瀬戸内の海賊 -村上武吉の戦い-

2015-11-30 16:08:38 | 日記

山内 譲著  新潮選書

海賊、つまり水軍の消長を村上武吉を中心に時系列的、遺跡や古文書を含めて記述した本。私は初めて読んだ。勿論、瀬戸内の海賊に関してだが…。その経緯については知っている積りだが、著者の主旨とは矛盾するがひとつ気になることがある。
江戸幕府成立後、水軍は極度に制限されたが(西国の一部を除き。いや、薩摩藩は海賊行為を継続していたか)、代わって商船が活躍した。大坂ー江戸間は当然として、東廻り、西廻り、九州・四国航路と、北海道の松前まで。日本列島をぐるりと商船が行き来した。この航海を担った人達の中には海賊の生き残りが多数いた筈だと思うのだが、どうだろうか?
著者に期待したいのは、武士化した海賊ではなく、水夫、船頭、船大工達の「その後」である。多分、その一部を担っていたと思うのだが。著者の意図とは違うテーマなのは分かっているが、そこにも触れて欲しかった。


聞き書  緒方貞子回想録

2015-11-02 09:04:19 | 日記

野林 健・納家政嗣 編   岩波書店刊

「机上の空論」という俚諺がある。本書を読了して最初に浮かんだ。とくに、現政府の「安全保障関連法案」の議論を考えると、どうしてもそう思える。勿論、現政府にも言い分はあるに違いないが……。ホルムズ海峡ひとつとっても、現実に足がついていない気がする。これ以上は書かない。書くには、私は浅学だし、経験も無い。
しかし、素晴らしい方だ。政治家の家系に育ったから、というのは浅薄な推量で、そのような政治家ならば今うようよ居るが、彼女に匹敵する人は見当たらない。資質も教養もまるで違う。
「人間の安全保障」「恐怖からの自由」「欠乏からの自由」どれも現実を、自分の目で直視した経験から出た信念だ。
どうも、我ながら舌足らずの感想で恥ずかしい。ぜひぜひ読んで欲しい。今年、一番感銘を受けた書籍だ。