納税者に寄り添う税の専門家 税理士法人 元(GEN)のブログ

会計・税金・経営情報について「わかりやすい」を合言葉に現場の声を発信しています。

マンション節税防止 算定法見直し、評価額4割から6割に

2023-06-28 09:52:45 | Weblog
ようやく改正ですね。

マンション節税防止 算定法見直し、評価額4割から6割に

国税庁が「マンション節税」や「タワマン節税」の防止に向け、

相続税の算定ルールを見直す方針を固めた。

実勢価格を反映する新たな計算式を導入。

マンションの評価額と実勢価格との乖離(かいり)が

約1.67倍以上の場合に評価額が上がり、

高層階ほど税額が増える見通しだ。

年間10万人以上の相続財産が課税対象となる中、

税負担の公平化を図る狙いがある。

(日経新聞)


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相続税 贈与税の改正 ④

2023-06-27 09:18:18 | Weblog
相続時精算課税のデメリットについて

1. 暦年課税に戻すことができない
相続時精算課税を選択した場合、暦年課税に戻すことができません。


2. 小規模宅地等の特例の適用が受けられない
相続時精算課税で贈与により取得した宅地等について、
相続時に小規模宅地等の特例を適用することができません。


3.受贈者が先に死亡した場合、相続税額が増える可能性がある
相続時精算課税を適用していた受贈者が特定贈与者(※)より先に
死亡した場合は、受贈者の相続時精算課税の適用に伴う
権利義務は、受贈者の相続人(配偶者や子など)に
承継されます。そのため、受贈者の相続人が同じ不動産に対し
短期間に2回の相続税の納付を求められることもあります。
思わぬ負担増もあり得ますので、注意が必要です。
※相続時精算課税において財産を贈与した人のこと


4.贈与財産の価値の下落・費消のリスクがある
相続時精算課税を利用して多額の贈与を行うと、
将来の相続時にその贈与財産の価値が低下した場合や
費消されて残っていない場合でも、贈与時の価格で
相続税か課税されます。

5. 受像財産は物納に使えない
不動産や有価証券などの財産の生前贈与を受けて
相続時精算課税を適用している場合、その財産は
相続税の物納に充てることができません。


6. 相続時精算課税で贈与を受ける孫には相続税の2割加算がある
孫が相続時精算課税を選択して祖父母から贈与を
受けた場合は、祖父母の財産の相続または
遺贈がなくとも、相続時精算課税の適用を受けた
財産について、相続税の納税義務が生じます。
さらにこの場合、孫(代襲相続人である孫を除く)の
納付すべき相続税額は2割が加算されます。


〇ご相談は下記までお電話ください。
税理士法人 元(GEN)
TEL:03-5997-0330
担当:税理士 田村直樹

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物件の代金総額は評価額の土地および建物の価額比により区分する方法によるべき

2023-06-22 10:03:59 | Weblog

悩ましい土地と建物の按分ですね。

ご参考に。

【非公開裁決】物件の代金総額は評価額の土地および建物の価額比により区分する方法によるべき、契約で合意した金額との主張退ける


請求人の所得税等の確定申告について、原処分庁が、国外で土地と一括取得された賃貸用建物の取得時の価格が不明であるから、

土地および建物(本件物件)の代金総額を固定資産税評価額比で区分してその購入の代価を計算し取得価額を算定すべきであり、

不動産所得の金額の計算上減価償却費の額が過大であるなどとして更正処分等をしたのに対し、

請求人が、売買契約(本件売買契約)で合意した建物の価格をもってその購入の代価とし取得価額を算定すべきであるとして、

原処分の一部の取消しを求めた事案で、国税不服審判所は、請求人の主張を棄却する判断をした(令和4年2月4日付、非公開裁決事例)。

【事実】
(基礎事実)

イ 請求人の取得した不動産について

請求人は、平成27年10月6日、アメリカ合衆国(以下「米国」)〇〇に所在する土地および建物(5年(1993年)1月1日建築の木造建物。

以下、当該土地と併せて「本件物件」)を代金総額438,000.00アメリカ合衆国ドル(以下「米国ドル」)で購入した(以下、請求人が本件物件を取得した契約を「本件売買契約」)。

