三日坊主日記

本を読んだり、映画を見たり、宗教を考えたり、死刑や厳罰化を危惧したり。

鈴木伸元『性犯罪者の頭の中』

2020年02月23日 | 

性犯罪は、性欲が強い人がセックスしたくて起こすと思っていました。
そして、被害者にも挑発的な服装をしているなどの問題があるという差別的な気持ちも正直ありました。
しかし、鈴木伸元『性犯罪者の頭の中』を読んで、それは間違いであり、性犯罪者H性依存症という病気だということを知りました。

性依存症には、置換、盗撮、のぞき、露出、下着泥棒、強姦などがあり、それらは犯罪になる。
アルコール依存症の人は、のどが渇いたから酒を飲むのではなく、酒を飲んで嫌なことを忘れたり、強気になって他人に言いたいことを言えるようになったりしたいから飲む。
性犯罪を「性的欲求」の問題としてのみとらえるのは大きな過ちであり、〝ムラムラして飛びついた〟という理解をしてばかりいては、全く対策に結びつかない。

WHOによる性依存症の定義。

ある快感を覚えた特定のものごとを繰り返し行うことにより、さらなる刺激がほしくなり、他のことに優先してそれをせずにいられない、しないことが耐え難い状態。


子供を狙った性犯罪をするのは小児性愛者であり、見た目も気持ち悪い人というイメージがあるが、鈴木伸元さんが取材を通して会った人たちの印象は全く違っていました。

むしろ、小ざっぱりとした格好をしており、ごく普通に働いて社会人としての生活を営んでおり(結婚をしている場合も多い)、会話も極めて普通のやりとりが成り立つ。何も知らなければ、とてもそんな性犯罪を重ねているとは思えないような人物ばかりだった。


精神科医の榎本稔さんによると、性依存症でクリニックを訪れる人は、30代から40代で、会社員が多いそうです。
『やめられない人々』に、「高学歴でちゃんとした職業につき、社会的地位も比較的高い人」がかなり多いとあります。

加害者に行なった調査によると、性犯罪者の60%近くは、「両親からかわいがられて生育している」と答えている。
生育歴によって全ての性犯罪を説明することはできない、
〝性犯罪者〟という言葉がもつイメージと、実際の性犯罪者の実像との間には、大きなギャップがある。

ある矯正関係者は、性犯罪者は十人十色だとしながらも、「昼は普通に仕事をしていて、夜は全くの別人になりたい、と思っているケースが少なくない」と語った。「表の顔」と「裏の顔」を併せもつことで、自分の居場所を確保し、そのことによって、次の犯行へ、さらに次の犯行へと、性犯罪を重ねていってしまう。


藤岡淳子大阪大学教授はこのように語っています。

「性暴力の動機は、「衝動的でコントロール不能」と考えがちだが、実際は違う。加害者は、犯行を成功させるという目的に沿って、「狙いやすい対象」を選び、「犯行が成立しやすい場所や時間」を選んでいる。目的に向かった理知的な行動をとっているのである」


衝動的にではなく、計画的に被害者を選んでいる。

性犯罪の加害者を対象にカウンセリングをしている専門家「痴漢でも、成功するたびに自分がスキルアップしている感覚になり、やめられなくなるという例が多い」。

万引きを繰り返す人の中にも、「自分がスキルアップしている」「自分はできる人間だ」ということを確認している人たちがいる。
万引きを繰り返す人は、お金がなくて仕方なく盗むのではない。
親を困らせたい、スリルを味わいたい、万引きのスキルを自慢したいなど、多様な動機が存在している。

性犯罪の多くは、支配、優越、復讐、依存などの欲求によって行われる。
秋山千佳『ルポ保健室』によると、性的虐待は、性的欲求による行為だと思われがちだが、実際は、社会生活での無力感を埋め合わせるための、「支配欲求」が主な欲求であるケースが多いそうです。

高揚感、達成感、コントロール感、充実感、反社会的行動をしているという興奮。
緊張感と成功したときの解放感。
犯行がうまくいくことで、そうした欲求は一時的に充足される。
その充足感によって性暴力は習慣化しやすい。

