のりぞうのほほんのんびりバンザイ

あわてない、あわてない。ひとやすみ、ひとやすみ。

2015年3月の読書

2015年05月12日 01時08分29秒 | 読書歴
今頃ですが、3月の読書について。
私にしては珍しく、割に新しい作者さんと出会った楽しい読書月でした。

20.タイム屋文庫/朝倉かすみ ☆☆

初恋のオトコノコ、吉成君の来店を待つ貸本屋のお店、「タイム屋文庫」。時間旅行を題材にした本のみを置き、そこでゆっくり時間を過ごす客は自分自身の過去や未来と出会えると言う。そんなお店を始めた考えなしで抜け作の三十女・柊子。彼女の初恋のつづきの話。
まるでおばあちゃんちを訪れたようなゆったりのんびりとした時間を過ごせる貸本屋。我が家の近くにもこんなお店があったらいいなぁ、と思わせてくれるお店でした。ただ、主人公の恋の話は色々とあっさり。こんなふうにすぐ傍に素敵な男性がいました、なんて展開は現実にはなかなかないんだよー、とトウのたったヒネクレモノのアラフォー女は思いました。

21.何者/朝井リョウ ☆☆☆*

就職活動の情報交換をきっかけに集まった、拓人、光太郎、瑞月、理香、隆良。学生団体のリーダー、海外ボランティア、手作りの名刺、などで懸命に自分を鼓舞し、就職活動に立ち向かう大学生たち。彼らは就職活動を無事に終え、「何者」になれるのか。生きているという実感が味わえる職業は何なのか。必死にもがく就職活動中の大学生の話。最初から最後まで痛くて痛くて痛くて痛くてやりきれなくなるお話でした。SNSが日常的なツールになっている今、ツイッターでフェイスブックで自分の日常を発信し、思いを吐露し、自意識と向き合い続けなくてはならない今の若者は大変だな、としみじみと思いました。人とつながりあうことが普通になりすぎていて、そのつながりにがんじがらめになっている彼らはとても窮屈そうで、もっと自由になっていいんだよ、と心から思いました。すぐ隣にいる人の楽しそうな日常が見えてしまうからこそ、増大していく不安と戦わなければいけない彼らは私が学生時代の頃よりももっともっと心の強さを求められるんだろうな。これからの若者はもっともっと大変な時代を生き抜かなきゃいけないんだろうな、と心重くなりながら読み終えました。


22.幸福な日々があります/朝倉かすみ ☆☆

森子46歳。祐一(モーちゃん)49歳。結婚生活10年を迎えた元日の朝、森子は静かに離婚を切り出す。平穏で幸福な結婚生活が続いていると思っていたモーちゃんは、どうしても離婚を納得できない。10年前と今を交互に描くことで、平穏に見えたこの10年間の至るところに別れの予兆があったこと、小さな違和感がやがて決定的な決裂につながることが描かれます。誰もが羨む幸せな結婚に満足しようとしたヒロイン。そして、妻が小さな我慢を重ねているなんて思いもよらない鈍感な夫。
10年で少しずつ少しずつすり減り疲弊した森子の気持ちはなんとなくわかりました。相手を思いやっているように見えて、自分のわがままを貫く身勝手な夫との結婚生活は一見、幸せそうに見えて森子の我慢によって成り立っていたことも理解できました。それでも私はモーちゃんがかわいそうでなりませんでした。森子の我慢によって成り立っていた結婚生活は森子が我慢できなくなったことで崩壊します。でも、どうせ我慢できなくなるのであれば。離婚を切り出さずにいられなくなるのであれば。モーちゃんにもわかるようなはっきりとした予兆、不穏を用意してあげればよかったのに、と思わずにはいられないのです。そもそも我慢なんてせずに、都度都度、自分の思いをぶちまけてくれればよかったのに。幸せだと信じていた結婚生活を唐突に取り上げられるほうがよっぽどダメージが大きいのに。と、モーちゃんの鈍感さに自分と似たところを感じていた私は、彼にものすごく偏った肩入れをしながら読んでしまいました。

