三日坊主日記

本を読んだり、映画を見たり、宗教を考えたり、死刑や厳罰化を危惧したり。

ネトウヨと被害者意識

2022年08月28日 | 日記

ネトウヨの主張は被害者意識がひそんでいるように感じます。
反権威、反知性は、権威や専門家にバカにされているという劣等感。
陰謀論は、日本を陥れようとする秘密組織によって被害を被っているという妄想。
排外主義や歴史修正主義にも被害者意識がうかがえます。
中国や韓国が言いがかりをつけて日本を非難しているとか。

吉田嘉明DHC会長

今、多くの番組で東大や早稲田出身の教授、在日帰化人のジャーナリストや文化人、一見性別不明の左翼芸能人らが特に珍重されているようです。私が在日帰化人の問題に触れると、すぐに「ヘイトだ」「差別発言だ」と言われますが、私は決して差別主義者でもレイシストでもありません。(産経新聞ウェブメディア)

在日が日本を支配しつつあるという思い込みは在日特権陰謀論とでも言いますか。

トランプ前大統領の、メキシコから不法移民が入らないよう国境に壁を作るとか、イスラム圏7カ国からの入国を制限するといった主張も同じです。

在特会の桜井誠と西村修平は、まったくの虚構をもとに排外主義運動を展開したと、樋口直人『日本型排外主義』に書かれています。
在日特権という虚構はアイヌ、沖縄、被差別部落などへの利権攻撃につながるし、生活保護受給者へも向けられます。
NHK党はNHK批判だけしているわけでなく、歴史修正主義、生活保護バッシングなどネトウヨ的主張もしているそうです。

樋口直人さんは排外主義を「国家は国民だけのものであり、外国に出自を持つ(とされる)集団は国民国家の脅威であるとするイデオロギー」と定義します。

極右といっても、ヨーロッパではバリエーションはかなり存在し、共通項はナショナリズムと排外主義くらいしかない。
樋口直人さんは、石原慎太郎は極右であり、日本維新の会は極右政党だとします。
石原慎太郎さんの三国人発言などは明らかな排外主義です。

排外主義も主張はさまざまですが、樋口直人さんによると、日本の排外主義運動には3つの源流があります。
①既成右翼の一部
②歴史修正主義的な右派市民運動
③ネット右翼

冷戦時の保守にとっての仮想敵国はソ連であり共産圏だった。
既成右翼にとって在日外国人は重要な問題となってこなかった。
90年代後半からは反日勢力としての東アジア近隣諸国が攻撃の対象となった。

西村幸祐は2011年3月、桜井誠の暴走に「思想的、政治的に一線を画せざるを得ない」と明言。11月には「チンピラの恫喝・脅迫、言いがかりと何ら変わらず、ただの弱い者イジメの街宣ではないか」などと断じた。
西村幸祐さんだって威力業務妨害で逮捕・勾留されているのに。

永吉希久子「ネット右翼とは誰か」(樋口直人他『ネット右翼とは何か』)によるネット右翼の定義。

①中国・韓国への否定的態度
②保守的政治志向
③政治・社会問題に関するネット上での意見発信や議論

ネット右翼はこの3つの条件をすべて満たす。
①と③の条件を満たすが、②の保守的政治志向が見られない場合はオンライン排外主義者と定義する。

保守的政治志向の有無は、「靖国公式参拝」と「憲法9条の改正」に対する賛否と、「国旗・国歌を教育の場で教えるのは当然である」と「子どもたちにもっと愛国心や国民の責務について教えるよう、戦後教育を見直すべき」への同意の程度で測定。

オンライン排外主義者は保守的政治志向を必ずしももたない。
オンライン排外主義者のうち、靖国公式参拝には39.0%、憲法改正には29.2%、国旗・国歌教育には51.7%、愛国心教育には35.8%が賛成している。

ネット右翼とオンライン排外主義者の共通点と相違点
①ネット右翼は自民党や安倍首相に好感をもち、保守を自任している。
③反中・反韓や日本の伝統的な姿を重んじる
ネット右翼は権威に従順であることを重視し、現政権(安倍政権)に肯定的であり、政治に自分の声が届いていると感じている。
④政治・社会問題の情報源としてインターネットや本・雑誌、所属団体からの情報を利用する人ほどネット右翼になりやすく、テレビを利用する人ほどなりにくい。

保守系雑誌・書籍やインターネット上の情報を通じて「マスコミが報じない真実」を学習することでネット右翼へと近づいていく。
オンライン排外主義者は「一般市民の声は、エリートや政治家の意見よりも正しいことが多い」と考える傾向がある。

