サイロ・エフェクト -高度専門化社会の罠-

2016-04-18 09:05:48 | 日記

ジリアン・テッド著  文藝春秋刊

まず、最初に。「サイロ・エフェクト」を「たこつぼの罠」と意訳したのには感心した。名訳である。蛸壺に閉じ込められた蛸は、自らの手足を喰い、死を待つより仕方ないてはないか!
この視野狭窄と部族主義(著者は人類学を学んでいる=専門家集団)は、企業・官僚組織・非営利組織、どこにでも見られる。あなたの会社にも…。俗に言う「隣の人は何する人ぞ」現象である。
この罠に陥った企業・組織、そこから脱却して成功した組織・企業の実例として、ソニー、ニューヨーク市庁、シカゴ警察、フェイスブック、アップルなどが挙げられている。
企業人、組織人には思い当たることがあり過ぎる。ここから脱却する方法はあるのか? 著者はある、と言っている。著者は六つの方法論を提示している。ただし、サイロをコントロールするという戦いに終わりはないとも言っている。そうなのだと思う。かりにサイロを脱却しても、それが新たなサイロになることは十分あり得る。常に進行中の作業なのである。どうすればいい? 答えを探すのはあなただ!
著者は、ファイナンシャル・タイムズ紙のアメリカ版編集長。東京支局長を務めたこともある。博士課程で学んだ人類学の視点がなかなか秀逸。


ふナショナル ジオグラフィク 2016/2 3号 

2016-04-09 08:32:41 | 日記

まず、2月号。特集は「動物の目の進化」。動物の目を人間の目と同じ機能を持っている、と考えてはいけない。簡単に言えば、目をセンサーの一種だとしよう。しかし、そのセンサーが何のために必要なのかを改めて考えてみる必要があるのだ。その動物が置かれた状況によっては、人間にとっては必要だが、ある生き物にとっては不要な、情報は要らないのだ。必要最低限、これが進化の条件なのである。それでは不十分だと思うのは人間の思い上がりだ。
という、前提条件で読んでみると面白い。それにしても表紙の写真。タイトルを見なかったら、どう見てもロボットだ。
次に3月号。特集は「生と死ー境界を科学するー」。詳細は本書に譲るとして、私の感想。
“死”とは、正者にとっての問題なのではないだろうか? 本文を読む限りそう思えて仕方がない。死、それに近い状態を含めて、当人はそれほど明確に死の瞬間を確信してはいないのではないだろうか。勿論、生に執着を持たらざるを得ない状況に直面することもあるのだが…。しかし、執着だけで生還できる訳でないだろう。どちらにせよ、生と死は、生者に手に委ねざるを得ない。つまり、生きているか、死者かの判断は生者の考え方次第なのである。ここに、医学と宗教・思想が深く関与する。
本文とはあまり関係のない話になってしまったが、そんな感想を持った。
しかし、である。命が救われるのは喜ばしいことである。それで満足か、とは死者には聴けないが……。