特集 日本人の名字と家紋の謎

2013-10-31 15:58:07 | 日記

一個人  12月号 KKベストセラーズ刊

日本人の名前は読み難いと外国人は言うけれど、同じ日本人だって読めない名字が多い。この特集は、名字・苗字・姓の特集である。誰でも、自分の名字には関心がある筈だが、そのルーツ・由来となると曖昧な人も多いはず。
例えば、「日本の名字ランキング300」では、私の記憶では鈴木姓が一番多かったはずだが、最近の調査では佐藤姓だそうである。では、自分の姓は何位? 気になりますね。まして、その姓の由来・ルーツとなるともっと気になる。親や親類から聞いたのとは全く違っていたならば、確かめたくなる。
一方で、自分の周りでは当たり前の名字なのに、全国的には300位にも入らない。ちょっと、プライドが傷付いたか、逆に自慢したくなったか。なぜ? という人は「都道府県別ランキング」が参考になる。
まだ、ある。それは家紋。これが只者ではない。これが名字の由来やルーツを明らかにしてくれるのだ。その他に、読めない名字、これが名字? というコーナーもある。そして、クイズなどで出題されるめずらしい名字が、現在のところ見当たらない、なんて事実も書いてある。
面白いですよ。家族で読めるし、もしかすると親戚を巻き込んで侃々諤々ということになるかも知れない。ぜひ、一読を!


栄花物語  山本周五郎長編小説全集 第六巻

2013-10-29 14:43:20 | 日記

新潮社刊

何度か読んだ本だが、こうして全集の一冊として読むと感想が違ってくる。今回は思わず『樅の木は残った』と読み比べしてしまった。私なりの感想だが、小説の構図としてはさほど変わらないのだが、大きな違いがふたつあるような気がする。
ひとつは、主人公原田甲斐と田沼意次の差異である。前者は、自分の意思に協力する周りの者達への心遣いがあった。「済まない」と思い、「怨んでくれるな」「分かってくれるな」という詫び、そして、生き残るであろう者達への配慮があった。一方、後者にはそうした心遣いは見られない。
ふたつ目は、本書の場合、「共感者の勝手な思い込み」が、各々の行動の主体になっている。意次はそういうものに惑わされず、冷淡のようにさえ思える。幕府の為政者と、大藩とはいえ一藩の家老の違いだろうか?
ふたつの立場の違いを書き分けた、という意味では納得できるけれど、振り廻される人間にもう少しシニカルであったならばと思う。これでは、彼等は余りにも独りよがりで滑稽だ。
まっ、勝手な思い込みだけれど……。


孔 子

2013-10-25 15:33:07 | 日記

井上 靖著   新潮社刊

先日、普段は見ていない書棚の奥を引っ掻き回していて見付けたのが本書。取り出してみると、箱入りで帯封もきれいなまま。凡そ、買った本は読みきる筈なのに開いた形跡もない。奥付をみると、平成元年とある。きっと、読むべき本だと思い、最初の数頁で閉じたらしい。二十数年前の本だ。
というわけで、心を入れ替えて熟読しました。熟読して分かったことは、当時の私には読めなかった、というかかったるかったのだろう。本読みだと思っていた私には、ちょっとした事件だった。
読後感から言えば、今は井上靖が何故本書を書いたのだろか? 当時八十歳を超えていた筈だが…。朧げながら分かるような気もするのだが、確信には至っていない。あと十年してから再読しなければ、ならないのかな?
こういうことも、あるのですねぇ。


天才・菊池 寛  -逸話でつづる作家の素顔-

2013-10-24 15:05:00 | 日記

文藝春秋編   文春学藝ライブラリー

菊池 寛に「天才」という枕詞が付いたタイトルの本を、私は寡聞にして知らない(評伝の類の文中に天才という言葉が使われているのは何度か見たことがあるけれど…)。私の中では小説家として『父帰る』『藤十郎の恋』あたりが印象に残っているが、やはり文藝春秋社の創立者、そして私達の世代では代表的な作家(いちいち名を挙げるのは煩雑なのだけれど)達の支援者というイメージが強い。
本書の秀逸なところは、タイトルにもあるように全編関係者の逸話で構成されていることだろう(本人の述懐も含めて)。それだけに菊池 寛の人物像が具体的に浮かんでくる。
とは、言っても……。本書を読んで時代背景まで含めて、読んで納得出来る人は多くはないだろうなぁ。


英国一家、日本を食べる

2013-10-23 15:00:36 | 日記

マイケル・ブース著   亜紀書房刊

外国人の家族連れ(妻と6歳と4歳の男の子)の日本食探訪記というのはめずらしい(しかも、著者はプロのフードジャーナリストである)。これが、本書全体を和やかなものにしている。とくに、子供達の素直な反応がいい。
では本文はと言うと、意外に平凡だった。超有名店や料理人を取材するのは取材目的だから仕方がないにしても、もう少し極々一般的な庶民の日本食を食べて欲しかった。かなり、紋切り形の食材が多すぎた(多分、実際には食べていた筈だと思うが)。
しかし、重要な指摘もある。それは、いわゆる「日本食」を食べている世代が限られていることである。文末で「そうでもない」と言っているが、これは社交辞令としか思えない。今の世代は欧米の人達を笑えない状態(肥満、短命、内臓疾患)になりかねない状態にある、ということである。平凡な結論であるが、著者自身がかなりメタボだそうだから、この結論には説得力がある。
どこかで、食品メーカーや料理店は自制しないと、自らの首を絞めかねない。
とい意味では、一読に値する。


