略)
アメリカにおいては宗教右派、福音派のような人々にとって、バイデン大統領率いるアメリカ政府とウクライナが悪巧みをしているという情報は、真偽に関わらず大変好都合なのです」
https://news.yahoo.co.jp/articles/4ace954403d39b36588ad92520a9f457b3ec2cff

なぜロシアはウクライナに侵攻したのか、真鍋厚さんは「ウクライナ侵攻がコロナワクチンの被害から目を逸らさせるためにアメリカ政府が作り出したという陰謀論が意図的にまき散らされていた」と紹介しています。
「トニー・ラエリアン」は、ディープステートがロシア経済を支配するためという考えです。

「「ウクライナ危機」の裏 堤未果の緊急解説講座の一部を公開!」(2022年3月25日)
●ディープステイト・DS側は、ロシアの支配の乗り出し、ロシアの民営化を推し進めた。プーチンは、このグローバル企業のロシア侵略の真の目的を知り、海外資本を追い出し、ロシアの資源など、ロシアが取り戻した。
●プーチンがロシア民営化を潰したことを受けて、周到なプーチン潰しが始まった。
●ウクライナはそのための「道具」となった。
●ディープステイト・DS側が、その国を支配する時に、IMF(国際通貨基金)が使われる。いわゆる国家間の銀行。金貸し。ウクライナに対し、お金を融資して欲しいなら、ウクライナを民営化しろと迫る。お金を借りてしまうと、もはや、ウクライナの主要企業なども、支配されてしまうという構図。
https://ameblo.jp/tony-9/entry-12733741523.html

これはまるっきりの嘘ではないと思います。
ナオミ・クライン『ショック・ドクトリン』は新自由主義の信奉者が何をしてきたかが書かれています。

アメリカ政府とグローバル企業は、戦争や自然災害、政変などの危機につけこんだり、内乱を起こすことで、過激な市場主義経済改革を強行し、アメリカとグローバル企業がその国の経済を乗っ取ってきた。
IMFや世界銀行も彼らに加担しており、IMFの勧告に従わないと、融資は止まり、為替は暴落する。
国営企業を民営化し、自分たちが利益を独占した。
国民には還元されないので、失業率が上昇して貧困層が増え、格差は拡大した。
自由を制限し、抗議行動を弾圧した。

チリのピノチェトら南米の軍事政権、アパルトヘイト後の南アフリカ、アジア経済危機、イラク戦争、ソ連崩壊後のロシアなどがその例です。
ですから、ロシア経済を自分たちのものにするためにプーチンの失脚を画策する勢力があるとは思います。

しかし、堤未果さんがディープステートに言及しているかはわかりませんが、ロシアのウクライナ侵攻の背後にディープステートがいて、トランプとプーチンはディープステートの世界支配に立ち向かう光の戦士だとなると、これは妄想です。
習近平や金正恩も光の戦士とされるかもしれません。

4月7日、新型コロナウイルス感染症のワクチン接種会場に押し入って逮捕された人たちは神真都Qのメンバーだそうです。
https://www.sankei.com/article/20220407-TIFBBSTOLNKBXK4AAX3CCG3RFA/

神真都Q会結成宣言
http://urx3.nu/6rwh

陰謀論者がこうした行動を取るようになると、どんな考えを持とうが思想・信条の自由だとは言えなくなってしまいます。

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ロシアのウクライナ侵攻と陰謀論(1)

2022年04月19日 | 陰謀論

今年2月、呉市会議員が旅客機に搭乗した際、マスク着用を拒んだため、離陸前に飛行機から降ろされました。
この市会議員は3月には、ロシアのウクライナ侵攻を非難し、平和的解決を求める呉市議会の決議案を、採決前の反対討論で「現地の人々はロシア軍により解放されたと喜んでいるとの情報も届いている」などと主張して、反対票を投じています。

このことの是非はともかく、反コロナ・反ワクチンの人は、コロナだけでなく、ロシアのウクライナ侵攻もでっち上げだと考え、プーチン大統領を支持しているようです。
「親露アカウントの9割、過去に反ワクチン関連ツイート 東大大学院教授分析」(産経新聞2022年4月20日)
https://news.yahoo.co.jp/articles/3db921df5b73181fbafec5fec6044bab9e8533fc

ロシアに対する陰謀には3つの考えがあると思います。
・ロシアはウクライナに侵攻していない。ウクライナの自作自演。
・ウクライナのロシア系住民が極右民族主義者、ネオナチによって虐殺されており、ロシアは虐殺を防ぐためウクライナに侵攻した。
・プーチン大統領はアメリカに挑発されてウクライナを攻撃した。

