<わたし>はどこにあるのか  -ガザニガ脳科学講義-

2014-10-20 15:17:08 | 日記

マイケル・S・ガザニガ著  紀伊国屋書店刊

本書。タイトルで注目しなければならないのは、「私はどこにいるのか」ではなく、「私はどこにあるのか」である。
勿論、人によっては「脳だ!」と言う人もいるし、「心臓だ!」と言う人もいるだろう。確かに生きていてこそ「わたし」だから。もう少し詳しい人は右脳だ、左脳だと言う人もいるだろう。さらに考える人は、「これまでの経験と知識が、わたしをつくっている」と答えるかもしれない。こう答えると、「わたし」はどこにあってもいいことになる。
さて、最近流行の「自分探し」を心掛けている人は、どこを探すのだろうかな。それに「自分を鍛える」と言う人は、「鍛え所」が分からないと……?
そんな疑問を持った人に、お勧めの本。結論は…貴方次第。


奇妙なアメリカ  -神と正義のミュージアム-

2014-10-08 15:54:13 | 日記

矢口祐人著   新潮選書

各章を紹介した方が早い。進化論を「科学的に」否定する、 「核のボタンを押してみよう!」、 田舎町の巨大美術館は「成金趣味」か、 アメリカ人の考える「罪と罰」、 日系人が「アメリカ人」になるとき、ハリケーンは「天災」か「人災か、「九・一一」は記憶されるべきか、真珠湾に浮かぶ「正義」と「寛容」。これがアメリカの八つのミュージアムにつけられたタイトルである。
多分、いくつかは「ああ、あそこか!」と思い当たる人も多いと思う。
しかし、です。本文を読んでの第一印象は、タイトル通り「奇妙な国」だった。詳細は書かない。読んでみてください。
少なくても、アメリカ人の本質の一端は分かる筈だ。銃規制も、国民皆保険の成立が困難なのが分かる気がする。この何とも言えない多重構造がアメリカなんだろうな。どこか、我々の常識とは違うのだ。


書体は本の「声」である(2)

2014-10-05 16:19:16 | 日記

稲泉連著  ちくま 10 2014 筑摩書房のPR誌である。

面白い記事を読んだ。国 東 愛 永 袋 霊 酬 今 力 鷹 三 鬱。この12字が基本なのだが、何故か? ヒントは「永字八法」。感のよい人ならばタイトルとヒントで分かるかもしれない。これは活字を作る時の試作の基本となる文字だそう。この12文字には点、横画、縦画、ハネ、右払い、左払い……といった漢字の基本パーツが含まれている。
本文は大日本印刷の秀英体の大改刻の話である(2006年)。
本文用の明朝が一つのフォントにつき約23000字、秀永体のラインアップでは12万字。これ全てデザインしたそうだ。なんと7年かかった。あまり自分には関係ないと思ったひとも多いと思うが、デジタルフォントとして我々にはお馴染みの文字なのだ。その苦労と根気は如何ばかりだったかと思う。
いや、本当に知らなかった……。