23.半熟AD/碧野圭 ☆☆*

番組制作会社の元AD、田野倉敦。バラエティ番組のやらせが原因で会社を首になった二十七歳。仕事を探すも見つからない彼は、同居人の先輩に強引に引き込まれ、一般人相手の映像制作会社を手伝うことになります。不本意な仕事ばかり舞い込む彼のもとに、ある日、天才的な歌声を持つ少女が現れて・・・。深いこと考えずに楽しく爽やかに読み終えられるお話でした。ドラマ化に向いてそうな気がするのになー。迷惑な先輩にはぜひぜひ田辺誠一さんを推したいです。でもって、ひきこもりの美少女歌手には、高畑充希さん。ぴったりだと思うんだけど。ぜひぜひドラマ化お願いします。

24.格闘する者に○/三浦しをん

マイペースに過ごす女子大生可南子にしのびよる苛酷な就職戦線。漫画大好き。だから、漫画雑誌の編集者になれたらいいなあ。でいざ、活動を始めてみると思いもよらぬ世間の荒波が次々と襲いかかってくる。
と、いうわけで、これまたシューカツ小説です。でも、「何者」とはまったくテイストが異なるお話でした。登場人物たちがみんな呑気者で、ぎすぎすしておらず、この人たちとなら友達になれるなー、なれたらいいなー、友達になってほしいなー、と思いながら読み進めました。シューカツにも人となりって出るんだなー、と思いました。おそらくこのお話のヒロインもヒロインの友人たちも就職を人生の大事なステップだと認識してはいるけれど、それに人生すべてを左右されるほどの重みを見出してないんだろうなぁ、と思いました。その軽やかさがとても魅力的でした。やっぱり肩に力が入っていないってとても大事な気がします。


25.森崎書店の日々/八木沢里志   ☆☆*
26.続・森崎書店の日々/八木沢里志 ☆☆*

交際を始めて1年になる恋人から、突然、「他の女性と結婚することになった」と告げられた貴子は、深く傷つき、会社を辞めた。恋人と仕事をいっぺんに失った貴子は、叔父のサトルの経営する「森崎書店」という古書店を手伝うことになる。本に囲まれ、人に囲まれ、貴子はやがて自分を取り戻していく。
後味は悪くないし、古書店が舞台の作品というのも大好きなのです。でも、どうにもこういう作品、読んだことある気がする!的なデジャブが強く、今ひとつ作品に入り込めませんでした。どうやら映画化されている模様。雰囲気はとても好きなので映画作品も見てみたいな、と思いました。
続編のほうも、やっぱり「あれ?こういう話、読んだことある気がする・・・・」的なデジャブにやっぱり襲われました。嫌いじゃないんだけどなー。むしろ、好きなんだけどなー。


27.夜を守る/石田衣良

上野・アメ横。冴えない青春を送る四人が、街を守るために立ち上がった。
ぶらぶらしているフリーターのアポロ、実家の古着屋を手伝っているサモハン、役所勤めのヤクショ、頭がちょっと弱く施設暮らしの「天才」。4人は夜回りを行い、遭遇した事件を地道に解決に導いていく。

さくさく読めて、読み終えた後に心があったかくなる話でした。おもしろかったし、元気になりました。この作品こそ、ぜひぜひドラマ化してほしいなー。IWGPはもはや続編のドラマ化はキャストがまったく集まらないと思われるので、ぜひぜひこちらの作品のドラマ化ご検討をお願いします☆

28.ハルカ・エイティ/姫野カオルコ

大正に生まれ、見合い結婚で大阪に嫁ぎ、戦火をくぐり抜け、戦後の自由な時代の波に乗り、たくましく生きていくハルカ。人生の荒波にもまれつつも、平凡な少女は決して後ろ向きになることなく、戦後にその魅力を開花させていく。
戦争を描いてはいるものの、軽やかな作品でした。それはきっとハルカの魅力が大きく影響しているんだろうな。と、思っていたら、ハルカのモデルとなって作者の伯母さんのリクエストだったようです。戦争中のことを描くからといって、何から何まで辛気臭く描かないでほしい。あの頃はあの頃なりに楽しいことがあった、というスタンスは向田作品のヒロインたちと重なるな、と思いました。本文がとても軽やかだっただけに、あとがきで「戦争を知らない世代が戦争を描くことの覚悟と責任感」について書かれている文章は、とても力強く、作者の覚悟を実感しました。