科学者はなぜ神を信じるのか  -コペルニクスからホーキングまで-

2018-11-24 09:17:28 | 日記

三田一郎著  BLUE BACkS 講談社刊

科学者の気持ちは分かる。なにしろ、“無”の状態からビッグバン(聖書によれば「光あれ」)が起こり、宇宙が誕生したと言うのだから…。本当だろうか? 全ての原子は宇宙誕生後であるから、“光の元”がある訳がないのに……(この件については本文を読んでしい)。私はリチャード・ドーキンスの「神は妄想である」説を断固支持しているので首肯できない。
著者は素粒子物理学者で「B中間子系におけるCP不変性の破れ」の研究の第一人者である。と同時に、カトリック名古屋司教区終身助祭でもあるのだ。従って、ここで著者が言う神はキリスト教の神で、イスラム教や神道の神ではない。
本書は副題にあるとおり、歴代の科学者が宇宙問題とどう取り組んできたかを「神」との関連で分かり易く解説してあるので、じっくり読んで欲しい。
さて、私の読後感。著者の結論は、「無境界宇宙を創った科学法則」を創ったのは神である、そうだ。
そこで私の疑問というか質問は、「では、その科学法則を創った神は何処に居る? である。神は“天”とかに居るのだろうか? “天”と宇宙はどのような存在関係にある?」「宇宙は他にも在って、“天に居る神”がコントロールしているのだろうか?」

宇宙を創った神(及びその存在場所)と、宇宙との相対関係を明らかにしてくれないと、著者の結論は受け入れられない。


世界史を変えた新素材

2018-11-18 08:42:38 | 日記

佐藤健太郎著   新潮選書

新鮮な視点である。
それは、あなたが同様の質問で、「新素材(=材料)12挙げてみよ」と言われてみたら分かる。
まず「金」「鉄」「紙(セルロース)」、「アルミ二ウム」「プラスチック」「シリコン」。ここまで挙げられれば大した者。いや、「ゴム(ポイソプレイン)」も忘れてはいけない。今日のモータリゼーションはこれをなくしては考えられないからネ。
しかし、「陶磁器」「磁石」「コラーゲン」「炭酸カルシウム」「絹(フィブロイン)」となるとどうだろうか?
間違えてはいけない。あくまで「世界史を変えた」「新素材(=材料)」であって、「技術」ではない!
著者は賢明である。もし、素材を使った「技術」という視点に及べば……そう、おぞましい兵器・戦争にまで話が行ってしまう! ひさしぶりで、新しい視点からの科学史を読んだ。


いずれの日にか国に帰らん

2018-11-15 09:03:40 | 日記

安野光雅著  山川出版社刊

「国」とは、著者・安野光雅の島根県津和野のことである。動機はともかく、本書はその思い出(昭和初期の頃)を描いた画集である。
私が言いたいのは、これは彼が画家・安野光雅として描いたものではない、と言うか、その気負い見られないのだ。ちょっと絵が゜得意な者が「ボクが生まれた家はココ、隣の家は〇〇屋で、その前に川があってネ、そこでサワガニを捕ったんだ」と、呟きながら描いたような絵なのだ。
これが良い、故郷の町並み、山々の四季、小学校、もちろん当時だから馬車や人力車も描かれている。なんとも仄々した郷愁滲み出ているのだ。実際、私も絵ではなく(描けない!)、小中校時代の街並みの地図を描いてみたほどだ(独り言を言いながらね!)。
構えていない安野光雅の絵をはじめて観た。なんとも懐かしい想いを起こす“絵本”だった。


国境なき助産師が行く  -難民救助の活動から見えてきたこと-

2018-11-11 08:58:17 | 日記

小島毬奈著  ちくまプリマー新書

「国境なき医師団」に助産師として参加した女性の手記。難しいことは書かれていない。むしろ、同医師団の仕事がどれほど大変なことかが嫌やというほど分かる。
ところで、同医師団=MSFの面接を受ける時には「私は中絶のために業務を遂行します」という同意書にサインすることが義務付けれているそうだ(初めて知った!)。医療者でなくとも海外スタッフは、全職種しているそうである。助産師である彼女にとっても、いや、宗教上納得できないスタッフもいるはずだと思うのだが、それが途上国・難民救助においては女性の立場・命を守るために絶対必要なのである。
何故か?  中東やアフリカ、東南アジアの民族紛争や宗教戦争、テロ行為の報道をみれば、敢えて例を挙げなくとも分かるだろう。詳しくは本文を読まれたい。遣り切れない!
しかし……こうした情況に耐えて、著者を含めてたくさんの人々が薄給にも拘らず頑張っている。せめて彼女のブログを経由して少しばかりの募金に応じたいと思っている。


絶滅の人類史 -なぜ「私たち」が生き延びたのか-

2018-11-02 09:37:03 | 日記

更科 功著  NHk出版新書

何故「私たち」が生き延びたのか?
答えは『「私たち」が賢い人=ホモ・サピエンスだったからではない!』 『私たち特別な存在ではなかった!』 これが本書の結論だ。
では何故、ネアンダルタール人をはじめさまざまな人種が歴史上誕生してきたが、結局生き残ったのは私たちだけ。その理由は?ココが本書の読みどころ。
ただ、私たちは「人類 最後の一種」なのだ。……一万年後、私たちは生き残っているだろうか?  「 病中 閑あり」 も悪くはない。