ロシアは侵攻したのか、していないのか、真逆の主張なのですが、陰謀論の常として陰謀論者はそんなことは気にしません。

まず、ロシアはウクライナを攻撃していないということ。
「ロシア、ウクライナでの民間人殺害を断固否定 映像は米国の策略」(Reuters2022年4月4日)
「ブチャにおける民間人とみられる多数の遺体の写真や映像について、ロシアを非難するための策略で、米国の「指示」によるものだと主張した」
https://jp.reuters.com/article/ukraine-crisis-russia-bucha-zakharova-idJPKCN2LW0I0

「ウクライナに飛び込み撮影した男性が公表しました。追記」(「トニー・ラエリアン」2022年3月22日)
「キエフ市内を歩いていて、戦闘の証拠を見つけることが出来ません。キエフの町は、映画のセットとなっています。廃車などが戦闘の小道具として置かれています」
ブログ主のコメント
「ウクライナに入った米FOXテレビの取材班が狙撃され、カメラマンが射殺された理由が分かるようです。FOXテレビは、ロシアの言っていることは真実だと、タブーを破って、アメリカのテレビで報道しました」
http://u0u1.net/wPj0

ニュースやツイッターなどで見るロシアの空爆や破壊された街の映像などは作られたものだそうです、
FOXテレビについては後に触れます。

「トニー・ラエリアン」というブログ名は、宇宙人のメッセージを全人類に伝えようとしているラエリアン・ムーブメントと関係があるのでしょうか。
他の記事を見ると、反コロナ・反ワクチンの立場です。

日本経済新聞編集局長も「ロシア軍が原発攻撃って誰が言ってるんだ。分かんないだろ。(ウクライナ側の)自作自演の可能性もある」と言っています。
https://bunshun.jp/denshiban/articles/b2674

こうした「戦争はメディアの捏造だ」「役者やCGによって創作されている」「欧米諸国が誇張している」という主張をBBCが検証した記事です。
シャヤン・サルダリザデフ「ウクライナ侵攻は「でっちあげ」というネットの偽情報」(BBCニュース2022年3月8日)
https://www.bbc.com/japanese/features-and-analysis-60657780

都市が廃墟と化していないなら、戦争終結後にバレてしまいます。
450万人以上もの国外避難民がエキストラなら、誰かが「お金をもらった」と言いそうです。
あり得ない話だと思うのですが。

ロシア系住民がウクライナ軍によって虐殺されているということ。
「ウクライナ危機、フランス人ジャーナリストが証言「ウクライナを爆撃しているのはロシア軍ではない」(CNEWS2022年3月1日)
https://www.youtube.com/watch?v=V1rffL9EEOM

ロシアが占領しているドンバス地方にウクライナが空爆しているという訴えです。
呉市会議員が言う「現地の人々はロシア軍により解放されたと喜んでいる」のはドンバス地方のことであり、「現地の人」とはロシア系住民だと思います。
2014年に始まったドンバス戦争が現在も続いていることを私は知りませんでした。
しかし、ウクライナがドンバス地方が爆撃していたとしても、ロシアの侵攻が正当化されるわけではないのはもちろんです。

アメリカがロシアを挑発したということ。
古谷経衡さんに届く「一方的にプーチンが悪いとか、ロシアが悪いと言わないでください!」というメッセージには、馬渕睦夫元駐ウクライナ大使の対談が引用されているそうです。

古谷経衡「「プーチンさんを悪く言わないで!」という”陰謀論”動画の正体」(2022年3月4日)
馬渕睦夫「ヒトラーが世界制覇を狙ってるとかって言ってね、ヒトラーを倒せということで、アメリカとイギリス、フランスもいましたけど組んで、とにかくヒトラーを挑発したわけですね。で、ポーランドに最終的には侵攻させてね。
その侵攻の直接の原因になったのは、ポーランドの西側って旧ドイツ領ですからね、ドイツ人がたくさん住んでいるんですよ。そこでポーランド政府側がドイツ人の虐殺をやったんですよ。だから結局ヒトラーも追い詰められて、侵攻せざるを得なかった。同じことが行われている。まずそうやって挑発させてね、東ウクライナでね、ロシア人を虐殺する。そうするとプーチンだって黙っていられない訳ですよ」
https://news.yahoo.co.jp/byline/furuyatsunehira/20220304-00284877
太平洋戦争はルーズベルトが仕掛けたという陰謀論が根強くありますが、ヒトラーも挑発されて、やむを得ずポーランドに侵攻したという説は初めて知りました。

