納税者に寄り添う税の専門家 税理士法人 元(GEN)のブログ

会計・税金・経営情報について「わかりやすい」を合言葉に現場の声を発信しています。

相続税対策4 生前贈与は相続税対策に有効か?

2022-09-29 10:04:09 | Weblog
贈与税には暦年課税と相続時精算課税があります。

暦年課税を廃止するのではないかとの見方が一部にあり

政府税制調査会では暦年課税を廃止などは行わず

当面の課題として利用状況のが低迷している相続時精算課税制度の

見直しなどを挙げています。

その他の贈与についてのポイントをお伝えします。

〇贈与税の配偶者控除

配偶者の老後の生活保障を意図して贈与される場合が多いことを考慮して夫婦間の

贈与については特に贈与税を軽減するものである。

婚姻期間が20年以上の配偶者から一定の居住用不動産またはその取得資金の贈与を

受けた場合には、その贈与を受けた居住用不動産等の課税価格から2,000万円までの

金額を配偶者控除として控除できる。

過去に同じ配偶者からこの特例の適用を受けている場合は重複適用できない。

なお、暦年課税の基礎控除額110万円と合わせて最高控除額は2,110万円となる。


時限措置として次の特例措置がある。

〇住宅取得等資金の贈与税の非課税措置

使途は一定の住宅取得等資金、贈与者は受贈者の直系尊属(父母、祖父母など)、

受贈者は贈与を受けた年の1月1日において20歳以上直系卑属(令和4年4月1日以後の贈与より18歳以上)

贈与できる期間は令和5年12月31日まで。非課税が適用される贈与の上限金額は

1,000万円(時期・住宅の種類に等により異なる)

贈与税の申告書等を申告期日内に税務署に提出。

贈与された資金を使用できる期間は贈与された年の翌年の3月15日まで。

贈与者が贈与後に死亡した場合、相続財産には加算しない。

〇教育資金の一括贈与に係る贈与税の非課税

使途は一定の教育資金、贈与者は受贈者の直系尊属(父母、祖父母など)、

受贈者は30歳未満の直系卑属(前年の合計所得金額が1,000万円以下)

贈与できる期間は令和5年12月31日まで。非課税が適用される贈与の上限金額は

1,500万円(学校以外は500万円)。贈与された資金は金融機関の専用口座で管理し、

領収書等を期日内に金融機関に提出する。

贈与された資金を使用できる期間は受贈者が30歳に達するまでで残額には

原則、贈与税が課税される。

贈与者が贈与後に死亡した場合、相続財産に加算される。

〇結婚、子育て資金の一括贈与に係る贈与税の非課税

使途は一定の結婚、子育て資金、贈与者は受贈者の直系尊属(父母、祖父母など)、

受贈者は20歳以上(令和4年4月より18歳)50歳未満の直系卑属(前年の合計所得金額が1,000万円以下) 贈与できる期間は令和5年12月31日まで。

非課税が適用される贈与の上限金額は1,000万円(結婚は300万円)。

贈与された資金は金融機関の専用口座で管理し、

領収書等を期日内に金融機関に提出する。

贈与された資金を使用できる期間は受贈者が50歳に達するまでで残額には

原則、贈与税が課税される。

贈与者が贈与後に死亡した場合、相続財産に加算される。


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相続税対策3 借金はしたくないけど借金は相続税対策として有効ですか

