死と神秘と夢のボーダーランド -死ぬとき、脳は感じるのか?

2013-03-29 15:28:38 | 日記

ケビィン・ネルソン著   インターシフト刊

本書は臨死体験・空中浮揚・体外離脱・霊的体験といった、当代人気?のジャンルに脳神経学者がチャレンジした本。勿論、こうした体験の多くは地域、人種、わけても文化や宗教に関係しているのは当然のことなのだが。
多くの読者はタイトルの「……ボーダーランド」を「……ボーダーライン」と早とちりして読んだ人も多いのではないか。実は本書は、純粋に医学的(著者は、神経内科医)にアプローチしたもので、かなり野心的な著著である。
「ボーダーランド」がキーワードである。著書では「中間境」と訳されている。意識と無意識、言い換えれば覚睡と昏睡の狭間という意味だ。つまり、脳内の特定野(分野ではない)がそれに関わっていのではないか? というのがメインテーマである。例証はいやというほど載っている。私としては、このアプローチそのものに興味を持って読んだのだが。
こうした経験をした人達は納得できないかもしれないが、なぜ納得できないかは本書の中にある。人間の脳がなぜこうした進化をしたのか、どんな必然性があったのか、不思議だが……。
こうしたことに興味がある人には、読み応えがあるに違いない。
私としては。こんなややこしい目には会いたくない,面倒だ。あっさりと素粒子か分子かわからないが、そこに至って霧散霧消に散りたい。


サイエンスジョーク -笑えたあなたは理系脳

2013-03-26 15:15:00 | 日記

小谷太郎著   亜紀書房刊

本書の内容を端的に推察できる、ジョークをひとつ挙げる。書評家の池澤夏樹氏も取り上げているいるけれど、少しバージョンを変えて。
エンジニアと物理学者と数学者がスコットランドを旅していた。3人は車窓から牧場に黒い羊がいるのを見つけた。そこで、①「スコットランドには黒い羊が少なくても一匹いる!」、②「スコットランドの羊は黒い!」、③「スコットランドには少なくとも片面が黒い羊が一匹いる!」と言ったそうだが、さて誰がどれを言っただろうか?(解答は文末)。本書はこのような科学者や科学の理論をネタにしたジョークを集めたもので、なかなか笑える。
これを酒席で披露すれば、アナタを見る目が変わること請け合い。もちろん、ジョークの後には解説があるので、種明かしには困らない。ただし、老婆心ながら付け加えると、解説は出来れば自家薬籠中のものとすること。そうしないと、アナタがジョークのネタになってしまう怖れがあります。まっ、笑いを取るにもそれなりの努力が必要ということですが……。
(解答 ①物理学者 ②エンジニア ③数学者)


 


出雲と大和 -古代国家の原像をたずねて

2013-03-25 15:07:46 | 日記

村井康彦著   岩波新書

著者の視点は、私なりには納得できるものだった。とにかく『古事記』を読むと矢鱈と出雲の神(国ッ神)、大国主神が登場するのが不思議だった。というか大和の先住民は出雲系の人だったのではないかとさえ思っていた。その意味では大和朝廷と出雲との関係がスッキリ(多分?)分かったのは収穫だった。
ただ、ここに邪馬台国が登場するのは予想外だった。著者の長年の研究の結果なのだろうが、分かったようでわからない部分が多かった(多分、私の読み込み方が浅いのだろうが)。
ここから、本題を外れる。邪馬台国についてである。凡そ、多くの本は邪馬台国は何処にあったのかに集中している。私にとっては、邪馬台国はどんな人達が創った国なのか? そして、卑弥呼一族は絶滅したのか? 何故、卑弥呼が祖先だと名乗る一族がいないのか?卑弥呼一族が抹消されたとなれば、古代にジェノサイドがあった? まさか。といったことなのだが、そんな本読んだことがない。つまり、卑弥呼のルーツが分からない。ともかく『魏志倭人伝』に書かれているから実在した、という前提で始まっていて、その前提に関しては詮索されていない。
古代の氏族にそんな伝承を持った一族はいないのかな?
そこで、本題に戻る。著者は「邪馬台国は出雲勢力の立てたクニ」だと、結論している。これまでの流れからはそうなる。それはそれでいいのだが、それでも、私の疑問は解消されないところがもどかしい。