排外主義は保守にとどまらない層に広がっていて、そこからオンライン排外主義者が生まれていると考えられる。


なぜ他国の人間、特に東アジア、開発途上国の人を嫌うのか考えてみました。
・異なる文化、言語、習慣を受け入れることへの忌避感
・仕事を奪われるのではという不安
・治安が悪化するのではという不安
つまり、今までの生活が変わることへの抵抗感があると思います。

『日本型排外主義』に、排外主義の活動家34名の聞き取りがされています。
その主張には在日韓国人や在日朝鮮人に対する激しい憎悪がある。
敵視の対象はリベラルのイメージで語られることが多い政治家や知識人にも向けられる。
日本の排外主義の活動家を調べても、際だった特徴が見つけにくい。
外国人と接点があったのは15名で、そのうち12名は影響がないと答えている。
外国人との直接的な接触によりネガティブな意識を抱いたのは3名。
外国人と接した経験が排外主義と結びつくことはほとんどない。
拉致問題がきっかけと答えた人もいる。
マスメディアを敵視し、マスメディアの情報を疑う一方、ネット空間に信頼を寄せる。

外国人との関わりはないし、ネットの不確かな情報しか持っていないのに、なぜか排外主義になるのです。
しかし、幕末に攘夷という排外主義が勢力をふるいましたが、結局は西洋文明を受け入れました。
鬼畜米英と叫んでいたのが、敗戦でアメリカン・デモクラシーを受け入れました。
多文化の日本は避けられないと思います。

樋口直人さんの調査によると、排外主義運動とつながるきっかけとなった出来事として、歴史修正主義だと答えた人がいます。
歴史修正主義には、自分の国にとってマイナスとなる出来事は認めないわけで、そこに被害者意識を感じます。
中国は南京虐殺、韓国は従軍慰安婦問題を利用して日本をおとしているというふうに。

三笠宮崇仁『日本のあけぼの』(1959年)にこうあります。

偽りを述べる者が愛国者とたたえられ、真実を語る者が売国奴と罵られた世の中を、私は経験してきた。もっとも、こんなことはかならずしも日本に限られたことではなかったし、また現代にのみ生じた現象ともいえない。それは古今東西の歴史書をひもとけばすぐわかることである。さればといって、それは過去のことだと安心してはおれない。つまり、そのような先例は、将来も同様な事象が起こり得るということを示唆しているとも受けとれるからである。いな、いな、もうすでに、現実の問題として現われ始めているのではないか。紀元節復活のごときは、その氷山の一角にすぎぬのではあるまいか。そして、こんな動きは、また戦争につながるのではないだろうか。


斉加尚代『教育と愛国』を見てたら、関東大震災の朝鮮人虐殺や、張作霖爆殺事件の主犯は河本大佐だと書いている教科書は不採択なるのではと危惧しました。
https://www.youtube.com/watch?v=xCbWMJJ0qyg

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ネトウヨと陰謀論

2022年08月19日 | 陰謀論

Kヒロ「「東京ドームに押しかけて接種妨害」反ワクチン団体に参加しているのはどんな人々なのか」(プレジデントオンライン2022年3月31日)にこうあります。

ノーマスクで反ワクチンを訴える陰謀論団体が新型コロナウイルスワクチンの接種会場となった東京ドームに押しかけ、開場を2時間近く遅らせた騒動があった。(略)
彼らはワクチンを批判する情報に感化されて反ワクチン派になったのではない。まず知的エリートへの劣等感や医療への不信感があり、そうした感情を正当化したり肯定したりしてくれるものとしてワクチン害悪論や陰謀論に引き寄せられた面が大きいのではないか。

https://president.jp/articles/-/56072?page=1

この記事からワクチン陰謀論を信じる人たちの特徴をいくつかあげてみます。
①反知性
「専門家の説明はわからないことが多くて頭に入らない。聞きたくなかった」

②反権威
「尾身さん(尾身茂・新型コロナウイルス感染症対策分科会会長)のことが気に入らない人はみんな、『偉そうに指図しやがって』と思っている」

③被害者意識
「専門家に『間違っている』と言われる」
「どうして嫌みを言われていじめられなくてはいけなかったのか」

④承認欲求
「『反ワクチンの先生たちは自分たちをわかってくれている』という信頼感がすごい。わかってもらえたり認めてもらえたりした経験がきっかけで、深入りしていったみたいです」(家族が反ワクチン派の女性)