2022-09-22 11:18:52 | Weblog
相続税対策3 借金はしたくないけど借金は相続税対策として有効ですか

鈴木「借金は相続財産から差引けるということですから、借金は相続税の節税対策として有効なのですか?」

私 「まず、債務控除の確認ですね。相続は亡くなった人(被相続人)の財産を引き継ぐだけでなく、被相続人の借金も引き継ぐことになります。

相続財産というと土地や預貯金などプラスの財産のイメージがありますが借金などマイナス財産、負の財産も財産に変わりはありません。

マイナスの資産はプラスの資産から差し引いて相続財産を計算します。単純な引き算ですがこれを債務控除といいます。

算式で示しますと

プラスの財産(土地や預貯金)-マイナスの財産(借金)=相続税の計算対象となる財産

となります」

鈴木「相続税対策のためにわざわざ借金をするのですか。我が家の家系は借金をしないのですが」

私 「例えば、自宅を借金で建替えます。住宅ローンの残債は相続が開始すると債務控除となりますが、

一般的には住宅ローンは団体信用生命保険で弁済されているケースがほとんどですので死亡保険金と住宅ローンが相殺され、

プラスマイナスがゼロとなり借金は相続税対策にはなりませんね」

鈴木「仮に投資用ワンルームマンションを借金で購入するとどうなりますか?」

私 「投資ワンルームを借金で購入というのは非常に質問の多いところです、いま具体的な投資物件の資料が手元にないですが、

ざっくりと説明しますと、例えば、2,000万円の中古マンションを投資用で購入した場合です。

頭金を10% 200万円、残りはローンで1,800万円を組んだ場合です。

何年か経過した後に相続が開始した場合ですが、ローンの残債が1,500万円残っているとします。

この1,500万円が債務控除として相続財産から差引かれます」

鈴木「なんとなくイメージはつかめました。だけど、お話を聞いて気になることがありました」

私 「なんでも聞いてください」

鈴木「中古のマンションを2,000万円で購入し、相続開始のときのローン残債が1,500

万円ですと 2,000万円-1,500万円=500万円で 相続財産が増えていないでしょうか」

私 「そうですね、中古マンションは相続財産となります。で、ここからが大事です。

中古マンションの多くは建物と土地から成り立っています。

建物の相続税評価額は固定資産税評価額で土地の相続税評価額は路線価とすると、

中古マンションの相続税評価額は売買価額の50~70%程度になります。

仮にいまお話している中古マンションの相続税評価額が1,000万円とすると 

1,000万円(相続税評価額)-1,500万円(ローンの残債)=△500万円となります。

つまりマイナス500万円が相続税の節税効果です。

投資マンションの相続税評価は他に評価減もできますが

今日はあくまで借金が債務控除として相続財産から差引けるということを押さえておいてください」

鈴木「わかりました」

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相続税対策2 預貯金を不動産にシフトする

2022-09-14 09:42:58 | Weblog
相続税対策2 預貯金を不動産にシフトする

鈴木「次に不動産ですが、よく手持ちの現金や預貯金を不動産にシフト(移す)すると相続税対策になると言われていますが?」

私 「相続財産の評価は原則、時価ですが、具体的には相続財産の種類ごとに決められています。

例えば現金1,000万円の相続税評価額は1,000万円です。これはシンプルです。

では、建物の相続税評価額は、鈴木さん覚えていますか?」

鈴木「固定資産税評価額ですね」

私 「そうですね、固定資産税の納税通知書でわかりますね。納税通知書では建物のことを家屋と表記しています。

この固定資産税評価額が建物の相続税評価額になるわけですが、この固定資産税評価額は建物の建築価格の約60%が目安となっています。

この評価の差額を相続税対策として検討します。仮に手持ちの預貯金(現金)3,000万円で自宅を建替えると

預貯金(現金)の相続税評価額 3,000万円

建物の相続税評価額 3,000万円×60%=1,800万円

評価の差額 3,000万円-1,800万円=1,200万円

つまり財産価値は3,000万円で変わらないのに相続税評価額は1,800円に減少、

1,200万円も評価に差額が生じてきます」

鈴木「なるほど、現金や預貯金を不動産にシフト(移す)すると財産価値は変わらないのに相続税評価額は変わるのですね」

私 「評価の違いは相続税対策となります。ここでは考え方を伝えていますので省略していますが、

建物は年月のともに古くなりますし、手持ちの現金や預貯金もインフレで価値が目減りするかもしれません」

