サルなりに思い出す事など

2014-07-29 15:44:02 | 日記

ロバート・M・サポルスキー著   みすず書房刊

子どもの頃の夢が「マウンテンゴリラになる」という子供が地球上に何人いるだろうか? しかも、ニューヨークに住んでいる子供がである。私の夢? 「大人になりたい」でしたね。平凡です。多分うるさい制約が嫌やだったのでしょうね。しかし、最終的にはサバンナのヒヒの研究者になったのだから、初志貫徹したといっていい。
本書はそのヒヒに関する研究過程とそのメモワールである。ユニークなのは、野外観察では各個体に旧約聖書に出てくる人物の名前を付けたことである。野外観察で個体にニックネームを付ける事はままあることだとは思うが、まさかアマテラスオオミミとかスサノオノミコトなんて名を付ける事はまず無いと思うのだが…(勿論、論文では個体〇〇と記したそうだが)。
これが、研究書にありがちな読みにくさを解消しているどころか、大成功。個体の一匹一匹が明確な人間像?を持ってくるから不思議だ。読んでいて、妙に一匹一匹に親しみが湧いて来て困った。面白いです。とてもヒヒの研究書とは思えない。


ドーキンス自伝Ⅰ ー好奇心の赴くままにー

2014-07-28 15:18:36 | 日記

リチャード・ドーキンス著   早川書房刊

訳者も「あとがき」で書いているが、『ドーキンス自伝』というのは、どうしても想像できなかった。そう思いませんか?
『神は妄想である』『利己的な遺伝子』の著者が書く自伝、こんなに違和感がある自伝は初めてである。『…自伝Ⅰ』とあるからⅡもあるだろうから、どんな展開があるのか楽しみではあるが……。尤も冒頭に系図が掲載されたいるが、なんと「曾」が三つも付く祖父、祖父ですよ、から記載されているのは、さすが遺伝学者だと思うし、ヨーロッパ人にはめずらしくもないとも、思えるのだが、本文中には四つも曾が付く祖父も登場するので、やはり、とも思った。
意外、意外の連続でしたが……面白かったです。


文庫  小さな本の大きな世界

2014-07-15 16:04:12 | 日記

『考える人』  2014年夏号  新潮社刊

今回の特集。表紙と14ページの写真を見て驚いた。背といい、表紙といい、とても文庫とは思えない作りなのだ。新潮文庫、第一期の装丁である。神田に今すぐ行って探したいと思ったほどだ。今の文庫とはまるで違う。当時の出版社の文庫に対する意気込みが伝わってくる。
特集では文庫の歴史から体裁、出版ジャンルまであらゆる分野が網羅されている。中には、文庫の書体、字詰め、行数、版面を各社別に比較した記事まである。門外漢にはあまり興味はないかも知れないが、読み易いのはどれか、自分に馴染みがあるのはどこの社のものかは分かるだろう。元編集者としてはこの記事が面白かった。
勿論、国内だけではなく世界の文庫の歴史にも触れられている。意外と文庫の歴史はふるいのだ。ここもとても面白い。とくにペンギンブックスについては想い出が深かったので、懐かしかった。
何気ない文庫だけれど、それぞれに一家言持っている人も多いと思う。一度読んでみては!


幸田 文  -生誕110年、いつまでも鮮やかな物書き-

2014-07-09 15:27:24 | 日記

KAWAD夢ムック  河出書房新社刊

幸田文についてはとっくにこの夢ムックで取り上げられていたと思っていたので、書棚を確かめてから買った。
幸田文、娘さんの青木玉、孫の青木奈緒さんの使う言葉に感心される人達が多いし、それを三世代同居していたことに起因していると言う人がいるが、そうとも言えないのではないか。
私も明治初期生まれの祖母と、大正時代を丸々生きた両親を持っていたが、兄弟で大分違う。これはやはり聞き手の耳、注意力の違いかも知れない。勿論、幸田露伴という存在は大きかったに違いないが。
それはともかく、幸田文の使う言葉は私には馴染みがあるし、読み易い。というか懐かしいとさえ思う。私が東京生まれだと言うことも勿論あるが…。好きな作家です。

 


数学×思考=ざっくりと  -いかにして問題をとくか-

2014-07-09 14:53:19 | 日記

竹内 薫著   丸善出版刊

確かに、大雑把、概略(著者はざっくりと、と言っているが)を掴むというのは大事なことで、それに数学というか統計学を加味すると問題の全体をよく掴める。よく打ち合わせなどでいきなり細かな統計を出されても、見せられた方は自分の頭の中で大雑把に捉え直す作業を強いられる。会議で「要するにどう言うことなんだ」と、言われたり、思ったことが多い筈だ。
新しくチャレンジするにしても、他人に説明するにしてもざっくりと把握するという手法は有効だと思う。というのは、細かなデータを見せられると、逆に極端に違う部分に目が行ってしまってそこを質問したくなる。発表者としては無視していいデータにも拘らずだ。
唯、著者は所々で指摘していることだが、大雑把に把握するには基本的な事が分かっていないと、難しい。一般教養というか知識が必要なのである。一方的な思い込みでは通用しない。著者は、この点をもう少し強調しても良かったのではないか。もちろん、プレゼンが苦手な人にはとても役に立つ本。


ペンギンが教えてくれた物理のはなし

2014-07-02 15:08:10 | 日記

渡辺祐基著   河出ブックス刊

バイオロギングという用語を知っているだろうか。知っている方は本書を読む資格がある(私は知らなかったので、格別面白かったのですが)。
要するに、簡単に言うと鳥や魚、渡りや回遊が詳しく分からない生き物の行動範囲を知ることが出来る最新機器。例えばウナギがどこを回遊しているかは分からない。最近やっと、産卵場所が分かったくらいだ。この機器のメカニズムは省く。しかし、これでわかった事は凄い。マグロは時速100キロで泳ぐというが、実際はたった7キロ。世界一のろい魚はニシオンデンザメで、たったの時速1キロ。
まだまだ面白い話は沢山あるが、書いたら野暮というものだろう。肝心のタイトルの話だが、これも同じ理由で書きません。まっ、もし釣り仲間がいるのでしたら、尊敬されること請け合い。
読んでみてください。楽しい本です。