ONE POINT情報11月分
《中小企業の経営承継》
-「中小企業経営承継円滑化法」ってなに?-
「中小企業における経営の承継の円滑化
に関する法律」(以下、中小企業経営承
継円滑化法)は、平成20年5月に国会
で成立し、この10月1日から施行され
ています。
中小企業経営承継円滑化法はなぜできたの?
承継において、相続税の過重な負担や
他の相続人への遺留分*制度の制約等に
よる資産の分散によって、廃業を余儀な
くされる中小企業は多いようです。
平成18年版中小企業白書によると、
「後継者がいないことを理由に毎年、約7
万社の企業が廃業し、これに伴って20
万人~35万人の雇用が失われている」
と推定されています。このままでは、雇
用が確保できないだけでなく、中小企業
が持つ高度な技術が失われることも懸
念されています。
そこで政府は、地域経済の活力維持の
観点からも、日本経済の基盤ともいうべ
き中小企業の経営承継を総合的にバック
アップするために「中小企業経営承継円
滑化法」を創設しました。
* 遺留分:遺言や生前贈与によっても侵
害が許されない、法定相続人に認められる
一定の相続財産の取り分。
対象となる中小企業とは?
中小企業経営承継円滑化法の適用対象と
なるのは、一定期間以上継続して事業を行
っている一定の非上場会社で、原則的には
中小企業基本法上の中小企業です。
* ソフトウェア・情報処理サービス業
の場合、資本金3億円以下または従業員
300人以下、旅館業は資本金5,000
万円以下又は従業員200人以下の企業
が該当します。
資本金 又は
従業員数
製造業その他
3億円以下
300人以下
卸 売 業
1億円以下
100人以下
小 売 業
5,000万円以下
50人以下
サービス業
100人以下
表1:中小企業基本法が定義する中小企業
* 「従業員数」とは常時使用する従業員の数
中小企業経営承継円滑化法の3つの
ポイント
中小企業経営承継円滑化法は、次の3つのポ
イントからなっています。
① 遺留分に関する民法の特例
② 金融支援制度の創設
③ 相続税の納税猶予の特例
ポイント1:遺留分に関する民法の特例
この民法の特例については、平成21
年3月1日施行です。利用できるのは3
年以上継続して事業を行っている中小企
業で、その内容は次のとおりです。
(1) 贈与株式等を遺留分算定基礎財
産から除外できる制度
先代社長の生前に、経済産業大臣の確
認を受けた後継者が、遺留分権利者全員
との合意内容について家庭裁判所の許可
を受けることで、先代社長から後継者へ
贈与された自社株式その他一定の財産に
ついて、遺留分算定基礎財産から除外で
きます。
(2) 贈与株式等の評価額を予め固定で
きる制度
経済産業大臣の確認を受けた後継者が、
遺留分権利者全員との合意内容について
家庭裁判所の許可を受けることで、遺留
分の算定に際して、贈与株式の価額をそ
の合意時の評価額で予め固定できるよう
になります。これにより、後継者の貢献
による株式価値の上昇分は減らされない
ことになります。
ポイント2:金融支援制度の創設
経済産業大臣の認定を受けた中小企業
者(非上場会社及び個人事業主)ならび
にその代表者に対して、相続発生に伴っ
て必要となる資金調達を支援するため、
次の特例が設けられました。
(1) 中小企業信用保険法の特例
会社(個人事業主を含む)の資金需要
に対応。信用保険が拡大(別枠化)され、
株式、事業用資産等の買取資金や一定期
間の運転資金等の融資の際に保証が受け
られます。
通常 + 拡大(別枠化)
普通保険(2億円)
無担保保険(8,000万円)
特別小口保険(1,250万円)
普通保険(2億円)
無担保保険(8,000万円)
特別小口保険(1,250万円)
(2)日本政策金融公庫法の特例
後継者個人の資金需要に対応。代表者
個人に対する融資を行い、株式、事業用
資産等の買取資金、相続税納税資金、遺
留分減殺請求*への対応資金等の調達に
ついて支援されます。
* 遺留分減殺請求:遺留分を侵害している
他の相続人等に対して遺留分の不足分を請求
すること。
ポイント3:相続税の納税猶予の特例(創設予定)
後継者が相続等によって取得した自社
株式(非上場株式)等の課税価格の80
%にあたる相続税の納税を猶予するとい
う特例です。平成21年度税制改正に盛
り込まれ、国会で審議され成立すれば、
同20年10月1日から遡及適用される
予定です。
適用対象となる会社の要件等について
は、以下の内容で検討されています。
表2:相続税の納税猶予制度の適用要件等
項 目
要 件
適用対象会社
・ 非上場の同族中小企業であること
・ 計画的な承継に係る取組が行われてきたこと
・ 資産管理会社でないこと など
事業継続
5年間の事業継続。具体的には
・ 代表者であること
・ 雇用の8割以上を維持
・ 相続した対象株式の継続保有
被相続人
・ 会社の代表者であったこと
・ 被相続人と同族関係者で発行済議決権株式総数の50%超の株式を保有し、かつ同族内で筆頭株主であったこと
相続人(後継者)
・ 会社の代表者であること
・ 被相続人の親族であること
・ 相続人と同族関係者で発行済議決権株式総数の50%超の株式を保有し、かつ同族内で筆頭株主となる場合(1回の相続で適用される者は1人)
ONE POINTO情報平成20年11月号より抜粋
《中小企業の経営承継》
-「中小企業経営承継円滑化法」ってなに?-
「中小企業における経営の承継の円滑化
に関する法律」(以下、中小企業経営承
継円滑化法)は、平成20年5月に国会
で成立し、この10月1日から施行され
ています。
中小企業経営承継円滑化法はなぜできたの?