なお、請求人は、27年10月から上記建物を賃貸の用に供していた。

ロ 本件物件の購入代金に充てるための借入について

請求人は、27年9月頃、〇〇から、本件物件の購入代金の一部に充てるため、

期間を30年とし、総額262,800.00米国ドルを借り入れた(以下、当該借入れに係る借入金を「本件借入金」)。

なお、27年、28年、29年および30年の各年(以下「本件各年」)中の本件借入金に係る利子の額は、

27年が40万9057円、28年が120万4991円、29年が115万1843円、30年が110万5497円である。

そのうち、27年中の本件借入金に係る利子の額には、

請求人が本件借入金を借り入れた日から本件物件を貸付けの用に供するまでの期間に対応する部分の金額(788.40米国ドル)が含まれている。

ハ 本件物件の〇〇の固定資産税評価額について

請求人が本件物件を取得した27年(2015年)における本件物件の〇〇の固定資産税評価額(以下「本件評価額」)は、

前回査定価額の土地が27,634米国ドル、建物が203,185米国ドル、現在査定価額の土地が208,600米国ドル、

建物が229,400米国ドル、評価差額の土地が180,966米国ドル、建物が26,215米国ドルである。

(審査請求に至る経緯)

イ 請求人は、27年分、28年分、29年分および30年分(以下、これらを併せて「本件各年分」)の所得税および復興特別所得税(以下「所得税等」)について、

青色の確定申告書に記載して、いずれも法定申告期限までに申告した。

ロ 請求人は、内国税の適正な課税の確保を図るための国外送金等に係る調書の提出等に関する法律(以下「国送法」)の規定に基づき、

本件各年の12月31日分国外財産調書を、いずれも提出期限内にそれぞれ提出した。

なお、当該各国外財産調書には、本年各年の12月31日現在の国外財産として、本件物件が記載されている。

ハ 原処分庁は、原処分庁所属の調査担当職員の調査に基づき、令和2年6月29日付で、本件各年分の所得税等について、

各更正処分(以下、当該各更正処分を「本件各更正処分」)および27年、28年および29年分の所得税等に係る過少申告加算税の各賦課決定処分(以下「本件各賦課決定処分」)をした。

ニ 請求人は、2年9月25日、本件各更正処分および本件各賦課決定処分の一部を不服として、

再調査の請求をしたところ、再調査審理庁は、3年1月14日付で、同請求を棄却する旨の再調査決定をし、

その決定書謄本を請求人に対し同月20日に送達した。

ホ 請求人は、3年2月17日、再調査決定を経た後の本件各更正処分および本件各賦課決定処分の一部に不服があるとして、審査請求をした。

【争点】

本件物件の建物の取得価額をどのように算定すべきか。

【請求人の主張について】

イ 本件売買契約においては、不動産仲介業者から同契約において定められた代金総額の88%が建物の価格であるとの説明を受け、

それに合意して購入したのであるから、本件物件の建物の購入の代価は、本件売買契約において定められた代金総額の88%で合意したことは明らかである。

したがって、本件物件の建物の取得価額は、当該建物の購入の代価を本件売買契約において定められた代金総額の88%の金額として算定すべきである。

ロ 仮に、本件売買契約で建物の価格について合意していないとしても、

本件評価額(現在査定価額)は本件物件を取得した年の翌年(28年)の1月1日付の固定資産税評価額であるから、

本件評価額(現在査定価額)によって本件物件の土地および建物の購入の代価を区分して

建物の取得価額を算定することが合理的な方法であるとはいえない。

【審判所の判断】
(認定事実)

イ 本件売買契約に関して作成された27年7月22日付の「〇〇」と題する書面および同年10月7日付の「BUYER/BORROWER STATEMENT Final」と題する書面には、