鈴木「私の元同僚の中には年金の足しにしようと退職金でワンルームマンションに投資をしている者もいます。

この場合も現金や預貯金をワンルームマンションにシフト(移す)していますから同時に相続税対策になっているのですね」

私 「考え方は先ほどの自宅の建替えと同じです。仮に手持ちの現金や預貯金からワンルームマンションを1,500万円で購入すると

預貯金(現金)の相続税評価額 1,500万円

建物の相続税評価額 1,500万円×60%=900万

評価の差額 1,500万円-900万円=600万円

つまり財産価値は1,500万円で変わらないのに相続税評価額は900万円に減少、600万円も評価に差額が生じてきます」

鈴木「600万円といえば基礎控除額の比例控除と同額ですね」

私 「ワンルームマンションには建物だけではなく土地部分もありますし賃貸物件には相続税評価の減額の規定もあります」

鈴木「なるほど! ワンルームマンションの投資は年金の足しだけではなく相続税対策になりますね」

私 「投資はあくまで自己責任です。

将来のワンルームマンションの価値の下落や空室の対策、受取る家賃の滞納など賃借人とのトラブル、

借入金で購入した場合の返済などリスク面の検討も必要ですね」

鈴木「わかりました!」

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相続税対策1 相続税対策の王道、生命保険金

2022-09-07 09:41:33 | 相続税入門
相続税対策1 相続税対策の王道、生命保険金

東京の郊外の一戸建てに住む鈴木雄一さんは父親からの相続の際にマイホームを相続しました。

鈴木さんはごく普通の会社員を経験して定年退職をし、現在は従前に勤務していた会社で再雇用され働いています。

年齢は60代前半で、家族構成は長男、次男の3人です。

妻は数年前に病気で亡くなり、長男は大学を卒業し大阪の会社に就職し大阪に居ます。

次男は米国の大学に留学し、そのまま米国で就職したいと考えています。

鈴木さんは仮に自分が亡くなって、相続が開始した時に、

相続税がどれくらいになるのかとか相続税の節税の基本について確認したくて相談にお見えになりました。

鈴木「生命保険が相続税対策に有効と言われていますが」

私 「生命保険は相続税対策として重要な項目の一つです。

生命保険金は亡くなった人(被相続人)から相続によって取得したものではないですが実質的には相続により取得した財産と同様のものとみられます。

相続税ではこのような財産を相続により取得したものとみなして相続税の課税をしています。

これをみなし相続財産といいます」

鈴木「みなし相続財産? どんなものでしょうか」

私 「代表的な例ですと生命保険金などがあります。

死亡保険金は保険契約に基づいて被相続人の死亡という事実の発生によって相続人等が受け取るべきものであり、

法律的には相続により取得した相続財産ではありません。

しかし、実際は被相続人が保険料を負担し、

その死亡により相続人等が取得するものであるから実質的に相続財産と変わらないものであります。

そこで相続税は生命保険金などをみなし相続財産として相続税を課税しています」

鈴木「生命保険金はみなし相続財産になるのですね」

私 「保険金を受け取るのは契約者の死亡だけに限らないし、

保険料の負担者と受取人が異なるなどいくつかのケースが生じますが、

ここでは一般的な契約に見られる亡くなった人(被相続人)が契約者、被保険者、保険料負担者で受取人が法定相続人ということを前提としています」

鈴木「もう一度確認ですが、生命保険金の受取りは相続財産になるということですね」

私 「ここから、さらに大事です。相続人が受け取った死亡保険金等の一定金額は相続税を課税しません。非課税としています」

鈴木「非課税財産? つまり相続税の計算から外れるのですね」

私 「そうです。相続人が受け取った保険金のうち、次の算式によって計算した金額までの部分が非課税限度額となります。

算式で示しますと

(500万円×法定相続人の数)×その相続人の受け取った保険金の合計額÷相続人全員の受け取った保険金の合計額となります」

私 「例えば鈴木さんの家族はお子様2人が法定相続人ですよね。

万が一鈴木さんの死亡により死亡保険金をお子様が2人それぞれ500万円 合計1,000万円を受け取ったとします。

法定相続人は2人ですから、非課税限度額は500万円×2人=1,000万円となります」

鈴木「死亡保険金1,000万円が非課税となり、相続税の計算から外れるのですね」

私 「仮に鈴木さんの預貯金から1,000万円を生命保険金に降り替えておくと1,000万円が

相続財産から減少します。簡単ですね、相続税対策の王道です」

鈴木「なるほど、よくわかりました!」

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