強父論

2016-08-28 08:49:41 | 日記

阿川佐和子著  文藝春秋刊

良いタイトル。多分、この世代の人々が父親に持つ一般的な父親のイメージである。斯く言う私の持つ父親の印象も同じ。
それほど怖かった、と言うより、今思えば我儘で、勝手な男だった。とてもではないが、可愛いとは思えなかった。
私の父もも海軍出身だったが、教えられることは沢山あつた。たとえば、風呂に入る時、水は無駄に使うな、周りに飛び散った石鹸の泡はきれいに流せ、次に入る人が気持ちよく入れるように。当然だろう。軍艦に余分な水など無いし、燃料も余分に無いのだから。
そういうことは多々あったが、その次に飛んでくるのは拳骨。著者はそんな目には会わなかっただろうが……。男の子には正に強父(恐怖?)だつた。
急いで付け加えるが、勿論良いことも多々あった。今、曲がりながらにも父親であり、爺さまになっているのも一部そのお陰だろうからだ。
阿川佐和子さん、良かったですねぇ。

 

 

 

 


数学者たちの楽園  -「ザ・シンプソンズ」を作った天才たち-

2016-08-07 09:05:28 | 日記

サイモン・シン著  新潮社刊

アメリカ№1アニメ『ザ・シンプソンズ』『フューチュラマ』に隠された「超難解数学」がどんなものだったか、を解説した本。端的に言えば、その脚本家達の内幕本である。
この二つのドラマでは数学の定理や数式がたくさん登場するのだが、それらがドラマの主題ではない。なんとギャグや洒落に使われているのだ(ピタゴラスの定理、π、無限など)。どうしてこれらがギャグになるのか? 実は、この脚本を作ったのがハーバード大学出身の数学者達なのである(中には博士号を持った人達もいる)。学者の道を捨てて、コメディーの脚本家になったのだ。この辺のところは本書を読んでほしい。
しかし、これは簡単なことではない。数学の知識に加え、ギャグのセンスを持ち合わせた人間がそう沢山いるとは思えない。それも驚きだが、このドラマを見続けたファンがいたことはもっと驚きだ。中には、このドラマがきっかけで数学者の道へ進んだ人達もいるそうだ。
訳者の青木薫氏もこのふたつのドラマのDVDをボックス買いしたそうである。原文を翻訳するだけでは満足できなかったようである。
ただし、このドラマに登場した数式の解題が紹介されているのだが、これがなかなか手強い。しかし、これを見た人達が大勢いるということは……ねっ、ほって置く訳にはいかない。