新潮社刊
今号のテーマは「歩く」である。サブタイトルは「時速4kmの思考」。
どんな記事内容を想像するだろうか? 日常のちょっとした散歩、古都や神社仏閣巡り、四十八箇所巡り、外国旅行、探検、いろいろ思い浮かぶに違いない。
寄稿文の白眉は、185万年前にアフリカを出て、1万年前に南アメリカの最先端に到達した我々の祖先・ホモサピエンスの旅であろう。五大陸を制覇したホモサピエンスの旅こそ「歩く」を象徴した旅はない筈だ。
勿論、叡山の千日回峰も凄いし、半日に過ぎない散策で俳句を三句もひねり出す「吟行」も凄い(これこそ「時速4kmの思考」だ)。この特集では様々な「歩く」人が寄稿している。読んでいて飽きない。
余談だが、本書で小澤征爾と村上春樹の対談集『小澤征爾さんと、音楽について話をする』(2011年 新潮社刊)が小林秀雄賞を受賞したことを知った。私自身も感心して読んだ本なので、ちょっと嬉しい。クラシックが好きな人には絶対お勧めの本です。