新型コロナウイルス否定論やワクチン有害論自体が陰謀論だというわけではないと思います。
コロナ陰謀論は単にワクチンの危険性を訴えているのではありません。
陰謀論とは、出来事や事件を背後で操っている人・組織(ユダヤ人、フリーメーソン、ディープ・ステート、ビル・ゲイツなど)がいるという荒唐無稽な主張です。
ワクチン接種に反対する人の中には、そうした人や組織が世界を支配しようと陰謀をたくらんでいると考えている人たちがいます。
陰謀論の定義です。
陰謀論者はあらゆるものに決まったパターンが存在すると信じ、隠された意味を読み取ろうとします。
自然現象も人為的に起こされたと陰謀論者は考えます。(東日本大震災は地震兵器によって起こされたなど)
何事にも偶然はない。
あらゆる出来事は意図的に発生する。
陰謀を画策する者たちは正体や活動を隠蔽する。
表面上は清廉潔白に見えても無害だという保証にならない。
そうして、陰謀論を作り上げるわけです。
もっとも、ある組織が実際に裏で操って事件を起こす場合があります。
たとえば、グアテマラのアルベンス政権、チリのアジェンデ政権を倒した軍事クーデターは、資金を出し軍事援助をしたCIAが黒幕です。
歴史修正主義者にとって、南京事件や慰安婦問題、関東大震災での朝鮮人虐殺などはデマであり、反日勢力が日本をおとしめるための陰謀だと考えるでしょう。
陰謀論か事実か、その見極めは簡単ではありません。
呉座勇一『陰謀の日本中世史』に、秦郁彦『陰謀史観』にある陰謀論の特徴を紹介されています。
①因果関係の単純明快すぎる説明
陰謀論は、ある出来事が起こるには複数の要因があるのに、一つの要因に単純化して説明するので、単純明快で分かりやすいことが多い。
実際はさまざまな要因が絡み合って半ば偶発的に起こる。
コロナ禍は何者かによって作り出された。
②論理の飛躍
状況証拠しかないのに、自分の憶測や想像で話を作っていく。
ワクチンの接種には秘密の目的が隠されている。
コロナ陰謀論は、Youtubeで見た、ブログに書いてあったなど、根拠がはっきりしません。
③結果から逆行して原因を引き出す
結果から逆算して説明し、事件によって最大の利益を得た者が真犯人だと決めつける。
たとえば、アメリカはペリー来航以前から日本を支配しようとしたなど。
突然、未知の伝染病が世界中に広まることはおかしい。
④挙証責任を批判者側に転嫁する
陰謀論は明確な証拠に立脚していない。
そのことを批判されると、「証拠となる資料が廃棄された」、もしくは「隠蔽されている」と逆に非難する。
UFOの実在を信じる人は「UFOが存在しないことを証明しろ」と迫るが、宇宙人が地球に近づく可能性はゼロではないので、存在しないことは証明できない。
陰謀論者「コロナのワクチンを接種すると不妊になる」
河野太郎大臣「ありとあらゆるワクチンが出ると、『打つと不妊になる』という話になるが、全部デマだ」
陰謀論者「不妊にならないことを証明しろ」
なんでもそうですが、100%成り立たないと証明することは困難です。
もう一つ、陰謀論の特徴をつけ加えるなら、つじつまが合わない、矛盾があるということです。
新型コロナウイルスが存在しないのなら、多くの人が肺炎にかかり、死亡する人も多いことをどうやって説明するのか。
ワクチン接種によって何十億もの人にマイクロチップを埋め込むなら、大量のマイクロチップをどこで生産したかのか。
日本で悪魔主義者が子供を3万人も誘拐しているのに、警察庁の統計だと、20歳以下の行方不明者は18000人ぐらい。
https://www.npa.go.jp/safetylife/seianki/fumei/R01yukuefumeisha.pdf
陰謀論には他にも突っ込みどころはたくさんあります。
でも、陰謀論を信じている人はそうしたことは気にしないと思います。
ロバート・T・キャロル『懐疑論者の事典』は超自然・オカルト・超常・疑似科学などについて書かれた本です。
超自然・オカルト・超常・疑似科学などを信じている人は、証拠や反論を提示してもたぶん時間の無駄だから、読者対象として想定していない。
トゥルー・ビリーバーに陰謀論信奉者を加えてもいいと思います。