空 海   

2015-10-22 08:24:34 | 日記

高村 薫著   新潮社刊

空海=弘法大師=真言宗に関する限り、史実に基づいたアプローチとしては概ね良いと思う。そして、最澄=伝教大師=天台宗が、宗義的には大きく発展させ、その後の鎌倉仏教を代表とする各宗派を生み出したのに対し、真言宗はその宗義を極めることなく、後継者を育てることもなく衰退して行ったという評価も頷ける。
しかし、天台宗が僧兵という暴徒を生み出し、時の天皇を悩ませ、織田信長による叡山焼き討ちという暴挙があったことには触れていない。確かに天台宗は政治的には上手く立ち回ったのだが、その悪しき反動がこれだった。この視点が欠けているように思える。宗教が政治権力と結託すると怖い!
逆説的だとは思うが、政治権力とも疎遠で、難しい宗義を極めることもなかったことが、今日のお大師信仰を発展させたとも思えるのだが……? なにしろ、密教の根本は大日如来=弘法大師?は何処にでもいることになっているのだから。