本件物件の代金総額の記載はあるものの、本件物件の建物の代金額や本件物件の代金総額のうち当該建物の代金額が占める割合についての記載はない。

ロ 請求人は、31年4月25日、本件売買契約の仲介業者の従業員から、土地建物比率は売買に関する税金に一切関係がなく、本件売買契約に係る書面において土地建物比率に関する文言はなかった旨の電子メールを受信した。

ハ 〇〇の固定資産評価制度について

A 〇〇の固定資産評価制度では、〇〇の査定官は、土地および建物などの固定資産についてその所有者が変更された場合、

当該所有者が変更された日における完全現金価値で当該固定資産を再評価することとされている。

上記の完全現金価値とは、その固定資産が公開市場で売却のために公開された場合、

売主が購入者を見つけるために合理的な時間を掛けて、その固定資産がどのような用途に使用されるかを知っている当事者間で、

双方が利益を最大化しようとし、一方の当事者が他方の当事者の急迫の事情を利用できる立場にない場合に、

市場において現金または現金等価物で行われるその価格をいうものとされている。

B 〇〇の査定官は、上記Aの完全現金価値を見積もる際には、

比較販売アプローチ、交換または再生産原価法、収益法などの固定資産に関する評価手法のうち、

その査定対象となる固定資産に適していると思われる一つ以上を考慮しなければならないこととされている。

なお、上記の比較販売アプローチとは、当該固定資産およびその類似不動産が最近販売された価格を用いる手法であり、

交換または再生産原価法とは、再生産可能な固定資産を同様の新しい固定資産に交換するための費用、

または現在の場所で現在の価格水準で固定資産を再生産するための費用から、物理的な劣化と陳腐化の両方を含む減価償却費によって価値が減少した範囲を差し引く手法であり、

収益法とは、固定資産がもたらすと予想される収益を受け取る権利に対して、投資家が支払う金額とその収入に伴うリスクを用いる手法であるとされている。

ニ 請求人が当審判所に提出した本件物件に関する平成27年10月20日付の「Property Detail」と題する書面には、「Tax Information」の「% Improved」(建物比率)として、88%と記載されている。

(検討)

上記(認定事実)のイのとおり、本件売買契約に関して作成された書面のいずれにおいても、

本件物件の代金総額しか記載がなく、本件物件の建物の代金額や本件物件の代金総額のうち当該建物の代金額が占める割合の記載はないことに加え、

同ロのとおり、本件売買契約の仲介業者においても、本件売買契約に係る書面において土地建物比率に関する文言はなかった旨述べていることからすれば、

本件売買契約において本件物件の建物の価格はその合意事項とされなかったとみることができる。

そして、同ニのとおり、請求人が提出した27年10月20日付の「Property Detail」と題する書面についても、

本件売買契約が成立した日である同月6日より後に作成された書面であって、請求人が当該書面を見て本件売買契約を締結したものではないといえる。

また、同ロのとおり、土地建物比率は売買に関する税金に一切関係がないというのであって、

減価償却の計算のために関心がある買主とは異なり本件売主にとって特に重要な要素ではないと考えられるから、

請求人が本件物件の代金総額に占める建物の代金額の割合が88%であると認識していたのと同様の前提で、

本件売主が本件物件の譲渡の意思表示をしたとみることもできない。

そもそも、上記(認定事実)のハのとおり、〇〇の固定資産評価制度では、

その固定資産について所有者が変更された場合、〇〇の査定官がその変更された時点での完全現金価値で当該固定資産を再評価することになっているのであって、

このことは〇〇の不動産を扱う不動産仲介業者を含め、当然に認識されるべきものである。

したがって、請求人が本件売買契約以前の時点で本件物件の建物の価格が本件物件の代金総額の88%であるとの認識があったとしても、

〇〇の固定資産評価制度の下で、請求人が本件物件を取得した時点においても同様の評価がされるとは限らない。

そうすると、請求人が本件物件を取得した時点の本件物件の建物の価格が、特段の明示の合意もないのに、

本件物件の代金総額の88%であるとして請求人および本件売主の双方が合意したとは考え難い。

以上によれば、請求人は、本件売買契約において、本件売主との間で本件物件のうち建物の価格を合意していないと認められ、

この点に関する請求人の主張(【請求人の主張について】欄のイの主張)は採用できない。

(法令解釈)

