卒業写真

2013年02月05日 | 日記
今月は福祉サービス事業所でのヴォイトレでユーミンの名曲「卒業写真」をやっています。数日前に随分久しぶりにばったり会った旧友が、若い頃ユーミンの大ファンで、コンサートと言えば追っかけをやっていました。私はその頃あまりポピュラー系の音楽を知りませんでした(今もです)が、テレビから流れてくる歌の中で比較的共感できたのがユーミンとさだまさし。ユーミンの追っかけをしていた彼女の気持ちも何となくわかるような気がしたものです。
「卒業写真」は、今歌ってみるとちょっとレトロな気分を味わえる曲ですね。逆さスキップのリズム、長調なのに短三度の副3和音で始まる和声、ノスタルジックな歌詞。ちょっと胸がキュンとなります。メンバーの一人が「これって、男性が歌う歌ですかね?」と言われるので、「高校の同級生だった男性を卒業後に街の中で見かけて、全然変わってないなーと思いながら声をかけそびれてしまった、という歌じゃないの?」と応じると、「その女性はその男性が好きだったんですかね?」と来ました。「多分ね。好きな気持ちを胸に秘めたまま卒業してしまったんじゃないのかな」と言うと、何となく怪訝そうな面持ち。「昔は今みたいにすぐに告白したり付き合ったりしないで、恋心を自分ひとりの胸にしまっておくことも多かったのよ。そういう奥ゆかしい恋も素敵な恋だったんですよ」なんて講釈しながら、遠い昔をちょっと思い出しました。もうすぐバレンタインデーですが、この時期になると毎年回想することがあります。それは中学時代の淡い恋心。相手はクラスメイトでした。お付き合いをしたい、なんて考えは微塵も起きず、その人がそこにいるだけで十分だったのですが、バレンタインデーには彼の机の中にチョコレートを忍ばせました。もちろん無記名で。メッセージも何もなし。あなたに好意を抱いている女生徒がいますよ、ということを伝えられればそれでよかったのです。
社会人になって初めてのクラス会で彼と会った時、「私、昔あなたの机にチョコレートを入れたことがあるんだけど、ひょっとして気づいてた?」と尋ねてみたところ、「うん」と一言。満ち足りた気分になりました。彼とはそれ以来会っていませんが、元気で活躍していることは知っています。彼の方も私の消息は知っていると思います。こんな小さな思い出が、私の人生の宝物の一つです。こういう気持ち、今の若い人にわかるかなあ。

ハレルヤ再び

2013年02月03日 | 日記
今日は節分、そして明日は立春ですね。「冬来たりなば春遠からじ」という名言が浮かんできますが、寒さの厳しかったこの冬もようやく終わりに近づいてきたようです。とはいえ2月はまだまだ気候不安定。このところ毎日のように、インフルエンザのためレッスンをお休みしますとか予定を変更して下さいという連絡が入ってきます。皆様もどうぞご注意を!
先日、中3の姪が「「ハレルヤ」を教えて!」と言って我が家に泊まりに来ました。高校入試を目前にして塾通いに忙しいので、金曜日の塾帰りにうちに来て泊まり、翌朝レッスンしてそのまままた塾へ行くと言います。姪の学校では卒業式に3年生全員でヘンデルの「ハレルヤ」を歌うのですが、卒業式に先だってレコーディングがあるのだそうです(!)。それまでに自分で納得のいくように歌えるようになっておきたい、と。楽譜を見せてもらうと、原調の二長調の楽譜でした。私たちの頃は(私も同じ中学校の出身で、卒業式のハレルヤは昔からの伝統なのです)二長調はソプラノの音域が高過ぎるから、という理由で(だと思います)ハ長調に移調して歌っていました。しかし本当は、ハレルヤをハ長調にしたのでは宗教曲としては意味がなくなってしまいます(二長調(D-dur)は神(ラテン語で「デウス」)の頭文字Dを主音とする調なので)。ですから、二長調で歌うことは楽理的には正しいのですが、この曲はヤマ場にソプラノの高音域のロングトーンが続くので、身体をしっかり使わないと金切り声になってしまいます。私は中学生の時はアルトを歌っていたのでソプラノの苦労があまりわかっていませんでしたが、昨年、ハレルヤ三昧の一年間を過ごす中でソプラノの大変さが身にしみました。
姪には、鼻をかむようにして息を眉間に集め、その時の身体の緊張をキープして高音を出すこと、そして伸ばす時に声を押し出さないで後ろへ引き続けること(身体を外側に開き続けること)、「イ」の発音を口角をなるべく内側へ寄せて、下あごに力が入らないようにすることを教えましたが、1回のレッスンで何もかも身に付けるのは無理な話です。姪は「難しい~」と連発しながら帰っていきました(笑)。さて、レコーディングではどんな歌になることでしょう。いずれDVDを聴かせてもらうのを楽しみにしたいと思います。

