金田一家、百年のひみつ

2014-09-29 09:13:07 | 日記

金田一秀穂著   朝日新書476 朝日新聞社刊

勿論、あのアイヌ語研究の第一人者・金田一京介、『三省堂明解国語辞典』の春彦、そして『学研現代新国語辞典』の秀穂、というよりТVのクイズ番組でお馴染みの秀穂、三方の金田一家の話である。三代まとめてさの人物伝を読んだのは初めて。多分、私の世代では初代と二代がすぐ頭に浮かぶと思うが…。
国語学三代というのは珍しいのではないだろうか? 一読の価値あり。
帯に日本語は大丈夫ですか? とあるように、最近のファミレスでの接客や若者言葉について詳細な見解が述べられていて、読者の一部の人にはこちらの方が面白いかも知れない。


豊臣秀吉の系図学 -近江、鉄、渡来人をめぐって-

2014-09-23 08:44:55 | 日記

室賀寿男・桃山堂著

著者は日本系図学会会長・家系研究協議会会長。タイトルを見て本当?と思った人は私だけではない筈だ。著者は系図学の専門家だけあって、秀吉の祖先をたどれるあらゆる系図、つまり秀吉に纏わると思われる伝説、伝承に関係する系図を渉猟している。
ただし、信用できないものははっきりと信用できないと明言している。系図を見る時一番気をつけないといけないのは、系譜仮冒(自分の祖先の中に都合のいい人物を紛れこませること。時には平氏出身なのに源氏出身と偽る)である。著者はここには充分配慮している上で、秀吉の祖先を追及しようとしている。
結論は明言していない。むしろ、読者に提示した系図から推理してみて、と提案しているところがいい。系図に興味のある人は十分楽しめる。


北斎と応為

2014-09-10 08:30:38 | 日記

キャサリン・ゴヴィエ著・モーゲンスタン陽子訳  彩流社刊

テーマも主人公も面白い。著者も訳者もアメリカやカナダで著作活動しているというのも異色。というのも、翻訳が見事な(?)時代小説になっているからである。原作は当然英語な筈だから、訳は超訳と言っていい。訳者も小説家らしいし、日本人なのだから不思議ではないのだが…。
しかし、上巻の面白さに比べ、下巻は調査した事(これはこれで充分素晴らしいのだが)を羅列、というか筆が走りすぎていて物足りない。もっとも、主人公の来歴が曖昧模糊としているのだから、それも仕方がないのかも知れないが。
カバーは上巻が『三曲合奏図』(部分)、下巻が同じく『三曲合奏図』(部分)で、共に葛飾応為の作品なのだが、私としては応為の『吉原格子先之図』の方が好きだし、これの方がこれまでの浮世絵になかった陰影を上手く描いている、という点で応為の特長がよく出ていると思うのだが、北斎が美人画を描かなかったとの対比からこの絵を採用したのかな…。


小澤征爾 覇者の法則 -試練を幸運に変えた巨匠の秘密とは?-

2014-09-01 07:57:18 | 日記

中野 雄著   文春新書

小澤征爾に関する本は何冊か読んだけれど、本書は一味違うと思う。著者の経歴にオーディオメーカーの役員をしていたことがあるからだろう。つまり、クラシック業界の内側からの解説が目新しいと思った。但し、「小澤賛歌」が目に付きすぎて少々煩わしい。しかし、無理もない。小澤は著者の「大好きな人」なのだから…。クラシック業界に詳しい人でないと、記事のある部分では誤解を招くかも知れないし、「楽隊屋」という言葉の意味も由来も知らない人が多いかもしれない。
しかし、「サイトウ・キネン」というオーケストラ、アェステバルの存続を危ぶむ著者の懸念はよく分かる。最近、この名称が変わったという記事を読んだが、著者の懸念は今なお存続している。それは、オーケストラの質である。著者が文中で何度も言っていることだが、変わるのは宿命である。問題は誰が変えるのか、どう変わるのかであろう。
ちょっと、気に掛かる問題ではないだろうか。