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東日本大震災に対する所得税法の対応に関する要望書

2011-04-20 14:15:28 | Weblog
被災した納税者の相談を多く手がけている友人のT税理士の要望です。
雑損控除についてよく研究しています。

平成23年3月11日に発生しました東日本大震災に対する税法上の対応のうち所得税に規定されている雑損控除につき以下の項目を要望いたします。

Ⅰ. 雑損控除を「一般雑損控除」と「大規模災害控除」の二区分とすべきである。
所得税法第72条に雑損控除の規定があるが、通常起こりうる災害または盗難若しくは横領による損失と、今回の東日本大震災のような大規模広域災害とを同列に論ずることには無理がある。したがって雑損控除は、前者を「一般雑損控除」、後者を「大規模災害控除」とに区分し、それぞれ異なった対応により被災者支援を図るべきである。

Ⅱ.雑損控除の控除順位を最後にすべきである。
所得税法87条第1項に所得控除の順序に関する規定があり、そこには雑損控除からまず控除を行うものと定めているが、扶養控除や社会保険料控除等、納税者が負うべき生活の基礎となる人的控除や社会共通費用とも言うべき諸控除を無視し、雑損控除を第一義に控除すべきとする必然性は認められない。
   これら担税力の弱体化した被災納税者の保護という観点から、雑損控除の控除順序は最後とすべきであり、控除しきれない雑損控除額は次年度以降5年間にわたり繰越を認めるべきである。

Ⅲ.「大規模災害控除」は所得控除又は税額控除の選択制とすべきである。
大規模広域災害の被災者たる納税者は、「大規模災害控除」を受けるに際し、自らの被災額及びその後の収入状況・生活状況等を勘案し、災害控除を所得控除によるか又は税額控除によるかを任意に選択できるものとする。
(1) 所得控除
      「大規模災害控除」を所得控除の最後に行い、控除しきれない控除額は次年度以降5年間にわたり繰越をする。
(2) 税額控除
「大規模災害控除」に基づく税額控除は、「給付つき税額控除」とし、当該年度に所得が生じなかった納税者に対しても、大規模災害控除額に一定割合を乗じた税額を還付するものとする。

(例えば) 所得ゼロの納税者が「大規模災害控除」の10%(年額100万円を限度)の税額控除を5年間受けたとした場合
     ○  800万円×10%= 80万円≦100万円   80万円×5年=400万円
     ○ 2,000万円×10%=200万円≧100万円  100万円×5年=500万円
        となり、「大規模災害控除」800万円の場合で損害額の50%である400万円を、「大規模災害控除」2,000万円で損害額の25%である500万円を控除税額として受取ることができる。

Ⅳ. 雑損失に繰戻し還付制度の創設を。
雑損控除の適用対象者のうち、緊急な被災者支援対策を必要とする納税者に対し、所得税の繰戻し還付制度を創設すべきである。この制度導入により、将来にわたる所得控除・税額控除の適用を待たずに、早急な生活支援、事業支援を求める被災納税者の復興を図るべきである。
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