⑤敵
ワクチン害悪論や陰謀論には、大抵「敵」が設定されている。金もうけをする製薬会社や医師、世界を支配しようとする権力者や民族などさまざまだが、神真都Qの場合は「悪い宇宙人」が敵だ。

⑥仲間
敵と闘う仲間同士が助け合い、尊重し合うことで、それぞれの自尊心が満たされる。

⑦居場所
「この世界は自分の目に見えたままに存在している」と信じ、これがすべての人が共有している世界と疑わない人々が世の中にはいる。世界観が狭く、多面的で複雑な情報を処理できない。自分の感覚がすべてで、自分と違う価値観や知識を持つ人を受け入れられない。神真都Qはこうした人々に、いま目に見えている世界の意味と解釈を初めて与えたのだ。

これらの特徴はネトウヨと共通していると思います。
たとえば敵です。
日本をおとしめたり、他国の属国にしようとたくらむ個人・組織・国家があるという陰謀論的な主張がネトウヨには見られます。

GHQが主導した戦後教育によって日本人は自虐史観をすり込まれたいった考えです。
WGIP(War Guilt Information Program)はGHQの情報政策で、ウォー・ギルト工作などと訳されます。
石戸諭『ルポ百田尚樹現象』によると、右派論壇では「第二次大戦について、日本人に罪悪感を持たせるための洗脳工作」といった趣旨で使われることが多いそうです。

百田尚樹は、戦後教育を受けた世代の間で時限爆弾のようにじわじわと浸透していったという解釈を披露している。
洗脳された世代が自虐史観に囚われ、日本国憲法を賛美した。
彼らがメディアを牛耳り、反日報道をリードしていく。
この手の言説の源流は江藤淳にある。

WGIPについて、賀茂道子名古屋大学特任講師はこのように説明している。

80年代に「自虐史観」という言葉が広がってから、WGIPも広がるようになりました。ですが、占領期の多くの史料を見ると、そもそもWGIPという言葉はGHQの一文書にしか使われていないものです。


右派が根拠とする文書は、日本人に東条英機を賛美する動きがあることを理由に「新たな施策を行うべきだ」という勧告にすぎない。
さらに、勧告に沿った施策は大半が実行されなかった。

2016年、平成天皇がフィリピン出発時に発表した「おことば」に、「フィリピンでは、先の戦争において、フィリピン人、米国人、日本人の多くの命が失われました。中でもマニラの市街戦においては、膨大な数に及ぶ無辜のフィリピン市民が犠牲になりました」とある。

ところが、マニラ戦では民間人の犠牲者は10万人に達したことなどを多くの人は知りません。

GHQによる洗脳が成功していれば、そして百田史観が正しければ、戦後教育を受けた世代以降で、マニラで起きたこと、捕虜虐待が語り継がれているはずだ。


反日勢力が教育行政やメディアを支配しているなら、とっくに反日勢力が政権を取っていると思うのですが。
統一協会は自民党の政治家と深い関係にあるわけですから、統一協会が日本支配をたくらんでいるほうがあり得そうです。

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ネトウヨと反知性

2022年08月08日 | 日記

文化大革命やポル・ポト政権ではエリートや知識人、専門家を弾圧し殺害しました。
ネトウヨも知識人、学者、専門家を敵視し、素人、普通の人々の庶民感覚を重視します。
つまり、反知性です。

藤岡信勝「歴史の解釈権はむしろ歴史研究の消費者たる素人にある」
西尾幹二「私は現代史に専門家が存在することを認めていません」

お二人とも歴史の専門家ではありません。

裁判員制度も市民感覚ということで始まりました。
ところが裁判員裁判では厳罰の判決が出ることが多く、二審で一審よりも軽い判決が出されることがあります。
普通の人が専門家より正しい判断が下せるのでしょうか。

庶民の素朴な感覚は、戦争はイヤだし、原発は怖い。
しかし、ムチとアメでだまされるし、感情に流されることがあります。

セルゲイ・ロズニツァ『粛清裁判』は、1930年の産業党裁判の記録映像を基に製作したドキュメンタリーです。
何人もの科学者と経済学者が西側諸国と結託してクーデターを企てたとして告訴され、被告たちはすべてを認めて有罪判決を受けました。

