宇宙が始まる前には何があったのか?

2014-01-26 17:04:13 | 日記

ローレンス・クラウス著   文藝春秋社刊

本書は少々ややこしい、しかし、とてつもなく面白いSFだと思って読むことをお勧めする。
という訳で、SFの中味を紹介するのはルール違反だけれど、目次を全部列記する。「宇宙は無から生じた」「何もないところから、何かが生まれなくてはならない」「いかに始まったのか?」「いかに終わるのか?」初めからちょっと…。
「時間の始まりからやってきた光」「ディラックの方程式」「99%の宇宙は見えない」「光速を超えて膨張する」この辺までは宇宙物理学に興味のある人にはお馴染み。
「二兆年後には銀河系以外は見えなくなる」「その偶然は人間が存在するから?」「量子のゆらぎ」「物質と反物質の非対称」「無限の未来には」「宇宙が始まる前には何があったのか?」という展開。
どのような結末があるか、読んでみたいと思いません? 私は、読みました。50億年後には、太陽が死んでしまうこの銀河系の住人としては、どうでもいい話(だって……二兆年後なんて逆立ちしても想像できない)なのですが。
本書の読後感? 石川五右衛門にならって「人間なんて、宇宙なんて、小せえ、小せえ」とでも嘯きますか!


私の暮らしかた

2014-01-23 15:15:49 | 日記

大貫妙子著   新潮社刊

いいな。この文章。気取らず、高ぶらず、淡々としているけれど、要点を外さない文章が。多分、この人の作詞や歌唱もこんな感じではないのかな。多分、彼女の歌声は聞いているはずなのだが、当方仕事に忙しくて落ち着いて聞いた記憶がない(ただ、山下達郎のバンドのボーカルだった人、という印象しか残っていない。ごめんなさい)。
本書は『考える人』で連載されていたので、後ろ三分の一位は読んでいたのだが、最初の頃は読んでいなかった。要所要所にメリハリが利いていて、共感できるところが多かった。特に,…「人の命は地球より重い」…そんな大層なものだろうか。すべての命が地球を地球たらしめているというのに…というフレーズに、思わず「うん!」と頷いてしまった。


芸と人  -戦後歌舞伎の名優たち-

2014-01-18 15:21:00 | 日記

織田紘二著   演劇出版社刊

サブタイトルを見て一瞬思い浮かんだのは、「昭和も遠くなりにけれ」だった。平成も25年経った今、このフレーズも現実味を帯びてきたのかな。そう言えば、この頃歌舞伎を観ていて「先代はここが…」と思っていることに気がつくことがある。
という、年寄り染みた話は置いておいて(苦笑ものだな、この台詞…)、本書に挙げられた役者は18人だが、この内3人(十四代目守田勘弥・三代目河原崎権十郎・三代目市川左團次、もちろん観ていた筈だが細かい所まで思い出せない、という意味で)を除いて、本舞台を観た役者だったし、贔屓の役者も何人か居る。
感想はいろいろある。人によって様々ではないか。円熟した役者(すでにそうだった人、その過程にいた人、最後に華を咲かした人)に比べれば、今の役者に不満を感じるものではないだろうか。素人考えでは、今の役者には深みがない(専門家が言う、腹ができていない)とは常々思うが。
歌舞伎ファンには恰好の本。著者が国立劇場(職員)という視点に限っているところもいい。著名な歌舞伎評論家とは一味違う趣がある。


考える人 季刊2914年冬号

2014-01-14 15:28:27 | 日記

新潮社刊

今回の特集『日本の「はたらく」ーいい仕事、いい生き方ー』がいい。特に、仕事や生き甲斐を探している人(老若男女を問わず)には、“あっ、そういうことなんだ!”と納得出来る特集だと思う。自分のやりたい、やりたかったことで食える(なんとか…)を探している人には参考になると思う。
よくありがちな説教じめた記事はここに登場する人からは聞かれない。勿論、努力し、頑張って、我慢することは、どんな場合でも共通だが、それを「好きなことだから、」出来る」という発想に大きな違いがある。チャンスがないという人もいるだろうけれど、そのチャンスも「好きだから、懸命に探した」という発想で仕事をしている人を、ぜひ知るべきだし、そのヒントがこの特集にある。
読んで、元気になって欲しい人、たくさん居るな!

追記 本文とは関係ないが、ユニクロの広告記事良かったな。セルビアの難民センターで子供達に買い物体験(実際は無料提供)をさせる、というプロジェクト。子供達の嬉しそうな笑顔がとてもいい。こういう形の、子供達の心理的な解放の方法もあるのだな。


山本周五郎 長編小説集第七巻 赤ひげ診療譚・おたふく物語

2014-01-13 08:54:59 | 日記

新潮社刊

偶に、読んでいた心算で読んでいない本がある。『赤ひげ譚』がそうである。当時、他のジャンルに目が向いていたこともあるが、いち早くテレビか映画になったのが原因ですっかり読んだ心算になっていた。
そこで『赤ひげ』だが、私は赤ひげ本人が主人公の話だと思っていたようである。その門下生・保本登がメインの小説だとは思っていなかった。「赤ひげ」が、何故「赤ひげ」たる存在になったのか、その彼の軌跡と心境の変遷、そして当時の幕府の政策と医学界の状況を期待していた。周五郎の手元にはその資料が充分あった筈なので…。
という訳で期待外れだった。これは保本登の成長譚であって、その意味では周五郎の他の作品と変わらない。
という訳で、少々残念だった。


地底の科学 -地面の下はどうなっているのか?-

2014-01-08 16:26:48 | 日記

後藤忠徳著   ベレ出版刊

このような本は、探そうとしてもなかなか見付かるものではない(専門書は別だが)。
これが、とても面白いというか、思わず足元の地面を見てしまうかもしれない。地面を掘るといっても、地球の中心まで掘れないことは分かっている。では、との位の深さまで? ということになると皆目見当が付かないのではないだろうか。因みに、地表から垂直に穴を掘ると、10m程度で10~20万円掛かるそう。本書では10m、  100m、1000m、10000mと進んで10万mを超える深度まで話が進む。
多分、私たちの常識を超えた話が次々に展開されて行く。これ以上は書かない。読んで楽しんでください。但し、百メートルあたりまでは楽しむどころか、ちょっと不安になりましたが……。


吉村 昭 -取材と記録の文学者-

2014-01-03 09:20:23 | 日記

KAWDE夢ムック   河出書房新社刊

著作一覧を見て思ったのは、意外にもこの人の本をよく読んでいたことだった。別にファンだとは意識していなかったのだが……。特に幕末と第二次大戦関係が多かったように思う。
正直に言うと、例えば『長英逃亡』である。その執拗さに辟易したにも拘らず、完読した覚えがある。お蔭で蛮社の獄に関しては、人物関係からその経過まで頭に入った。『日本医家伝』もそうだった。これはその後の仕事に多いに役立った。『大黒屋光太夫』は「ジョン万次郎」を読んだ時には、二人を対比することで面白かった。
その他にもいろいろ読んだが、自分でも不思議なのだがその執拗さにうんざりしながら、読み飛ばしをしなかったことだ。サブタイトルにあるように、取材によるリアルさに魅せられたとしか思えない。これが、彼以降の作家にはない魅力だと思う。
本書を読んで、改めて『生麦事件』を読んでみようと思っている。さて、あの本、書棚の何処にあるものやら、買った方が早いか!