藤岡淳子教授「性暴力をふるうことによって得られた充足の体験が、その手段を捨て去ることを極めて困難にする」


刑務所を出所した性犯罪者の多くは、「自分はまた性犯罪をしてしまうのではないか」という再犯のリスクにおびえながら暮らしている。

元受刑者「自分のことを客観的に分析できる人間だからこそ、抜け出せないのだと思います。自分はもっとできる人間のはずだ、もっとちゃんとした生活ができるはずだ、という思いが自分を支配しています。現実には思い通りにならないことばかりで、そのギャップをどうにも解消できなくて、性犯罪に向かってしまうのではないかと思います」


榎本稔さんは、性犯罪者には被害者に対する罪悪感がなく、責任転嫁をすると書いています。
これを認知のゆがみといいます。

・最小化 事柄を実際よりも小さく考えようとする。たとえば約束の時間に遅刻したとき、大したことはないと考える。
・正当化 やるべきことをしなかったり、やるべきではないことをした時、「自分は正しい」と考え、主張し続ける。
・遠くのゾウ 責任を回避するために、前もって考えない。
・一般化 失敗、あるいは成功した時、たまたまであっても、「次も絶対失敗する」(成功する)と考えたりして、一般化する。

仕事がうまくいかない→上司に叱られる→死んだほうがいいという気持ちになる→帰宅して性的動画を見る→マスターベーションをする→リフレッシュする→翌朝、変わらない現実にうんざりする→再び仕事でうまくいかない→

藤岡淳子教授「人間は大きなストレスに対して、何か別のものでそれを埋めようとする。性犯罪は、そのうちの最悪の代償行為の一つです」

ストレスの悪循環を断つため、認知行動療法によって違う発想法を身につける。
とはいえ、簡単ではなさそうです。

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大谷洋子「死刑廃止へ。カリフォルニアの経験」

2020年02月16日 | 死刑

大谷洋子「死刑廃止へ。カリフォルニアの経験」(「FORUM90 vol.169」)という講演録に、いかにお金や署名を集めるかの説明があり、興味深かったです。

大谷洋子さんはカリフォルニアのDeath Penalty Focus(DPF)という非営利団体に勤めている。
DPFの活動の一つが死刑に関する情報や問題を支援者や一般市民と共有すること。

 ・収入源について。
① 個人的な寄付
手紙やEメールなどでお願いする。
アメリカの生活の中には宗教があるのと、チャリティが当たり前という文化がある。
春先と冬、特にサンクスギビングやクリスマスのシーズンである冬場が一番大きい。
その時期は何十億という寄付金が国内で動く。
アメリカでは、寄付金は税金が免除になるので、年末に寄付をして、その年の課税額を少なくする。

② イベント
多くのNPOは年に1回から2回、ファンドレイザーという資金集めのパーティーをする。
死刑反対のために活動した人を表彰するパーティーで、チケットが1席3万~5万円、1テーブルで30万~100万円ぐらい。
前のほうの高い席だと250万円する。
プログラムに載せる広告は2万円から100万円。
チケットや広告で収入が2000万円、そこから食事代やホテル代を引いて1000万円ぐらいが入ってくる。

③ 財団からの寄付金
金持ちは税金対策のために、財団を作ってチャリティをする。
大企業や大きい法律事務所は年間何百万、何千万円という枠を設けている。
財団から寄付をしてもらうために、NPOは、こういう活動をしていて、これだけのお金が必要だという企画書を出さないといけない。
審査にパスすると、5万円から1億円、3億円という付与金が与えられる。

④ オンライン・オークション
ハリウッドの俳優に頼んで品物を寄付してもらい、オンラインのオークションにかける。
クリントン大統領と対談するというのは1000万円で落札。
グーグルのCEOとの対談は300万円で落とされた。

⑤ その他
プリズン・ロー・オフィスという団体は、受刑者から人権侵害だったり法律違反という苦情を訴える手紙が毎日300通ほどの来る。
勝算のあるケースや深刻なケースは弁護士が告訴し、最終的には和解金をもらう。
和解金だけで毎年約10億円から12億円の収入がある。
弁護士の時給がだいたい5万円から15万円なので、それで収入を得ている。