所得税法施行令第126条第1項第1号は、購入した減価償却資産の取得価額は、

当該資産の購入の代価(引取運賃、荷役費、運送保険料、購入手数料、関税その他当該資産の購入のために要した費用がある場合には、

その費用の額を加算した金額)および当該資産を業務の用に供するために直接要した費用の額の合計額とする旨規定している。

そして、土地および建物を一括して購入した場合の購入の代価について、

その土地および建物の個別の購入の代価が明らかでない場合には、租税負担の公平ないし実質主義の観点から、

租税法の基本原則に合致する合理的な方法によってその土地および建物の購入の代価を区分する必要があるものと解される。

(当てはめ)

本件物件については、上記(認定事実)および(検討)のとおり、請求人が土地および建物を一括して購入し取得しているものの、

本件売買契約ではそれらの個別の購入の代価が明らかでないことから、

上記(法令解釈)のとおり、合理的な方法によって本件物件の土地および建物の購入の代価を区分する必要がある。

この点、上記(認定事実)のハのAのとおり、〇〇の査定官は、土地および建物などの固定資産についてその所有者が変更された場合、

当該所有者が変更された日における完全現金価値によって当該固定資産を再評価するとされ、

この場合の完全現金価値とは、公開市場における合理的な当事者間において形成される市場価格であるというのであるから、

その再評価されるべき価額は新たな所有者がその固定資産を取得した時点での公正な市場価格を反映したものであるということができる。

また、同Bのとおり、〇〇の査定官が完全現金価値を評価するに当たっては、

不動産鑑定評価の基本的な手法である比較販売アプローチ(比較方式)、

交換または再生産原価法(原価方式)および収益法(収益方式)を含む複数の手法から、

その査定対象となる固定資産に適していると思われる手法が考慮されるとされているのであるから、

その評価される価額は、合理的な評価基準によって評価されたものであるといえる。そうすると、

〇〇の定める方法によって評価された固定資産税評価額は、土地および建物のいずれについても、同一の公的機関が、同一時期に、合理的な評価基準によってその取得時点での市場価値を評価したものであるといえる。

そして、請求人が課税査定を受けた本件評価額(現在査定価額)は、上記の合理的な方法を定める〇〇の査定官によって評価されたものである以上、

特段の事情のない限り、請求人が本件物件を取得した時点における合理的な評価額であると推認するのが相当であるところ、

本件評価額(現在査定価額)について合理的な評価額ではないことをうかがわせる上記特段の事情は認められない。

したがって、本件評価額(現在査定価額)は合理的なものであると認められるから、

本件物件のうち建物の購入の代価を算定するには、

本件物件の代金総額を本件評価額(現在査定価額)の土地および建物の価額比により区分する方法によるのが合理的である。

(税のしるべ電子版)

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相続税 贈与税の改正③

2023-06-19 09:12:19 | Weblog

相続時精算課税のメリットについて

1. 贈与時に基礎控除と特別控除が利用でき、
贈与税は定率で課税される
贈与時に基礎控除毎年110万円と生涯の特別控除
2,500万円が利用できるうえ、
税率は還暦課税と異なり、定率20%です。


2.相続前に財産の帰属者を決められる
例えば、「自宅は長男に、アパートは長女に確実に残したい」
などの希望を生前に実現することが可能です。


3. 贈与することで収益の移転を図ることができる
賃貸アパート・マンションや有価証券そのものは
相続税の課税対象となりますが、
家賃収入や株式配当などにより増えた預貯金は
受贈者に蓄積され、相続税の課税対象になりません。
贈与の時期が早いほど効果があるといえます。


4. 値上がりが予想される財産を有利に贈与することができる
相続時精算課税の適用財産は、相続時ではなく贈与時の
時価で計算されます。
贈与時よりも相続時の時価が高くなることが
予想されるような財産は、相続時精算課税で贈与すると
将来の相続税の負担が減ります。

