マーガレット・サッチャー -政治を変えた「鉄の女」-

2020-01-13 09:29:50 | 日記

冨田浩司著  新潮選書

久し振りで読み応えのある本だった。著者は現役の外交官である。しかもサッチャーが首相であるある時、在英日本大使館公使であり、政治問題担当だった人である。サッチャーの政治をリアルタイムで観て来た人でもある。
本書はサッチャーの首相時代の政治家としての功罪を論評している。彼女のプライベートな部分には触れていない(それは期待しないことだ)。なにしろ、サッチャーは私と同時代の人である。書かれていることは承知しているし、フォークランド問題の時は“流石、女王の国の女性首相”と拍手たくらいだったから……。
オビには「サッチャーは人間としての器においてはチャーチルには遠く及ばない。しかし……彼女が成し遂げたことの高みは……“良きにつけ、悪しきにつけ”という注釈付きであったとしても……チャーチルを確実に凌駕する」という個所が引用されているが、私は……
“愛されることを望まなかった”サッチャーの政治家としての資質を評価したインガムの言葉を引用した、著者の評価を支持したい(サッチャーは、桜を観る会などしなかった!)。というのも、著者の最後に「今日の社会においてーー指導者は時に“愛されない”覚悟を持って政治をしなければならない」とした結語が大きな意味をもってくるからだ。
いやぁー、一気に読了した、しかも二回も……。お勧めしたい!!

追記 今日のイギリスの政治状況、いわゆるEUからのブレグジット問題は、実は長い長い歴史のある英国の問題であったことを初めて知った。
なお、本書は山本七平賞を受賞した。