 ・州民投票のための死刑廃止キャンペーン
州民投票は4年に一度の大統領選挙の年にするのが一般的。
2016年はキャンペーンが17~18あり、死刑廃止はその一つ。

① リサーチ
州民投票を起こすためには準備段階が重要。
いろんなことを調べるためにプロのリサーチ会社に頼む。
たとえば、州民投票をするときに、どのような文言にすれば死刑反対にイエスとチェックしてくれるかに焦点が合わされる。
条件を変えたり、語順を変えたりして、いろんな質問をする。
最終的に投票用紙にどのような質問をするかを、コンサルタントと相談しながら決める。
最終的に有効な質問は、「死刑を廃止すると年間150億円が節約できる」といった、死刑にかかる費用を前面に押し出すことだった。

キャンペーンには莫大な費用がかかるので、まず支援者を見つけないといけない。
2016年には、スタンフォード大学の教授が1億円、ネットフリックスのCEOが1億円を約束してくれた。
文言が決まると、州の司法長官とそのチームが文言に間違いがないかなどの精査をする。

② 署名集め
次に署名集めをする。
前回の州知事が得た得票数の5%の署名を集めないといけない。
2016年は30万数千票だったが、2020年は62万票ぐらいの署名が必要。
署名集めはボランティアだけでなく、プロの署名活動家にもお願いする。

一署名あたり100円ぐらいしか出していなかったので、署名用紙が17から18あるキャンペーンのリストの最後のほうになってしまう。
一般の人たちは署名用紙の全部に署名はしない。
なるべく上のほうにしてもらうため、プロへの支払いがだんだん高くなり、最終的には1000円ぐらいになった。
結局、署名だけに3億何千万円も使った。
テレビ広告をもっと入れたかったが、30秒スポットでも1000万円から5000万円かかる。

 ・お金の必要性
どういうふうにしてお金を集めるか。

アメリカでは、政治関係のお金を誰かに寄付すると、それを全部報告しないといけない。
その報告はインターネットで見ることができるので、毎日チェックし、たとえば同性婚に賛成している人を全部書き出して、インターネットでさらに調べ、この人を知っている人を探し、プレゼンテーションをして寄付のお願いをする。
だいたい100万円ぐらいはくれる。
それで、2016年には11億円ぐらいを集めた。

しかし、死刑廃止の住民投票では勝てなかった。
敗因としては費用が足りなかったこと。
キャンペーンに勝つためには13億円から15億円は必要だと言われている。
州民の民意よりも、お金があれば政治を変えられる。
正義であっても、お金がないと変えられない。

以上ですが、寄付金の額の多さに驚きました。
毎日新聞の書評で、石澤靖治さんがハーラン・ウルマン『アメリカはなぜ戦争に負け続けたのか』をこのように紹介しています。

ウルマン氏は安全保障の専門家として、同書でアメリカの安全保障政策の迷走を厳しく批判している。そして、それはアメリカの政治が選挙で勝つことを最優先し、経験ある指導者を選んでいないからだと断ずる。つまり経験豊富な候補者は有権者にとって魅力的でなく、メディアに祭り上げられた素人だけを当選させてきたということである。その中で近年唯一合格点をあげられる大統領はブッシュ(父)とのことだが、彼はメディアをうまく使ったクリントンに敗れて再選に失敗している。それこそがメディア選挙の最大の悲劇なのかもしれない。

https://mainichi.jp/articles/20200202/ddm/015/070/001000c

大統領選も死刑廃止も結局は金次第ということです。

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2019年キネマ旬報ベストテン

2020年02月09日 | 映画

「キネマ旬報 ベストテン特別号」を買いました。
邦画のベストテンです。

1位『火口のふたり』215点
2位『半世界』154点
3位『宮本から君へ』146点
4位『よこがお』137点
5位『蜜蜂と遠雷』113点
6位『さよならくちびる』111点
7位『ひとよ』109点
8位『愛がなんだ』103点
9位『嵐電』102点
10位『旅のおわり世界のはじまり』101点
意外だったのは『嵐電』で、あとは順当。