馬渕睦夫さんはロシアのウクライナ侵攻自体は否定していないようです。
誰がロシアの侵攻という嘘をでっち上げたのか、もしくは挑発してウクライナを攻撃させたのか、馬渕睦夫さんによると、おなじみのディープステート(=バイデン大統領たち)です。

馬渕睦夫さんは「ユダヤ系が結局、ソ連が崩壊して、あたらめてロシアの実権を握ったと。で、それに対して彼らの手からロシア人の手に取り戻したのがプーチン大統領なんですね(笑)。ということはいまトランプ大統領が、ディープステートの手から自分たちの手に、つまりアメリカのピープルの手にアメリカ政治を取り戻そうとしているのと、同じ構図なんです」とも語っています。

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渡辺一枝『消されゆくチベット』(2)

2022年04月06日 | 

チベットの中国化が進んでいることが渡辺一枝『消されゆくチベット』を読むとわかります。

2006年、チベット自治区の人口277万人のうち、中国人(漢人)は6%。
チベットには大勢の中国人が移住しており、チベット人よりも中国人が多い場所もある。

中国人が経済を握っており、会社や商店の経営者や社員のほとんどが中国人。
パルコルの土産物屋も多くは主人が中国人である。
辺鄙な町にも中国人の店がある。
中国人とチベット人が同じ仕事をしても、賃金に差がある。

渡辺一枝さんがチベット北部のチャンタンを旅していた時、あちこちで道路建設をしていた。
チベット内の道路なのに、中国人が働いている。
四川省から来た出稼ぎの中国人は「収入はいいが、故郷に仕事があれば、ここで働きたくない」と語った。

鉄鉱石、金、雲母など鉱物資源が中国人によって採掘され、中国に運ばれる。
チベット人の主食であるツァンパの材料の裸麦より小麦を作るようになり、大根(プゥラブ)は中国大根(ギャラブ)になった。
中国人がスイカを好むので、スイカ畑が急増した。

化学肥料や農薬の使用が義務づけられ、しかもその代金を農民が支払わなければならない。
放牧では効率が悪いと、牧民の定住化が進められ、畜舎で配合飼料で育てるようになった。

ものは豊富になり、道路は舗装されて便利になったが、その一方で自然が破壊されている。
しかし、抗議をすれば、不穏分子と見なされる。

経済だけでなく、教育も中国化されています。
チベットでの教育は中国語で行われている。
渡辺一枝『消されゆくチベット』(2013年)によると、小学校は1年ではチベット語と中国語で授業が行われ、学年が上がるにつれて中国語の授業が増えていき、中学校以上の上級学校は中国語だけとなる。
小学校の一部にはチベット語の授業はせず、中国語だけの学校もある。
中国語だけで教育を受けた者のほうが就職などで有利な条件を得る。

2018年から授業は中国語で行われており、チベット語の授業は禁じられた。
チベット文字を教えないので、チベット文字の読み書きができない若いチベット人が増えた。
道標や店の看板などに書かれているチベット文字すら読めない。
チベット語経典を読めない僧侶もいる。

テレビでは中国語の番組ばかりで、字幕も漢字。
チベット語の番組はほとんどない。
中年のチベット人でも会話に中国語の単語が混じる。

中国語しか話せなくても困ることはないが、中国語を話せないと不便になる。
買い物をする時に、中国語ならどの店でも通じるが、チベット語は通じない店がある。
役所に提出する書類は中国語で書かないといけない。

言葉は。民族、文化のかなめですから大切です。
その大切な言葉を政府はチベット人から奪っています。
渡辺一枝さんはこう書きます。

言葉は、心だ。民族の言葉は、その民族の心だ。ある民族が、他の民族の言葉を奪うような歴史を繰り返すことを、私たちは許したくない。

もっとも、日本もアイヌ、沖縄、朝鮮や台湾で同じことをしています。

パンチェン・ラマ10世が「チベットは中国から得た恩恵よりも、中国によって失ったもののほうが大きい」と言ったそうです。
チベット人ガイドが渡辺一枝さんに「いつか君は、僕が「結婚はしないよ」と言ったとき、なぜ?って聞いたね。チベットがチベット人の手に戻るまでには、道は遠いかもしれない。その日までは一人でいるほうが、自分の思いに正直に生きられる。だから、僕は結婚はしない」と言います。

渡辺一枝の本を読んだ中国の公安が渡辺一枝さんの知人を取り調べないかと心配になります。
現在のチベットは新疆ウイグル自治区のような状態なのでしょうか。

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