ジェシカ16歳 夢が私に勇気をくれた

2013-03-22 08:43:40 | 日記

ジェシカ・ワトソン著   書肆侃侃房刊

本書はタイトル通りオーストラリアの少女が16歳の誕生日に船舶免許を取り、17歳の誕生日前に210日間、ピンクのヨットで4万3千キロを単独・無寄港・無支援世界一周を成し遂げた、決意した日から準備・資金獲得、そして無事帰港するまでの手記である。
文字通り、波瀾万丈(洒落ではない)に富んでいて、とくにヨット好きな人ならば首肯して読むこと請け合いである。勿論、16歳の拙い文章であるが、彼女は航海中に書いたブログを元に執筆していてゴーストライターは使っていない。
誰にでも出来ることではない。計画を遂行する強い意志、準備と訓練をする努力、そして、支援者に好感される人柄・性格が、とても大事なことであろう。それを支えたのは先輩からの「十分に考えた後に決断するなら、それが間違っていても、少なくても後悔はない」というアドバイスだったそうだ。
しかし、だ。「誰にでも出来ることではない」ということは、言い換えると「誰も、が、出来る」ということだ。この発想の転換が出来るかどうかが、スタートポイントなのかも知れない。
最後に蛇足だが、「日本の読者の方へ」の末尾「Good luck and fair winds」を「幸運を、そして、良い航海を!」と訳されているが(間違ってはいないが)、私の記憶では帆船時代から船乗り達は「良い風に恵まれますように」というのが、出航する仲間への挨拶の慣用句だったと思うのだが、違っていただろうか?


世界の特殊部隊作戦史1970ー2011

2013-03-18 15:22:53 | 日記

ナイジェル・カウソーン著   原書房刊

ここ暫くややこしい本を読んだ反動だろうか、つい本書を手にしてしまつた。
内容はタイトル通りで、私が知っている事件だけでも、ミュンヘン・オリンピック事件・エンテベ空港奇襲作戦・在英イラン大使館占拠事件・フォークランド紛争・ソマリア(つい最近読んだばかりだ)・「イラクの自由」作戦・ジェシカ・リンチの救出・サダム・フセインの捕縛・タリバン=アルカイダの幹部狩り・ソマリア海賊からの救出・ハイチ地震・オサマ・ビンラディンの殺害。全部で31項目もある。
わずか40年でこの数である。表に出ないこの手の話は何倍にもなるのだろう。どちらの側にもそれぞれ大義名分があるのだろうけれど、人質なった方は堪らない。しかし、救出に向かった人達の勇気も素晴らしいが、その犠牲が惜しまれる。

 


「科学にすがるな!」 ー宇宙と死をめぐる特別授業ー

2013-03-16 15:23:41 | 日記

佐藤文隆・くさ場よしみ 共著   岩波書店刊

ごめんなさい。くさ場さんのくさは草の古字なのですが、私のパソコンでは出てこないので。

タイトルというか、設問が良いでしょう。メインタイトルについては、私も納得していた。およそ、科学とか数学の定説と言うものが何度も変わって来たのは経験済みだから…。しかし、サブタイトルの「宇宙」と「死」という組み合わせには、正直に言って違和感を憶えた。その後の展開が読めなかったからだ。
さて、いきなり結論だが、まず、死とは「科学的に原子や分子でいえば、生とは有機的な集合体ができることで、死とはそれがふたたびバラバラなっていくだけのこと(22頁)」で、私には充分納得のいくことだった(敢えて言えば、「科学的」という言葉を外してもいい)。しかし、「人間の生とは、原子の組み立てや配置という、ある限られた時間のシステムです。顕微鏡レベルで見た生命とは、Aのふるまいをしていた細胞がBのふるまいに変わっただけといえる。細胞が腐る過程だって厳密な手順で腐る。生まれるのも死ぬのも、細胞はどちらもちゃんとした手順で変化するが、それを区別しているのは人間である(102頁)」。ここで、気付くべきだったと反省している。
「死ねば跡形も失くなる」。勿論、思考する脳味噌だといえどもそれは避けられない。しかし、それが分かってどうするんだ? と問われるとは思ってもいなかった。言ってみれば、「悟った」と中途半端に得心していたのですね。まったく浅薄だとしか言いようがない。ソレが分かったオマエは、これからどうするんだ? どう生きるんだ? バラバラになるに任せるのか? と問われたわけです。
「科学」と「人の一生を考える」とは、どうやら次元の違う話らしい。しかし、だからといって、宗教が大事という時点には戻りたくはない。著者の佐藤氏が言うように「宗教は、ご本尊が立派だという証拠固めをし続ける(136頁)」だけで、私には他人事に過ぎないからだ。
それにしても、くさ場さんは凄い。よくここまで、佐藤氏の話に喰い付いていったと感心した。


ハダカの北朝鮮

2013-03-15 15:12:03 | 日記

呉小元 著   新潮新書

たまたま書店の店頭で見かけて買った本。私としてはめずらしく衝動買い。
これまで断片的にあった北朝鮮の社会事情が分かったという意味では、一読に値する。おそらしく階級社会であることはある程度承知していたが、これが40~50段階にも分かれ、それが国民生活全般に徹底しているのには驚いた。
全体的な印象だが、北朝鮮の一般国民が貧しい食糧事情から解放されるのは難しいのではないか。なにしろ、国土も人民も疲弊し過ぎている。そして、情報遮断が酷すぎる。
物足りないのは、北朝鮮の首脳部が北朝鮮をどのような国に主導していきたいのか? なぜあのような先進国の顰蹙を買うような行為に走るのか、その真意は? 国土の再生の道程をどう考えているのか? その本音がが読めないことである。著者の略歴から考えて、無い物強請りなのかも知れないが。
ただ、章の合間にある「北朝鮮Q・A」は蛇足だ。「合コンはありますか」なんて愚問だ。それがあるくらいならば……聞くまでもない。