セルゲイ・ロズニツァはこう語っています。

フィルムの保管所には裁判のアーカイヴ映像とは別に、この時代に毎晩行われていた民衆によるデモの映像も保管されていました。それら映像には裁判にかけられている人々に対し「銃殺にしろ」と書いた横断幕を掲げ夜の街頭を練り歩く人々の姿が映っていました。この狂気じみた民衆と法廷を傍聴しながら無実の人間に死刑判決が出ると拍手喝采する人たちこそ、1930年のソビエトを象徴する群衆なのです。

https://eiga.com/news/20201113/10/

アメリカには反エリート、反権威、反科学、反知性の伝統があり、科学に不信感を持つアメリカ人は多いそうです。
三井誠『ルポ 人は科学が苦手』は、地球温暖化否定派と進化論を否定する創造論者を取り上げています。

ギャラップ社の2017年の世論調査
「神が過去1万年のある時に人類を創造した」との考え(創造論)を支持する回答は38%。
「人類は数百万年にわたり進化してきたが、そこには神の導きがあった」とする回答の支持も38%。
「神の関与なしに人類は数百万年にわたり進化した」とする回答は19%と少数派。
教会に頻繁に行く人ほど科学への信頼が低下している。

2011年の公立高校の生物学教師へのアンケート調査
進化論をきちんと教える先生は約28%。
創造説を教える先生は約13%。
ミネソタ州の教師「私は自分の生物のクラスで進化論を教えない。低レベルの科学を教える時間などない」

残りの約60%は、親や地域住民からの批判を恐れて両方を教えるなど、煮え切らない立場だった。
「(進化論や創造論などのなかで)どれが正しいのかを子どもたちが自分自身で決めるべきだ」
「子どもたちは進化論を学ぶ必要があるが、それはただ、進化論が本当であるかのように生物学のカリキュラムに書かれているからだ」

反知性といっても、知性がない人だというわけではありません。
トランプ政権のミック・マルバニー行政管理予算局長は記者会見でこう言った。
「(地球温暖化の研究に)もうお金は使わない。税金の無駄だ」

2018年のギャラップ社の世論調査
地球温暖化は人間活動が原因なのか、それとも自然変動の結果なのかを聞いた質問で、「人間活動が原因」と答えた人は64%だった。
支持政党ごとに見ると、共和党支持者では35%、民主党支持者では89%。

2010~2015年、ギャラップ社は地球温暖化に対する考え方と学歴との関係を調べた。
「地球温暖化は自然の変動によるものだ」と回答した人。
高校卒業までの人の場合は民主党支持者では35%、共和党支持者では54%。
大学を卒業した人では、民主党支持者の13%、共和党支持者の66%。
ちなみに、2009年の調査によると、

三井誠さんはこう述べています。
勉強すればするほど正しい理解に結び付き、誤解は解消し、わかり合えると思いがちだが、実際は学歴が高い人ほど支持する政党の違いに応じて、考え方の違いが際立つようになる。

科学的知識が少ない場合は支持政党による違いはないが、知識が増えるほど支持政党に応じた考え方の違いが大きくなる。
エール大学教授ダン・カハン

人は自分の主義や考え方に一致する知識を吸収する傾向があるので、知識が増えると考え方が極端になる。


共和党支持者は地球温暖化の知識があっても、自分の考え方と違うので、逆の方向に理論武装して、「多くの科学者はそう言うけど、本当は違うんだ」というふうに自分の信念を強めている。
温暖化の知識が増えても共通の理解につながらず、逆に見方が偏っていく。

その人の考え方を支配する宗教的、政治的なバイアスがある。
政治や宗教などの個人の思いによって、情報が「大事な情報」と「嫌な情報」に分けられてしまう。

人は自分の思いを強めてくれる「大事な情報」をありがたがる。
「見たいものだけ見える」
「見たくないものは見えない」

これは陰謀論や歴史修正主義と共通していると思います。

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ネトウヨと反権威

2022年08月02日 | 日記

ポピュリズムの主張は、反権威、反知性、排外主義だと思います。
ネトウヨも同じです。

石戸諭さんは『ルポ百田尚樹現象』でこう述べます。

百田尚樹とは「ごく普通の感覚にアプローチする術を感覚的に知る人」であり、百田現象とは「ごく普通の人」の心情を熟知したベストセラー作家と、「反権威主義」的な右派言説が結び付き、「ごく普通の人」の間で人気を獲得したものだ。


百田尚樹さんはこういう発言をしています。

僕は反権威主義ですねぇ。一番の権威? 朝日新聞やね。だって一日に数百万部単位で発行されているんですよ。僕の部数や影響力なんてたかが知れている。そこに連なっている知識人とか文化人も含めた朝日的なものが最大の権威だと思う。