出張レッスン

2013年02月01日 | 日記
昨日、県南に出張レッスンに行きました。この地域の合唱協議会に毎年ヴォイトレに呼んで頂いているご縁もあり、うちにレッスンに通って下さっている熱心な方が数名いらっしゃるのですが、皆さんお忙しい方たちだし、遠いし、時々でも私が行って差し上げられるといいなと前から思っていたのです。あちらでもそう思っていらしたようで、この度実現の運びとなりました。
午前中の用事を済ませ、JRで移動。午後1:30から1時間刻みで4人の方のレッスンをさせて頂きました。皆さん音大を出られ、演奏活動や指導者としての活動もなさっている方たちで、歌に対する真摯な姿勢と、年下のレスナーである私に学ぼうとされる謙虚さには脱帽の思いです。私も常日頃から、求めて来られるすべての方に自分の学んだものを精一杯提供させて頂きたいと思ってレッスンをしていますが、こういう方たちのレッスンはある意味ではとてもラクです。レッスンの経験が豊富なので(習うだけでなく、教えることも含め)、こちらが何を言いたいかを察知して下さるからです。
最初の方は会場提供者のNさん。毎年コンサートを開催していらっしゃいます。今年も6月になさるそうで、その時に歌われる曲から2曲をレッスンしました。イタリア語のオペラアリアはとてもよく歌えていらっしゃいました。もう1曲はドイツ語の歌でしたが、ドイツ語はメロディに歌詞を乗せるのが難しく、発音に気を取られると発声が崩れそうになります。でも、Nさんはドイツ歌曲がとても合っています。きっと素敵な歌になると思います。
次のUさんは最近のご縁です。長年歌から離れていたそうですが、最近また歌い始められた方です。若い頃は或る程度力任せに歌えばそれなりに歌えますが、長いブランクの後で歌を再開する時には若い頃の出し方では出せなくなっていることがあります(特に女性は)。ホルモンの関係で声帯の吸い付きが悪くなっているからです。更年期以降の女性は、声帯をくっつけるためにしっかり身体を使わなければなりません。そこで、身体の使い方を丁寧にレッスンしました。喉の力みが取れてラクに声が出るようになった様子です。
3番目のHさんは約1年ぶりのレッスンです。3月にコンサート出演を控え、何を歌おうかと迷っていらっしゃいました。「私は高音が出ないので、あまり高い音のない日本歌曲にしようと思います」とおっしゃいますが、Hさんの場合(誰でもそうですが)高音が出ないのは身体が十分に使えていないからなのです。そこで、仰向けになって両膝を立て、息を吐きながら背中の隙間をつぶして床にくっつくようにするエクササイズをして、その態勢のままで発声練習をすると3点ハ音までちゃんと出ました。立って壁に背中をくっつけて頂き、同じようにやってみたら、今度もちゃんとハイCが出ます。「高音域を恐れる必要はありませんよ」と言うと、ご本人もとても喜んで「先生に会いに来てよかった~」と言いながら帰って行かれました。
最後は、体調の関係でやはりこの1年ほどレッスンをお休みしていらしたJさんでした。しかし全くブランクを感じさせず、すぐに響きのよい明るい声が出るようになりました。よい発声が体にインプットされていれば、多少のブランクなどほとんど問題ないのだとわかり、嬉しくなりました。続けて4人のレッスンでさすがに少々疲れましたが、心は満ち足りて帰途に着きました。これから月1回のペースで通うことになりそうです。ここからまた輪が拡がっていくといいなと思っています。