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査察の告発件数や脱税額が大幅に増加

2023-06-15 10:48:27 | Weblog

ほとんどの納税者には関係ないですが

ご参考に。

査察の告発件数や脱税額が大幅に増加、4年度の告発率は74.1%の高水準

国税庁は6月14日、令和4年度の査察の概要を公表した。

4年度に査察に着手した件数は、前年度より29件多い145件で、

処理(検察庁への告発の可否を判断)した件数は、前年度より36件多い139件となっている。

脱税総額は、過去2番目に少なかった前年度より25億4800万円増の127億6000万円だった。

告発件数は、前年度より28件多い103件で、

告発分の脱税額は、前年度より39億4500万円増の100億1900万円と増加した。

処理件数に占める告発件数の割合である告発率は74.1%と、

平成18年度以来の高水準となった。

新型コロナウイルスの影響を強く受けた3年度と比較して、

告発件数および告発分の脱税額ともに大幅に増加した。

同庁は特に、消費税事案、無申告事案、国際事案のほか、

近年、時流に即した社会的波及効果が高いと見込まれる事案を重点事案と位置づけ、

積極的に調査を実施している。

(税のしるべ電子版)

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相続 贈与税の改正 ②

2023-06-12 09:07:59 | Weblog

令和5年における暦年課税と相続時精算課税の改正について


【 暦年課税の改正ポイント 】
〇贈与を受けた財産を相続財産に加算する期間を、
相続開始前3年間から7年間に延長
(令和6年1月1日以降の贈与から7年分の加算対象となる。)
〇延長した4年間に受けた贈与のうち、
総額100万円までは相続財産への加算なし。
※上記の改正は、令和6年1月1日以降に受けた贈与に適用

【 相続時精算課税の改正ポイント 】
〇現行の暦年課税の基礎控除とは別途、110万円の基礎控除が
創設された(控除した額は将来、相続税の課税対象にならない)
〇相続時精算課税で贈与を受けた土地・建物が災害により
一定以上の被害を受けた場合に
相続時にその課税価格を再計算できる

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旧家屋は生活の拠点として利用していたとはいえず、特例の適用は不可

2023-06-07 10:31:34 | Weblog
非公開裁決の紹介です。

旧家屋は生活の拠点として利用していたとはいえず、特例の適用は不可


 請求人が、譲渡した家屋等(本件旧家屋)に係る譲渡所得について、原処分庁などの調査を受けて本件旧家屋の譲渡は居住用財産の譲渡に該当しないとして所得税等の修正申告をしたものの、後に、本件譲渡について特例が適用できるとして更正の請求をしたが、原処分庁が更正をすべき理由がないと通知したため争われていた事案で、国税不服審判所は、本件旧家屋を真に居住の意思をもって客観的にもある程度の期間継続して生活の拠点として利用していたとは認められず、本件特例に規定する「その居住の用に供している家屋」に該当するとは認められないなどして、請求人の主張を棄却した(令和4年5月10日付、非公開裁決事例)。

【事実】
(基礎事実)

 イ 請求人は、〇〇に、次の各不動産を相続により取得した。

(イ)〇〇の土地(ただし、平成30年7月11日の分筆後は、順号1、2、〇〇および〇〇の各土地。以下、分筆前の〇〇の土地を「旧〇〇の土地」)

(ロ)旧〇〇の土地に隣接する〇〇の土地(ただし、30年7月11日の分筆後は、順号3、4および〇〇の各土地。以下、分筆前の〇〇の土地を「旧〇〇の土地」)

(ハ)旧〇〇の土地上に所在する家屋(順号5。以下「本件旧家屋」)

 ロ 請求人は、〇〇以前から、請求人の母と共に本件旧家屋に居住していたが、請求人の配偶者である〇〇(以下「本件配偶者」)との婚姻を機に、11年8月27日付で、本件旧家屋から他所へ転居した。