謎の独立国家ソマリランド -そして海賊国家プントランドと戦国南部ソマリア-

2013-03-12 15:30:26 | 日記

高野秀行著   本の雑誌社刊

無茶苦茶面白い本。但し、内容はなんともやり切れない話なのだが。
本書のルポの舞台は、アフリカ東北部(アフリカの角)のソマリア共和国。しかし、ソマリアと言えば海賊国家であり、政府は無きに等しい国、というか海賊稼業が国家収入の国。というのが一般通念ではないだろうか? 私もそう思っていた。いや、それ以上は知らなかった。
ところが、サブタイトルで分かるようにソマリア共和国は三つに分断されていて(実際はその他にも独立国家と称する国が幾つかあるらしい)、その中のひとつソマリランドは民主主義の国だそうだ。国民投票で大統領は選出されるし、自国通貨(微妙だが)が流通し、ここ十数年も内戦がない。しかし、国連は国家として承認していないし、彼らもそれを望んではいない。これも分からない話なのだが…。あとの二つはサブタイトル通りの国。
こうなった直接の原因は、氏族同士の対立らしい。著者はそれを日本の源平時代を借りて解説しているが、当を得ていると思う。ということは『平家物語』を読むのと同じくらいややこしいということなのだが…。まっ、言ってみれば源平時代群雄割拠している武将達にどちらかと問えば、源氏だとか平氏とは言うものの、同時に地元では同族同士が骨肉相食んでいた状況と考えると分かり易い。犠牲になる庶民には堪ったものではないが、それが現状らしい。
話は飛ぶが、早稲田大学探検部って面白い人達を輩出しているな、と思った。ともかく逸脱振りが半端じゃない。エールを贈ろうかな?


空耳の科学 -だまされる耳、聞き分ける脳-

2013-03-10 15:00:45 | 日記

柏野牧夫著   (株)ヤマハミュージックメディア刊

「空耳(いわゆる幻聴のことですね)」というのは、時に都合のいいこともあるし、場合によっては赤っ恥をかくというのが私の経験則だが、そう単純なことではないらしい。
本書はその空耳に関する科学的アプローチの本である。楽器演奏家やオーディオマニアには、ちょっとショッキングかもしれないし、逆に「そうだ、そうなんだよ!」と納得する人も多いに違いない(どちらも、過剰反応はしない方がいいが)。
人間の「耳の構造」は思いのほか複雑で、難聴を経験した人には頷ける話でもある。しかも、耳から入った音を理解する脳にも問題がある。脳は「自分の経験則に基づいて、勝手に音をイメージしてしまう」こともあるらしい。一体、どちらに信頼を置けばいいのか分からなくなるのだが、著者の結論は「空耳に任せておけば、たいがいうまくいく」ということらしい。
本書は高校生を対象にした講義なので分かりやすい、と言いたいところだが、この高校生半端ではないので、うっかりすると劣等感に見舞われるかもしれないので、御用心。
私としては、純音聴力検査のグラフの見方がわかったことが収穫だった。ついこの間、検査を受けたのだがその意味がさっぱり分からなかったので。


おどろきの中国 (続)

2013-03-07 15:13:53 | 日記


取り敢えず、読了した。読後感としては(著者達の主旨と違うかもしれないが、それにもう一度読み返したら、また違うかも知れないが…)、結論として「そもそも国家なのか?」というオビの設題に関しては「国家ではない」としたい。
詳細は省くが(書くとしたならば、学生時代のレポート並になりそうで)、中国は共産党と政府という二重構造であるが、政府は共産党の顔色を伺っているし、共産党は内部の出世争いしかしていない。つまり、国民は無視されている。宗教色の強いイスラム教国でさえ、政府を創るとなればいくつかの政党が出現し、政策論争があり、選挙がある。中国に政党はないし(あるのは共産党内部の派閥くらい)、政府は共産党の思惑次第でコントロールされている。政治的不祥事は共産党が断罪し、政府ではない。当然かも知れないが、政府の人事権は共産党にあるからなのだろう。
端的に言えば、中国政府・国民は自分達を「世界一(中華思想)」に浸っているが、それは周回遅れの「世界一」なのだ、乱暴に言えば「井の中の蛙」なのである。政府の報道官の言質は正にそれで、先進諸国の常識からはとんでもなく逸脱している。まるで、共産党内部での内輪話そのままを発言しているとしか思えない。
さて、日本はどう対応すればいいのかだが、相手にするのは政府ではなく(いわゆる政治的な外交ではなく)、共産党そのものではないのだろうか? 先進諸国相手の外交テクニックで通じる相手ではなく、全く別の次元のアプローチ、これを考えるより仕方ないのではないか。
と、まあ、こんな感想を持ちました。いずれ、読み返したら、また後で……。