発行部数が多い新聞が権威なら、朝刊発行部数は世界一である読売新聞こそ権威です。
読売新聞:6,874,345
朝日新聞:4,345,612
http://www.kokusyo.jp/abc%E9%83%A8%E6%95%B0%E6%A4%9C%E8%A8%BC/16935/
なのに読売新聞を攻撃しないのはなぜか。
それは百田尚樹さんの考える権威とはリベラル=サヨクだからだと思います。

石戸諭さんは、新しい教科書をつくる会についてこう説明します。

つくる会現象とは何だったのか。それは百田現象とは何かを問うことから見えてくる。私の結論は自虐史観を旗印に、リベラル派・左派から「反権威」というポジションを奪い、「普通の人々」の力を信じ、彼らに訴えることで力を獲得し、リベラル系マスコミの「権威」を崩壊させたポピュリズム運動であるというものだ。


伊藤昌亮『ネット右派の歴史社会学』によると、サヨクとは左翼ではなく、リベラル市民主義のことだそうです。

60年代のカウンターカルチャーは反権威主義だが、反体制だった。
ところが現在は、ネット右派はリベラルが権威だとし、自分たちはマイノリティーであり、権威に立ち向かっていると考えている。

平和運動、基地問題、護憲、環境問題、反原発、移民・難民支援などの市民運動をする人たちを批判する。
どうして嫌いなのか。
朝日新聞に代表される権威に、エリート意識、特権意識、独善的正義感、上から目線の啓蒙主義、尊大な態度を見、大衆への軽蔑心を感じ取るから。
反体制的言辞をする人を反日と決めつけ、安倍政権に代表される自民党政権や右派に批判的な人を攻撃する。

山田晃(『虎ノ門ニュース』を制作するDHCテレビジョン社長)はこう言ってます。

左翼の考えは楽なんです。憲法9条を守っておけばいいとか、なんでも政権が悪いとか、もはや宗教みたいなもので、あまり考えなくていいんですよね。


なんでも朝日新聞が悪い、戦後教育が悪い、反日メディアが日本をおとしめていると非難、攻撃するのも単純さでは同じだと思います。

しかし、権威とは「他の者を服従させる威力」という意味です。
日本では天皇や皇室が一番の権威です。
大日本帝国憲法や教育勅語の復活、戦前回帰を狙う勢力は天皇という権威を錦の御旗にしています。

また、戦後ずっと自民党政権が続き、現在も自民党候補というだけで当選する人が大勢いるので、自民党も権威でしょう。
石原慎太郎、麻生太郎、安倍晋三、加瀬英明、竹田通泰といった右派政治家、右派文化人はエリートだし、しばしば上から目線的な発言をしますが、ネトウヨは彼らを攻撃しません。
ネトウヨは、マスコミは嘘ばかりと主張しても、産経新聞など右派メディアは別です。

永吉希久子「ネット右翼とは誰か」(『ネット右翼とは何か』)は、ネット右翼を特徴づける重要な要素として権威主義的態度をあげています。

権威に従属し、伝統を重んじる一方、社会の主流となる諸価値から外れているようにみえる人々を攻撃しようとする傾向である。権威主義的態度は、第二次世界大戦に向かう時代にファシズムの温床となったとみられていて、差別意識とも深く関わっていることが確認されている。


松谷満「ネット右翼活動家の「リアル」な支持基盤」も同じ指摘をしています。

右派権威主義(社会文化的反自由主義)という価値観も強く作用している。これは「権威」や「秩序」を重視し、そのためには個人の「自由」や「権利」を制限すべきだと見なすものである。

反権威といえば聞こえはいいですが、体制にすり寄り、従っているわけです。

フランシス・ベーコンの造語に「イドラ」があります。
事物の正しい認識を妨げる先入観や偏見のことで、ベーコンはイドラを4つあげます。
その一つが劇場イドラです。
有名な思想家や学者の説から生じた誤りで、権威や伝統を無批判に信じることから生じる偏見のことです。
親の言っていることや、権威のありそうな人が言っていることを信じ込んでしまうのがこれです。

政治批判をする人をどうして非難するのでしょうか。
白戸圭一『はじめてのニュース・リテラシー』にこうあります。

「言論の自由」と「報道の自由」とは「権力者を批判できる自由」のことをいう。


宮武外骨や陸羯南あちは自分たちが主宰する新聞が何度も発行停止されても、筆を折ることはありませんでした。

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