承継において、相続税の過重な負担や
他の相続人への遺留分*制度の制約等に
よる資産の分散によって、廃業を余儀な
くされる中小企業は多いようです。
平成18年版中小企業白書によると、
「後継者がいないことを理由に毎年、約7
万社の企業が廃業し、これに伴って20
万人~35万人の雇用が失われている」
と推定されています。このままでは、雇
用が確保できないだけでなく、中小企業
が持つ高度な技術が失われることも懸
念されています。
そこで政府は、地域経済の活力維持の
観点からも、日本経済の基盤ともいうべ
き中小企業の経営承継を総合的にバック
アップするために「中小企業経営承継円
滑化法」を創設しました。
* 遺留分:遺言や生前贈与によっても侵
害が許されない、法定相続人に認められる
一定の相続財産の取り分。
対象となる中小企業とは?
中小企業経営承継円滑化法の適用対象と
なるのは、一定期間以上継続して事業を行
っている一定の非上場会社で、原則的には
中小企業基本法上の中小企業です。
* ソフトウェア・情報処理サービス業
の場合、資本金3億円以下または従業員
300人以下、旅館業は資本金5,000
万円以下又は従業員200人以下の企業
が該当します。
資本金 又は
従業員数
製造業その他
3億円以下
300人以下
卸 売 業
1億円以下
100人以下
小 売 業
5,000万円以下
50人以下
サービス業
100人以下
表1:中小企業基本法が定義する中小企業
* 「従業員数」とは常時使用する従業員の数
中小企業経営承継円滑化法の3つの
ポイント
中小企業経営承継円滑化法は、次の3つのポ
イントからなっています。
① 遺留分に関する民法の特例
② 金融支援制度の創設
③ 相続税の納税猶予の特例
ポイント1:遺留分に関する民法の特例
この民法の特例については、平成21
年3月1日施行です。利用できるのは3
年以上継続して事業を行っている中小企
業で、その内容は次のとおりです。
(1) 贈与株式等を遺留分算定基礎財
産から除外できる制度
先代社長の生前に、経済産業大臣の確
認を受けた後継者が、遺留分権利者全員
との合意内容について家庭裁判所の許可
を受けることで、先代社長から後継者へ
贈与された自社株式その他一定の財産に
ついて、遺留分算定基礎財産から除外で
きます。
(2) 贈与株式等の評価額を予め固定で
きる制度
経済産業大臣の確認を受けた後継者が、
遺留分権利者全員との合意内容について
家庭裁判所の許可を受けることで、遺留
分の算定に際して、贈与株式の価額をそ
の合意時の評価額で予め固定できるよう
になります。これにより、後継者の貢献
による株式価値の上昇分は減らされない
ことになります。
ポイント2:金融支援制度の創設
経済産業大臣の認定を受けた中小企業
者(非上場会社及び個人事業主)ならび
にその代表者に対して、相続発生に伴っ
て必要となる資金調達を支援するため、
次の特例が設けられました。
(1) 中小企業信用保険法の特例
会社(個人事業主を含む)の資金需要
に対応。信用保険が拡大(別枠化)され、
株式、事業用資産等の買取資金や一定期
間の運転資金等の融資の際に保証が受け
られます。
通常 + 拡大(別枠化)
普通保険(2億円)
無担保保険(8,000万円)
特別小口保険(1,250万円)
普通保険(2億円)
無担保保険(8,000万円)
特別小口保険(1,250万円)
(2)日本政策金融公庫法の特例
後継者個人の資金需要に対応。代表者
個人に対する融資を行い、株式、事業用
資産等の買取資金、相続税納税資金、遺
留分減殺請求*への対応資金等の調達に
ついて支援されます。
* 遺留分減殺請求:遺留分を侵害している
他の相続人等に対して遺留分の不足分を請求
すること。
ポイント3:相続税の納税猶予の特例(創設予定)
後継者が相続等によって取得した自社
株式(非上場株式)等の課税価格の80
%にあたる相続税の納税を猶予するとい
う特例です。平成21年度税制改正に盛
り込まれ、国会で審議され成立すれば、
同20年10月1日から遡及適用される
予定です。
適用対象となる会社の要件等について
は、以下の内容で検討されています。
表2:相続税の納税猶予制度の適用要件等
項 目
要 件
適用対象会社
・ 非上場の同族中小企業であること
・ 計画的な承継に係る取組が行われてきたこと
・ 資産管理会社でないこと など
事業継続
5年間の事業継続。具体的には
・ 代表者であること
・ 雇用の8割以上を維持
・ 相続した対象株式の継続保有
被相続人
・ 会社の代表者であったこと
・ 被相続人と同族関係者で発行済議決権株式総数の50%超の株式を保有し、かつ同族内で筆頭株主であったこと
相続人(後継者)
・ 会社の代表者であること
・ 被相続人の親族であること
・ 相続人と同族関係者で発行済議決権株式総数の50%超の株式を保有し、かつ同族内で筆頭株主となる場合(1回の相続で適用される者は1人)
ONE POINTO情報平成20年11月号より抜粋