柳橋物語 むかしも今も  山本周五郎 長編小説全集第六巻

2013-10-05 15:17:51 | 日記

新潮社刊

第三巻『さぶ』と比べてみる。『さぶ』はなるほど江戸の市井の人々が主人公だが、設定を変えても(例えば、武家階級の人々)、話の構図は成り立つし、そこに書かれるはずの人情の機微も立派に通用する。つまり、個人の成長物語という課題に集約できる。それは『ながい坂』と同じ構図だと言っていい。勿論、江戸の市井の人の物語ではあるのだが。
一方、『柳橋物語』と『むかしも今も』は、言ってみれば天変地異に遭遇した市井の人々の物語である。主人公はそれらの群像の一人でしかない。そして、これは時代を超え、国を超えた庶民の生活と感情に共通するものを主題にした小説だと言えるのではないか。ここには、明確な違いがあるのではないか?
どうも、この『柳橋物語』『むかしも今も』が江戸の人情を書き上げた小説とは、言い切れない気がしてならない。


1 コメント

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悲恋小説 (iina)
2013-11-07 09:29:28
悲恋小説でした。

しかし、
     真の愛情を悟った形に昇華させていました。

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