 ハ 請求人は、18年11月8日に、本件旧家屋とは別に、旧〇〇の土地(30年7月11日の分筆後の〇〇の土地)および旧〇〇の土地(同日の分筆後の〇〇の土地)上に家屋(家屋番号〇〇。以下「本件新家屋」といい、本件旧家屋と併せて「本件各家屋」)を新築し、本件配偶者および子3人(以下、本件配偶者および子3人を併せて「本件家族」)と共に、18年11月13日付で、本件新家屋での居住を開始した。

 なお、請求人は、18年分の所得税の確定申告において、本件新家屋を住宅の用に供する家屋として、措置法(平成19年法律第6号による改正前のもの)第41条《住宅借入金等を有する場合の所得税額の特別控除》第1項に規定する所得税額の特別控除(以下「住宅ローン控除」)を適用し、26年分まで本件新家屋について住宅ローン控除の適用を受けていた。

 ニ 請求人の母は、請求人が本件旧家屋から転居した後も本件旧家屋に居住していたが、〇〇に死亡した。

 ホ 上記ハの子3人のうち1人は、婚姻を機に、30年4月26日付で、本件新家屋から他所へ転居した。

 請求人は、30年6月26日に、〇〇との間で、旧〇〇の土地および旧〇〇の土地の分筆を前提に、本件旧家屋を含む順号1ないし5の各不動産(ただし、順号2および4の土地についてはその持分の2分の1。以下「本件各不動産」)に係る不動産売買契約を締結した。請求人は、30年7月11日に、旧〇〇の土地および旧〇〇の土地を上記イの(イ)および(ロ)のとおりそれぞれ分筆した上で、同月31日に、当該売買契約に基づいて本件各不動産を〇〇に譲渡した(以下「本件譲渡」)。

なお、順号1ないし4の各土地は、本件旧家屋の敷地または通路等として利用されていた。

(審査請求に至る経緯)

 イ 請求人は、本件譲渡について長期譲渡所得の課税の特例(本件特例)を適用して30年分の所得税および復興特別所得税(以下「所得税等」)の確定申告書を、法定申告期限までに提出した(以下、30年分の所得税等の確定申告を「本件確定申告」)。

 ロ 請求人は、原処分庁所属の調査担当職員(以下「本件調査担当職員」)および統括国税調査官(以下「本件統括国税調査官」といい、本件調査担当職員と併せて「本件調査担当職員ら」)による調査を受け、令和2年4月10日に、本件譲渡について本件特例を適用せず、修正申告欄を記載、修正申告書に、ぼ印を押なつして提出した(以下、30年分の所得税等の修正申告を「本件修正申告」といい、本件修正申告に係る申告書を「本件修正申告書」)。

 ヘ 請求人は、3年1月4日に、本件譲渡について本件特例が適用できるとして、更正の請求(以下「本件更正請求」)をした。

【争点】
 本件旧家屋は、本件特例に規定する「その居住の用に供している家屋」に該当するか否か。

【請求人の主張について】
 請求人は、本件家族との関係を円満にするため、本件新家屋に帰宅し、本件新家屋で食事や入浴をしていたものの、本件旧家屋でも食事を取ることがあった上、本件旧家屋で自己研さんやテレビジョン鑑賞、就寝等をして、生活のほとんどを本件旧家屋で過ごしていた。また、請求人は、本件旧家屋にある神棚や仏壇を毎日拝んでいた。なお、本件旧家屋には、ガスの供給はなかったが、電気と水道は通っており、電化製品も揃っていて、生活可能な状態であった。

 したがって、請求人は、本件旧家屋を主として居住の用に供していたといえるから、本件旧家屋は、本件特例に規定する「その居住の用に供している家屋」に該当する。

【審判所の判断】
(法令解釈)

 本件特例は、個人が居住の用に供している家屋または当該家屋の敷地の用に供されている土地等を譲渡した場合には、これに代わる新たな居住用財産を取得するのが通常であるなど、一般の資産の譲渡に比べて特殊な事情があり、その担税力が弱いことから、居住用財産の譲渡につき3000万円を限度とする特別控除を認め、所得税の負担を軽減して新たな居住用財産の取得を容易にすることを考慮して設けられたものである。

