GEOSCAPE JAPAN -地形写真家と巡る絶景ガイド-

2020-03-10 09:38:03 | 日記

竹下光士著  山と渓谷社刊

「地形写真家」というのは著者の造語だそうだ。山岳写真を地形を視点に撮影したのである。言って見れば、石や岩にポイントを当てたのである。
これが大成功、素晴らしい! 仏ヶ浦(青森)、谷川岳の一の倉沢、東尋坊、桃洞の滝(秋田)、大芦川の虎岩(栃木)……。どのページを開いてもいいのだが、これまで観ていた景色とは全く違うのである。多分、よく知っている人でもこんな所あったかな?と思う筈である。これは一見の価値がある。地形という視点がこんなにダイナミックなものだとは……。続編が待たれる。ちなみに、私は桃洞の滝が気に入った。コメントを読むまでわ・か・ら・な・か・っ・た!!


積読の山崩し!

2020-03-02 08:49:05 | 日記

体調を崩して筆不精になっていた。少々元気になったので、まとめて読後感を書くことにした。

『エリザベス女王』 君塚直隆著 中公新書 70年近く女王を務め、今なお現役であるエリザベス女王の伝記である。勿論、史上最長・最強の君主である。さすがだ! と思ったのは、1975年来日した時女王が次のように述べたそうである。「(君主とは)歴史に裁かれるのは私であると覚悟しております。この立場を分かって頂けるのは陛下(昭和天皇)しかおられません。自分が教えを受けられるのはこの方しかいないと信じて日本に来たのです」。在位23年の女王発言である。……だから今なお、尊敬され、君主なのである。

『マトリ 厚労省麻薬取締官』 瀬戸晴海著 新潮新書 麻薬や覚醒剤の怖ろしさは知っていたが、どうして絶えないのか、不思議に思っていた。というか、なぜ止められないのか、根絶できないのか。本書を読んでよく解った。これは国際的な犯罪産業なのだ。そして日本は、その覚醒剤の一大マーケットなのだ。そして……マトリの人数は悲しくなるくらい少ないのだ。そして……それに群がる馬鹿者は絶えない。マトリは蟷螂の斧を以て闘う戦士である。頑張って欲しい。

『「馬」が動かした日本史』 蒲池明弘著 文春新書 発想と視点は良い。それだけ!書かれている根拠は全てとは言わないが、大半は他者の研究の良いとこ取りで、自身が調査したり発掘したものではない。なにより、コジツケと当てずっぽうが多すぎる。ジャーナリストの悪い癖である。確かによく解明されていないことなのである。なぜ、武士が騎馬戦をするようになったのか、詳しく書かれた文献がない。私も知りたかった。それだけに裏切られた気が大きい。これから著者自身が研究する前文だと思えばいいのだろうけれど、これにミスミスお金を払ったのが゛悔しい。

『京都でお買いもん -御つくりおきの楽しみ- 入江敦彦著 新潮社刊』 少々京都贔屓が鼻に付く本。ほんとにほしいものは、職人にたのむ。値段を尋ねない、急がさない。これは京都人の専売特許ではない。そして、かなりの付き合いや紹介が必要なのも全国共通。まっ、京都にはそうゆう職人さんが多い、ということなのだろう。そして、確かに良い物が紹介されている。ただし、京都、京都、京都と煩い。京都の言い換えならば何通りもあるだろうに……センスの良いものを発想する著者にしては、手・抜・き!

『京都魔界紀行 西川照子 講談社現代新書』 本書はバリバリの京都本。要するに、京都の名所にはもうひとつ裏の貌があるということ。しかも、それはなかなかどうして…まがまがしい怨霊がカオを聴かせているらしい。まっ、当然だろうなと思う。京都の歴史は怨念と盛衰がセットになった古都だものなぁ。舞妓のだらりの帯の裏には鬼女が居たりするのが京都らしい。

『レバノンから来た能楽師の妻 梅若マドレーヌ著 岩波新書』 内戦を逃れて日本に来た著者が、能楽師・梅若猶彦と出会い、結婚。そして、一男一女の母となり、やがて能楽を海外に発信するプロデューサーとなった話である。これ以上書くことは出来ない。それがどれほど大変なことかはぜひ読んで欲しい。キーワードは能楽師という古典芸能と、内戦が絶えなかったレバノン。そして、跡継ぎを得なければならない宿命。それらを全身全霊で克服した女性が居るということだ。

『玉三郎 勘三郎 海老蔵 -平成歌舞伎三十年史- 中川右介 文春文庫』 オビの「勘三郎が突然、消えた。玉三郎は幽玄の境地に。海老蔵は團十郎証明へ。」 が全てを語っている。歌舞伎ファンならばこれで分かる筈だ。私としては、歌舞伎役者の子ではない玉三郎が独自の世界を築いたのは素晴らしいことだが、独り別の世界に行ってしまったようなのが残念でならないのだが……

『将棋指し腹のうち 先崎学著 文藝春秋』 著者の先崎氏は、かつてキレの良いエッセイストだったが最近みなくなったと思っていたら、うつ病で入院していたらしい(意外だった!)。もう九段だったのですね。その復活版。タイトルは食事の話に思えそうだが、実は呑む話ばっかり!将棋ファンならば頭に浮かぶ大抵の人たちが登場する。なかなか面白い。女性棋士も結構酒豪がいるようで、楽しく読める。

『東京のヤミ市 松平誠著 講談社学術文庫』 ヤミ市。もう知っている人は少ないだろう。終戦(1945・8)から1950年暮れまで東京のあちこちに出現した非公認の市である。食い物も無く、生活必需品も全く無い時の話である。新宿、渋谷、新橋、池袋、上野、そして銀座にもあった。勿論、仕切るのはヤクザである。子供もにはとても行けるところではなく、大人だって恐々行く所だった。でも……行かざるを得なかったところでもある。なぜか、私は知っているのだ!場所も、臭いも、売っているモノも。そこで買い物をしたことはないが。でも、覚えている、あの猥雑な五年間を………。