無地のネクタイ

2013-03-01 14:26:30 | 日記

丸谷才一著   岩波書店刊

丸谷才一っていい人だったなぁ。未だ亡くなられたことが信じられない。
彼の書くものが好きだった(但し、彼の著作をすべて納得し、理解したというには当方の知識の器が余りに貧弱すぎるので、断言するのは憚れるのだが)。
なにしろ、彼の評論(もしくはエッセイ)には、外連(けれん)がない。もちろん、世代によるのだろうが拠って立つ論拠は極めて常識的であり、その結論も真っ当である。そこが堪らなく好きだった。最近の評論がもって回った我田引水的な主張に終わるのとは大違いである。
こういう人たちって、少なくなって行くのだろうな。
これは先人達の多くが味わったことなのだろうが、淋しいな。一頁々、惜しみながら読んだ。
腰巻の「おしまひに一つ言ひ添えて置きますが」が、今更に心に沁みる。