 これらのことからすると、本件特例に規定する「その居住の用に供している家屋」とは、その者が真に居住の意思をもって客観的にもある程度の期間継続して生活の拠点としていた家屋をいうものと解される。そして、譲渡資産がこれに該当するかどうかは、その者および配偶者等の日常生活の状況、その家屋への入居目的、その家屋の構造および設備の状況等を総合的に考慮し、社会通念に照らして判断するのが相当である。

(認定事実)

 イ 請求人および本件家族の状況等について

 本件家族は、上記【事実】の(基礎事実)のハおよびホのとおり、18年に、新築した本件新家屋での居住を開始して以降、30年4月に他所へ転居した子1人を除き、継続して本件新家屋に居住している。

 請求人は、本件家族と共に、18年本件新家屋での居住を開始し、同年から26年まで、本件新家屋について、住宅ローン控除の適用を受けていた。また、請求人は、遅くとも30年7月の本件譲渡の後は、本件配偶者および子2人と共に本件新家屋に居住している。

なお、請求人は、18年以降、本件新家屋に居住する本件家族と生計を一にしている。

 ロ 本件各家屋の電気、水道およびガスの使用量について

 A 電気の使用量

(A)本件旧家屋

 本件旧家屋の26年1月から30年7月までの電気の使用量は、26年から30年までの各年における電気の使用量の月平均は、それぞれ102kWh、100kWh、98kWh、102kWhおよび103kWhであった。

(B)本件新家屋

 本件新家屋の26年1月から元年12月までの電気の使用量は、26年から31年(元年)までの各年における電気の使用量の月平均は、それぞれ1,087kWh、1,143kWh、1,073kWh、1,042kWh、922kWhおよび885kWhであった。

 B 水道の使用量

 本件各家屋で一つの契約となっていたため、それぞれの使用量は不明である。

 C ガスの使用量

(A)本件旧家屋

 本件旧家屋は、プロパンガスの設備を有していたものの、26年3月20日にその供給が中止された。

(B)本件新家屋

 本件新家屋は、給湯、暖房および空調設備等の熱源が全て電気(以下「オール電化」)であり、ガスは使用されていない。

 D 電気の標準的な使用量

 総務省統計局の家計調査結果によれば、全国の2人以上の世帯の平成26年から平成31年(令和元年)までの各年における電気の使用量の月平均は、393kWhないし428kWhである。

 ハ 本件各家屋の構造および設備の状況について

 A 本件旧家屋

 本件旧家屋は、昭和53年9月10日に新築された、1階の床面積が132.87㎡、2階の床面積が46.37㎡の木造瓦ぶきの建物で、応接間のほか、複数の洋室と和室があり、台所、風呂およびトイレを備えていた。

 B 本件新家屋

 本件新家屋は、18年11月8日に新築された、1階の床面積が67.76㎡、2階の床面積が64.45㎡の木造ストレートぶきの建物で、リビングのほか、複数の洋室があり、台所、風呂およびトイレを備えていた。

(当てはめ)

 本件旧家屋が本件特例に規定する「その居住の用に供している家屋」に該当し、本件譲渡について本件特例を適用するためには、上記(法令解釈)のとおり、請求人および本件家族の日常生活の状況、本件各家屋への入居目的、本件各家屋の構造および設備の状況等を総合的に考慮して、請求人が、真に居住の意思をもって、本件譲渡までのある程度の期間継続して、本件旧家屋を生活の拠点としていたと認められることが必要であることから、この点について以下検討する。

 イ 請求人および本件家族の日常生活の状況

 A 一般に都市生活における電気、水道およびガスの利用状況は、利用されている場所での生活状況を反映するものであるところ、上記(認定事実)のロのBのとおり、本件各家屋それぞれの水道の使用量は不明であり、同Cのとおり、本件各家屋においてガスは使用されていない。