海賊女王

2013-10-18 15:28:54 | 日記

皆川博子著   光文社刊

著者の作品を読むのは、何年ぶりだろうか。若い頃はこの人の作品が好きで、片っ端から読んでいたのだが。縁遠くなったのは仕事のせいである。と言う訳で、久しぶりで手に取ったのが本書。いや、面白かった! 血湧肉躍るという年ではないけれど、めずらしく一気読みしてしまった(まず、最近ではないことなのだが)。
舞台は16世紀のイングランドとアイルランド、主人公はアイルランドの海賊女王グラニュエル・オマリーと、イングランドのエリザベスⅠ世。多くの方が察しが付くように、つい最近まで抗争を続けていたふたつの国の話である。アイルランドの海賊女王は正に海賊であるが、エリザベスⅠ世も海賊稼業を国家事業としていたイングランドの大スポンサーだったのだから、同じ穴の狢同士と言っていい(しかも、ふたりは同い年)。ココから先は書かない。間違いなく、一気読みに没入する。保証します。
唯、秀逸なのは二人の女性の描写である。特に老齢(当時としては)に至った二人の描写が凄い。著者の年齢がさせる業かもしれない。その容赦ない筆致に驚かされる。それが分かる私も歳か!


ヘンな日本美術史

2013-10-15 15:25:23 | 日記

山口 晃著   詳伝社刊

抜群に面白い。なにしろ、美術しかも絵には自他共に苦手と認める私が、美術館に行ってじっくり日本画を観に行こうと決心したのである。そして、著者の言う日本画の「ヘンな」所を確認するつもりである。鳥獣戯画、洛中洛外図、最近本人確認で話題になった伝源頼朝像、天橋立図、円山応挙、伊藤若冲(私は好きな画家)、雪舟。どれも一度ならず観た絵や画家である。いや、他の人達も同じだと思う。そう、教科書で観たのだ。
著者は現役の油絵画家で、自身の油絵に大和絵や浮世絵の手法を取り入れた作品で知られているそうだ(私は拝見したことはないが)。
で、日本画のどこがヘンなのか? 書こうとすれば書けない事はないのだが、著者の意図通りに書く自信はない。ぜひ、読んで欲しい。難しい専門用語は使われていない。というか、拍子抜けするくらい読み易い。そして、素人でも充分納得できる。
なにしろ、絵音痴の私を美術館に行こうと決心させたくらいに説得力がある。こういう観方があるのならば日本画も取っ付き悪いものではない。もっと書きたいが、蛇足を重ねること間違いないので、ここまで。


考える人 2013年秋号

2013-10-13 16:03:15 | 日記

新潮社刊

今回の特集は「人を動かすスピーチ」である。茂木健一郎、リチャード・S・ワーマン、サイモン・シネック、ロナルド・レーガン、ウィンストン・チャーチル、三島由紀夫、盛田昭夫、ヒットラー、マーチン・ルーサー、マンデラ、丸谷才一、泉鏡花、菊池寛、川端康成、小林秀雄その他多くの人が取り上挙げられている。そう、あのケネディも。通読して思ったことは、スピーカーには知性と聴衆の心を掴む直感力が絶対条件だということだった(当たり前だけれど)。そして、饒舌は最悪の欠陥であって「言葉を尽くした、丁寧なスピーチ」などという評価は、「何を言っているのか分からない」と同義語だということ。
この中で最近の日本の首相は安倍晋三、小泉純一郎、野田佳彦等が取り挙げられているが、中で野田のスピーチを褒めているのが印象的だった(注釈付きだが、私も同感)。
同時に、アジテーションと「人を動かすスピーチ」は全く別物だということ。聴衆に受ければいいならばコメディアンに任せておくことだ。少なくても、害はない。ヒットラーを例に挙げるまでもない。しかし、それを真似るアホが最近多くなっている。誰とは言わない。インターネットに投稿する者達も含めて。


山田風太郎新発見作品集

2013-10-11 15:20:44 | 日記

山田風太郎著  有本倶子編   出版藝術社刊

本書には作家デビュー前後の作品が収録されている。後年、我々が愛読した山田風太郎の匂いがするのは私が読んだ限りでは『雪女』(「宝石」の懸賞募集では落選したそうだ。江戸川乱歩は高く評価したそうだが。ちなみに入賞作品は『達磨峠の事件』)だった。
しかし、これらの作品を読むととても初々しい感じがする。時代を反映し、その最中に生きた作家の感性がそのまま素直に出ている。何時からだろう? 専門家ではないので分からないが、あの奇想天外な忍法帖や(後で、彼が医学部出身だったことを知って納得したことを覚えている)、明治初期を題材にした小説の面白かったこと。
「若書き」って、どんな作家にもあるんだな。当たり前だけれど。