11位『新聞記者』92点
12位『岬の兄妹』86点
13位『長いお別れ』82点
14位『楽園』68点
15位『町田くんの世界』66点
16位『タロウのバカ』65点
17位『凪待ち』62点
18位『カツベン!』53点
19位『月夜釜合戦』52点
20位『多十郎殉愛記』49点

私の予想は10位までが8本、20位までは17本が当たりました。
『天気の子』は25位でした。
『男はつらいよ お帰り寅さん』はありませんでしたが、年末公開の作品は来年まわしなのでしょうか。

ヨコハマ映画祭
1位『火口のふたり』
2位『蜜蜂と遠雷』
3位『愛がなんだ』
4位『宮本から君へ』
5位『半世界』
6位『新聞記者』
7位『ひとよ』
8位『岬の兄妹』
9位『よこがお』
10位『さよならくちびる』
次点『凪待ち』
キネマ旬報ベストテンとは8本が同じです。
ベストテンに入らなかった2本も11位と12位でした。

洋画です。
1位『ジョーカー』254点
2位『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』195点
3位『アイリッシュマン』171点
4位『運び屋』143点
5位『グリーンブック』134点
6位『家族を想うとき』130点
7位『COLD WAR あの歌、2つの心』128点
8位『ROMA/ローマ』127位
9位『象は静かに座っている』126点
10位『バーニング 劇場版』99点

11位『ニューヨーク公共図書館 エクス・リブリス』90点
12位『帰れない二人』86点
13位『ブラック・クランズマン』76点
14位『サタンタンゴ』68点
15位『荒野の誓い』67点
16位『ハウス・ジャック・ビルト』62点
17位『マリッジ・ストーリー』59点
18位『女王陛下のお気に入り』57点
19位『存在のない子供たち』54点
20位『ボーダー 二つの世界』51点
珍しく予想外のものはありませんでした。

私の予想は10位までが8本、20位までは17本が当たりました。
これ以外で、私がいいと思ったベスト3の『イエスタデイ』は21位、『スパイダーマン: スパイダーバース』40点、『ホテル・ムンバイ』は136位でした。

SCREEN外国映画ベストテン
1位『ジョーカー』176点
2位『グリーンブック』156点
3位『ワンス・アポン・ア・タイム・イン・ハリウッド』116点
4位『アイリッシュマン』85点
5位『女王陛下のお気に入り』78点
6位『ROMA/ローマ』74点
7位『運び屋』67点
8位『ブラック・クランズマン』55位
9位『家族を想うとき』53点
9位『COLD WAR あの歌、2つの心』53点
キネマ旬報ベストテンとは8本が重なっています。

他の作品。
11位『ボーダー 二つの世界』44点
13位『象は静かに座っている』31点
14位『マリッジ・ストーリー』30点
20位『ニューヨーク公共図書館 エクス・リブリス』21点
22位『存在のない子供たち』20点
27位『ハウス・ジャック・ビルト』18点
29位『帰れない二人』16点
41位『荒野の誓い』12点
41位『バーニング 劇場版』12点
46位『サタンタンゴ』11点

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バート・D・アーマン『捏造された聖書』(2)

2020年02月04日 | キリスト教

バート・D・アーマン『捏造された聖書』には、2~3世紀のキリスト教異端についても書かれています。

聖書を複製する書記は意味が通るように聖書の言葉を書き直すこともあったし、神学的理由で書き直すこともあった。
神学的理由の一つが異端を否定するため。

さまざまに異なる信仰を持つキリスト教徒たちは、自分たちの真理を他の者たちに教えこもうと努めていた。
こうした論争の中から、最終的にたったひとつの宗派が勝ち残った。
その宗派こそ、キリスト教の信経を定めた宗派だ。
その信経によれば、創造主である唯一神が存在し、その子イエスは人間であると同時に神であり、その死と復活によって救済がもたらされた。

2~3世紀のキリスト教の異端
・養子論者
イエスは人間であって神ではないという主張。
イエスは神ではなく、血と肉を備えた人間であり、それを神が、一般には洗礼の際に、「養子」として採用した。

養子論的キリスト論を奉じた宗派の一つがエピオン派で、イエスの信徒はユダヤ人でなければならないと主張した。
エピオン派は、神は唯一であると信じていたので、イエス自身は神ではなく、私たちと変わらない人間だと考えた。

