納税者に寄り添う税の専門家 税理士法人 元(GEN)のブログ

会計・税金・経営情報について「わかりやすい」を合言葉に現場の声を発信しています。

相続税講義録その21

2012-01-26 14:39:52 | Weblog
第8節 各相続人等の納税額
1.相続税額の加算
 相続又は遺贈により財産を取得した者が、被相続人の一親等の血族(一親等の血族の代襲相続人を含む。) 及び配偶者以外の者である場合のその者の相続税額は、その者の算出税額に20%相当額を加算する。
2.贈与税額控除
 相続又は遺贈により財産を取得した者が、相続開始前3年以内に被相続人から贈与を受けていた財産の価額は、その者の相続税の課税価格に加算して相続税を計算することとされていることから、税負担の重複を避けるため、その者の算出税額からその贈与税額を控除するものである。
3.配偶者に対する相続税額の軽減
 この制度は、①一般に被相続人の死亡時から配偶者の死亡する時までの時間が短いこと、②被相続人の遺産の形成・維持に対する配偶者の貢献に対する配慮及び③長年共同生活を営んできた配偶者の座に対する配慮等の理由から設けられたものである。すなわち、配偶者が相続等により取得した財産の価額が、民法に規定する法定相続分相当額又は1億6千万円のいずれか多い金額以内であれば、配偶者の納付すべき相続税額がゼロとなる軽減措置である。なお、相続又は遺贈により財産を取得した者が、隠ぺい仮想行為に基づき相続税の申告をしていた(又はしていなかった)場合には、その隠ぺい仮想行為による部分については、この特例は適用されない。
(1)軽減される配偶者の相続税額の算式
 相続税の総額(配偶者が隠ぺいし、又は仮装した財産に係るものを除く。)×
次のイ又はロのうちいずれか少ない金額÷課税価格の合計額
イ課税価格の合計額に配偶者の法定相続分を乗じた金額又は1億6千万円のいずれか多い金額
ロ配偶者の課税価格

(2)適用を受けるための手続き
 納付すべき税額の有無に関係なく相続税の申告書を提出することが必要である。
未分割の財産については、適用されない。
4.未成年者控除
 相続又は遺贈により財産を取得した者が、被相続人の法定相続人で、かつ、未成年者である場合には、その者の算出税額から満20歳に達するまでの1年につき6万円(改正案10万円)を乗じた金額を控除する。
(算式) 6万円× (20歳-その未成年者の年齢)=未成年者控除額

5.障害者控除
 相続又は遺贈により財産を取得した者が、被相続人の法定相続人で、かつ、85歳未満の障害者である場合には、その者の算出税額から満85歳に達するまでの1年につき6万円(改正案10万円) を乗じた金額を控除する。
 特別障害者は12万円(改正案20万円)
(算式) 障害者の場合 6万円× (85歳-その障害者年齢)=障害者控除額
 特別障害者の場合 12万円× (85歳-その障害者年齢)=特別障害者控除額

6.相次相続控除
 相続税は、相続や遺贈により財産を取得した場合に課税されるので、短期間に続けて相続の開始があった場合は、同一の財産についてその都度相続税が課され、長時間にわたり相続の開始がなかった場合に比べ、著しい税負担の差異が生じる。このため、10年以内に2回以上相続が開始し、相続税が課せられる場合には、前回の相続につき課せられた税額の一定割合相当額を、後の相続の際に課せられる相続税額から控除し、その負担の軽減を図ることとしている。

7.在外財産に対する相続税額の控除(外国税額控除)
相続又は遺贈により法施行地外にある財産を取得した場合において、その財産に対して外国の法令により我が国の相続税に相当する金額は、その者の算出税額から控除する。これは、いわゆる国際2重課税の緩和規定である。

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相続税講義録その20

2012-01-26 14:38:56 | Weblog
第7節各相続人などの相続税額
1.各相続人等の相続税額
 相続税の総額を、誰がいくら負担すべきか、この負担割合計算を行うことが必要になる。各相続人又は受遺者の相続税額は、相続税の総額を基につぎにより算出する。
(算式) 相続税の総額×(各相続人又は受遺者の課税価格÷課税価格の合計額)
=各相続人又は受遺者の相続税額

2.按分割合
 各相続人又は受遺者の課税価格が課税価格の合計額のうちに占める割合に小数点2位未満の端数が生じた場合には、各相続人等の全員が選択した方法により、その合計値が1になるように端数を調整して各取得者の算出税額を計算して差し支えないものとされている。

