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民法(相続関係)等の改正に関する中間試案(概要) 

2016-07-25 17:06:48 | Weblog
民法(相続関係)等の改正に関する中間試案(概要) 

はじめに
法務大臣の諮問に応じて「高齢化社会の進展や家族の在り方に関する国民意識の変化等の社会情勢に鑑み、配偶者の死亡のより残された他方の配偶者の生活への配慮等の観点から、相続に関する規律を見直す必要があると思われる」として法制審議会民法(相続税関係)
部会は昨年(平成27年)より本年6月まで13回開催され中間試案をまとめ公表し、7月より9月末日までパブリックコメントが実施されています。

中間試案(概要)
議論の内容は5項目に整理されています。いずれも実務に影響の大きい改正です。
1.配偶者の居住権を保護するための方策
(1) 短期居住権の新設
配偶者が、相続開始の時に被相続人所有の建物に無償で居住していた場合には,遺産分割(協議,調停又は審判)により当該建物の帰属が確定するまでの間,引き続きその建物を無償で使用することができるものとされています。
(2)長期居住権の新設
 配偶者が相続開始の時に居住していた被相続人所有の建物を対象として,終身又は一定期間,配偶者にその建物の使用を認めることを内容とする法定の権利(長期居住権」)を新設し、配偶者が長期居住権を取得てきるようにとされています。長期居住権の財産評価方法については,今後の検討としています。
2. 遺産分割に関する見直し
 現行の配偶者の法定相続分が配偶者の貢献が十分に反映されていないとして、3案提案されています。(1)被相続人の財産が婚姻後に一定の割合以上増加した場合に、その割合に応じて配偶者の具体的相続分を増やすという考え方です。(甲案) (2)婚姻成立後一定期間が経過した場合に,その夫婦の合意により被相続人となる一方の配偶者の意思表示により他方の配偶者の法定相続分を引き上げることを認める考え方です。(乙-1案) (3)婚姻成立後一定期間の経過により当然に配偶者の法定相続分が引き上げられるとする考え方です。(乙-2案) いずれも一定期間は20年、30年を想定しています。この他、可分債権の遺産分割における取扱いの見直しが検討されています。
3. 遺言制度に関する見直し
 実務的には公正証書遺言を勧めるのでしょうが、議論されたのは自筆証書遺言です。
(1) 自筆証書遺言の方式緩和
財産の特定に関する事項については自書でなくてもよいとしています。
(2) 自筆証書遺言の保管制度の創設
自筆証書遺言を作成した者が一定の公的機関に遺言書の原本の保管を委ねることができる制度を創設するものしています。保管場所として公証役場も選択肢になるのでしょうが新たな遺言保管機関を考えています。税理士及び税理士法人が名乗りを上げたらどうなるのでしょうか。
4. 遺留分制度に関する見直し
 遺留分権利者の権利行使によって、遺贈又は贈与の目的物について当然に共有状態(物権的効果)が生ずることとされている現行の規律を改め、遺留分権利者の権利行使により、原則として金銭債権が発生するとされています。
5. 相続人以外の者の貢献を考慮するための方策
相続人でない者が,被相続人の事業に関する労務の提供又は財産上の給付,被相続人の療養看護その他の方法により被相続人の財産の維持又は増加について特別の寄与をしたときは,相続が開始した後,相続人に対し,金銭の支払を請求することができるものとするとされています。

おわりに
パブリックコメントに際し,中間試案のより詳細な説明を加える「中間試案の補足説明」が作成され公表されています。一読頂ければと思います。

「民法(相続関係)等の改正に関する中間試案」に関する意見募集
http://search.e-gov.go.jp/servlet/Public?CLASSNAME=PCMMSTDETAIL&id=300080149&Mode=0

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