イエスは普通の人間同様、親であるヨセフとマリアの性的結合によって産まれ(だから母親は処女ではなかった)、それからユダヤ人の家で育てられた。
イエスはユダヤ律法の遵守においてきわめて義であったので、神は洗礼の際に養子として採用した。
その時以来、イエスは自分が神から与えられた使命(他者の罪への犠牲として十字架の上で死ぬこと)を果たすために呼ばれたと感じ、召命に忠実に従った。
神はこの犠牲を讃え、イエスを死から甦らせ、天に上げ、今も来るべき審判の日に地上に舞い戻る時を待っている。

・仮現論者
キリストを完全なる神と見なす。

イエスは完全な血肉を備えた人間ではなく、神以外の何ものでもない。
肉体のように見えるものを持って地上に現れたから人間のように見えるだけ。
つまり、餓え、渇き、苦悩し、血を流し、死んだかのように見えるだけなのだ。

よく知られた仮現論者はマルキオン。
マルキシオンは使徒パウロの生涯と教えに完璧に入れ込んでいて、パウロこそが教会の黎明期以来の唯一の「真の」使徒だと信じていた。

パウロは、神の前に正しく立つことのできる者はキリストを信じた者だけであって、ユダヤの律法に書かれていることを実践した者ではないと述べている。

マルキシオンはユダヤの律法とキリストの福音とは全くの別物だと考えた。
律法と福音は同じ神に由来するということはあり得ないということになる。
そこでマルキシオンは、イエスとパウロの神は旧約聖書の神とは別物であると結論するに至る。

つまり、ふたりの別の神がいるというわけだ。ひとりはユダヤ教の神、世界を創造し、イスラエルを自らの民と呼び、彼らに過酷な律法を与えた神だ。もうひとりはイエスの神、ユダヤ教の創造神の暴虐な天罰から人々を救うために、キリストを世に送りこんだ神だ。


イエスはこの物質世界を創った神に由来するものではないので、この物質世界に属していない。
だから、イエスが現実にこの世に誕生したということはあり得ないのであり、物質的な肉体を持ってはいなかったのであり、実際に死んだのでもない。
そう見えたというだけの話にすぎない。

・分割論者
イエス・キリストを2つの存在であるとし、一方は人間、もう一方は神だと考えた。

人間イエスが一時的に神的存在であるキリストに乗り移られ、それによって彼は奇蹟を行ない、教えを説くことができるようになった。だがイエスの死の前にキリストは彼を見捨て、彼は独りで磔刑に臨まなくてはならなくなったのだ。


分割的キリスト論を好んで唱えたのはグノーシス派。
グノーシスとはギリシア語の知識を意味する言葉から来ている。
救済のための秘密の知識の重要さを強調した。

私たちの住む物質世界は唯一なる真の神の創造したものではない。それは神界の災いの結果として生じたもので、その時、神的存在のひとりが何らかの神秘的な理由によって天界を追われた。彼女が神性を失った結果、劣位の神によって物質世界が創られた。この劣位の神が彼女を捕え、地上の人間の肉体の中に閉じ込めた。だから人間の一部は、自らの中にこの神の火花を持っている。彼らは自分が何者なのか、どこから来たのか、どうやって来たのか、そしてどうやったら故郷に帰れるのか、等々の真実を学ばねばならない。この真実を学ぶことこそが救済への道である。
この真実というのは、秘密の教え、神秘的な「知識(グノーシス)」であって、天界の神的存在のみがそれを伝えることができる。グノーシス派キリスト教徒にとって、キリストとは救済の真実を啓示する神的存在だ。多くのグノーシス派の教義では、キリストは人間イエスの洗礼の際に彼の許にやって来た。そして彼に使命を果たす力を与え、最終的には彼を見捨てて十字架で死なせた。だからこそイエスは、「わが神、わが神、何故あなたは、私をお見捨てになったのですか?」と叫んだのだ。グノーシス派にとっては、キリストは文字通りイエスを見捨てたのだ。


私には、イエスが神の子であり、処女懐胎によって生まれ、肉体の復活をしたという考えとどっちもどっちのように思えます。

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