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相続税講義録その19

2012-01-25 17:49:48 | Weblog
第6節 相続税の総額
1.遺産に係る基礎控除
(1)遺産に係る基礎控除
 各相続人等の課税価格の合計額から控除する金額で、いわば相続税の課税最低限である。課税価格の合計額が遺産に係る基礎控除額以下であれば相続税は課税されない。
(2)遺産に係る基礎控除額の計算
 遺産に係る基礎控除額は、次の算式により計算した金額である。
(算式)
遺産に係る基礎控除額=5,000万円+(1,000万円×法定相続人の数)
  [改正案: 3,000万円+(600万円×法定相続人の数)]
2.相続税の総額の計算
 相続税の総額は、「課税価格の合計額」から「遺産に係る基礎控除額」を控除した金額を、法定相続人(相続税法第15条第2項に規定する相続人)の数に応じた
相続人が民法の規定による相続分及び代襲相続分に応じて取得したものとした場合の各取得金額に、相続税の超過累進税率を適用して算出した金額を合計して求める。
相続税の総額は、次により算出する。
①各相続人又は受遺者の取得財産の価額-(債務の金額+葬儀費用の金額)
 +3年以内の贈与財産の価格=課税価格
②各相続人の課税価格の合計=課税価格の合計額
③課税価格の合計額-遺産に係る基礎控除額=課税遺産総額
④課税遺産総額×各法定相続人の法定相続分×税率=各法定相続人の税額
⑤各法定相続人の税額の合計額=相続税の総額

 

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相続税講義録その18

2012-01-25 17:48:39 | Weblog
3.相続開始前3年以内に被相続人から贈与を受けた者の課税価格
(1)課税価格に加算する理由
 個人からの贈与財産については、贈与税が課されるのであるが、特に相続開始
直前における被相続人の贈与財産は、むしろ相続財産の一部として税負担を清算した方が合理的であるという考え方に基づき、相続開始前3年以内の贈与財産の価額を相続税の課税価格に加算することとしたものである。
(2) 規定の内容
①相続又は遺贈により財産を取得した者が、相続開始前3年以内に被相続人から贈与を受けていた財産(特定贈与財産を除く。) に限り、その贈与財産の価額が加算される。
②相続開始の年に被相続人から贈与により取得した財産で、相続税の課税価格に加算されるものは、贈与税の課税価格に算入しない。
③加算される財産の価額は、贈与により取得した時の評価額となる。
④加算された贈与財産に課税された贈与税は、算出した相続税額から控除して二重課税を排除している。
⑤加算される贈与財産は、被相続人から相続又は遺贈により財産を取得した者に限られるので、相続又は遺贈により財産を取得しなかった者(みなし相続財産を取得した者を除く。) が、贈与により取得した財産は、加算しない。
⑥相続税の課税価格に加算した財産の価額から債務控除はできない。

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相続税講義録その17

2012-01-25 17:47:52 | Weblog
2.債務控除
(1) 債務
  相続税の課税価格の計算上、相続人又は包括受遺者が負担した債務の金額は、取
 得財産の価額から控除される。
 イ債務控除の対象となる債務とは
  ①相続人又は包括受遺者が承継した債務であること。
  ②相続開始の際、現に存するものであること。
  ③確実と認められるものであること。
 ロ債務控除の対象とならない債務
  被相続人が生前に購入した墓碑の未払代金は、債務控除の対象とはならない。
(2)葬式費用
  葬式費用は、本来、遺族の負担すべきものであり控除できないようにみられるが、
 相続税の課税価格の計算上、相続人又は包括受遺者が負担した葬式費用は控除する
こととされている。葬式費用は、(1)の債務とは本質的に異なるので、いわば、特例
的性格をもつものと解されている。このため、葬式費用の範囲を相当厳密にして
「葬式の前後に生じた出費で通常葬式に伴うと認められるものに限る。」を原則とし
ている。
イ債務控除の対象となる葬式費用とは
 相続税法では明確な範囲を規定していないが、一般的には、次のようなものが葬
式費用として控除できる。
①葬式若しくは葬送に際し、又はこれらの前において、理葬、火葬、納骨又は遺がい若しくは遺骨の回送その他に要した費用(仮葬式と本葬式とを行うものにあっては、その両者の費用)
②葬式に際し、施与した金品で、被相続人の職業、財産その他の事情に照らして相当程度と認められるものに要した費用
③①又は②に掲げるもののほか、葬式の前後に生じた出費で通常葬式に伴うものと認められるもの
④死体の捜索又は死体若しくは遺骨の運搬に要した費用
ロ葬式費用には該当しないもの
①香典返れい費用
②墓碑、墓地の購入費及び墓地借入料
③初七日、その他法要のための費用
④医学上、裁判上など特別の処置に要した費用


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相続税講義録その16

2012-01-25 17:47:22 | Weblog
第5節 相続税の課税価格の計算
1.各相続人及び受遺者の相続税の課税価格(各人の課税価格)は次のように計算し、各人
の課税価格を合計したものを「課税価格の合計額」という。

相続又は遺贈により取得した本来の財産の価額 
+相続又は遺贈により取得したとみなされる財産の価額 
-非課税財産の価額 -債務及び葬式費用の額  
+被相続人からの3年以内の贈与財産の価額
=各人の課税価格

 各人の課税価格 + 各人の課税価格 + 各人の課税価格 

=課税価格の合計額


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相続税講義録その15

2012-01-23 12:26:54 | Weblog
4.相続人の取得した退職手当金などのうち一定の金額
 被相続人が死亡したため相続人又は相続人以外の者に対し、被相続人に支給される
べきであった退職手当金などが支給された場合には、その退職手当金などは、相続又
は遺贈により取得したものとみなされ相続税の課税対象となるが、生命保険金などと
同様に相続人(相続を放棄した者又は相続権を失った者を除く。)に限り、取得した退職
手当金のうち一定の金額は、非課税とされている。なお、非課税となる一定の金額の
計算方法及び金額は、3で説明したことと同様である。


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相続税講義録その14

2012-01-23 12:26:05 | Weblog
3.相続人の取得した生命保険金などのうち一定の金額
  被相続人の死亡により相続人又は相続人以外の者が所得した生命保険金などのうち、被相続人が負担した保険料に対応する部分は、相続又は遺贈により取得したものとみなされ相続税の課税対象となるが、そのうち一定の金額は、非課税とされている。これは、社会保障制度を補完する見地のほか、被相続人の死後における相続人の生活安定のため設けられたものである。したがって、この適用が受けられる者は、相続人(相続を放棄した者又は相続権を失った者を除く。) に限定される。非課税とされる一定の金額は、次の算式のとおり500万円に法定相続人の数(改正案:①未成年者②障害者③相続開始直前に被相続人と生計を一にしていた者に限る)を乗じた金額となる。
(算式)
500万円×法定相続人の数=保険金の非課税限度額
   (注) 1 すべての相続人(放棄した者等を除く)の取得した保険金の合計額が保険金の非課税限度額以下である場合には、その保険金の全額が非課税となる。
      2 すべての相続人(放棄した者等を除く)の取得した保険金の合計額が険金の非課税限度額を超える場合には、次の算式により算出した金額が、各相続人の非課税の額となる。

(算式) 保険金の非課税限度額×その相続人が取得した保険金の合計額÷すべての相続人
   
   (放棄した者等を除く)が取得した保険金の合計額=その相続人の非課税金額

  法定相続人の数とは、相続税法第15条第2項に規定されている相続人の数のことを
  いい、相続を放棄した者がいても、その放棄がなかったものとした場合の相続人の
数のことをいう。
ここでいう「法定相続人」とは、相続税法上のものである。なお、被相続人に養子が
いる場合の「法定相続人の数」に算入する養子の数は、次の区分に応じて人数が限定
されている。
①被相続人に実子がいる場合1人
②被相続人に実子がいない場合2人
ただし、養子が配偶者の実子(連れ子)である場合、民法817条の2第1項に規定する特
別養子縁組による養子である場合又は実子等の代襲相続人である場合には、これらの
者は実施とみなして①又は②の数を計算する。


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相続税講義録その13

2012-01-23 12:24:20 | Weblog
第4節相続税の非課税財産
1.非課税財産とは
 相続税法では、相続又は遺贈により取得した財産(みなし財産を含む。) であっても公益性や社会政策的見地あるいは国民感情の面から、相続税の課税対象から除いているものがある。これを相続税の非課税財産という。
2.非課税財産の種類
①皇室経済法第7条の規定により皇位とともに皇嗣がうけたもの
②墓所、霊廟及び祭具並びにこれらに準ずるもの
③一定の公益事業を行う者が取得した公益事業用財産
  (図) 非課税財産
④条例による心身障害者共済制度に基づく給付金の受給権
⑤相続人が取得した生命保険金などのうち一定の金額
⑥相続人が取得した退職手当金などのうち一定の金額
⑦相続税の申告書の提出期限までに国、地方公共団体、特定の公益法人、認定特定非営利活動法人又は特定地域雇用等促進法人に贈与(寄付)した財産
 なお、香典は、被相続人に帰属しないため相続税の課税対象とはならない。

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相続税講義録その12

2012-01-22 15:57:53 | Weblog
(2)退職手当金など
  被相続人の死亡により被相続人に支給されるべきであった退職手当金、功労金その他これらに準ずる給与(弔慰金、花輪代、葬儀料などのうち実質的に退職手当金の性質を有するものが含まれる。) で、被相続人の死亡後3年以内に支給が確定したものを相続人又は相続人以外の者が取得した場合は、その退職手当金などは、相続又は遺贈により取得したものとみなされる。また、支給されるものが、金銭であると、物又は権利であるとを問わない。被相続人の死亡により被相続人に支給されるべきであった退職手当金などは、相続人又は相続人以外の者が支給者から直接に支給を受けるものであって、本来の相続財産を構成しない。しかし、被相続人に支給されるべきであった退職手当金などの実質は、被相続人が死亡したために相続人などに支給されたものであるから、本来の相続財産と異ならないので、相続税法は退職手当金などを「みなし相続財産」として、相続税を課税することとしている。
   (図) 退職金・功労金のうち、相続財産とみなされる部分の範囲

 退職金・功労金 ⇒死亡後3年以内に支給額が確定したもの ⇒みなし相続財産
           
           ※上記以外のもの(死亡後3年以内に支給が確定しないもの)
支給額が確定した時の一時所得

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