 B 唯一比較可能な電気については、上記(認定事実)のロのAの(A)のとおり、26年から本件譲渡まで、本件旧家屋においても一定量の電気の使用は認められるものの、本件旧家屋の平成26年から平成30年までの各年における電気の使用量の月平均は、それぞれ102kWh、100kWh、98kWh、102kWhおよび103kWhであって、使用量にほとんど変化は見られない。また、本件新家屋の電気の使用量についても、上記(認定事実)のロのAの(B)のとおり、26年から平成29年までの各年における月平均は、それぞれ1,087kWh、1,143kWh、1,073kWhおよび1,042kWhであって、使用量に大きな変化は見られない。

 この点、請求人は、上記【事実】の(基礎事実)のハおよび上記(認定事実)のイのとおり、18年に、本件家族と共に本件新家屋での居住を開始し、26年までは、本件新家屋について住宅ローン控除の適用を受けていたところ、住宅ローン控除が、住宅の用に供する家屋であることを適用の前提とする制度であり、請求人も、当審判所に対し、住宅ローン控除の適用が終了した後に、主として本件旧家屋で居住するようになったなどと答述していることからすると、少なくとも26年までは、請求人も、本件家族と共に、本件新家屋を生活の拠点として日常生活を営んでいたと推認され、これを覆すに足る事実は認められない。

 そして、上記のとおり、住宅ローン控除の適用が終了した後に、本件旧家屋の電気の使用量が増加し、本件新家屋の電気の使用量が減少したような事情は認められないこと、26年には本件旧家屋におけるガスの供給が中止されたことからすると、27年以降に、請求人が、日常生活の拠点を本件新家屋から本件旧家屋に移したとは認められない。

 C また、上記(認定事実)のイのとおり、請求人は、遅くとも30年7月の本件譲渡の後は、本件配偶者および子2人と共に本件新家屋に居住しているところ、本件譲渡の前後における本件新家屋の電気の使用量の月平均を比較しても、同ロのAの(B)のとおり、29年が1,042kWh、平成30年が922kWh、平成31年(令和元年)が885kWhとなっており、本件譲渡があった平成30年の電気の使用量の月平均は、前年の電気の使用量の月平均より100kWh以上減少し、平成31年(令和元年)は更に減少していることからすると、これは、上記【事実】の(基礎事実)のホのとおり、30年4月に子1人が他所へ転居したことに起因するものと考えられ、本件譲渡によって、請求人が、日常生活の拠点を本件旧家屋から本件新家屋に移した事情はうかがえない。

 D さらに、上記(認定事実)のロのAの(A)のとおり、本件旧家屋の26年1月から30年7月までの電気の使用量は、最も多い月(27年8月)でも133kWhであり、1年のうちで電気の使用量が多い時期にもかかわらず、26年から平成30年までの全国の2人以上の世帯の電気の使用量の月平均の3割程度と少ない。一方で、上記(認定事実)のロのAの(B)のとおり、本件新家屋の26年1月から元年12月までの電気の使用量は、最も少ない月(30年6月)でも521kWhであり、1年のうちで電気の使用量が少ない時期にもかかわらず、26年から令和元年までの全国の2人以上の世帯の電気の使用量の月平均より2割以上多い。そのうえ、本件旧家屋の26年から30年までの電気の使用量の月平均は、本件新家屋の当該期間の月平均の僅か1割程度にとどまるものであり、このような本件各家屋の電気の使用量の水準は、本件新家屋がオール電化であることなどを考慮しても、請求人が、26年以降、本件旧家屋ではなく本件新家屋で、本件家族と共に日常生活を営んでいたことをうかがわせるものであるといえる。

 E また、請求人が、当審判所に対し、本件譲渡までの日常生活の状況について、基本的に本件新家屋で身支度をして出勤し、本件新家屋で入浴や本件家族との食事をしていたなどと答述していることからしても、請求人と本件家族との間に、共同生活の実態があったことがうかがわれるから、請求人のみ、本件旧家屋を日常生活の拠点としていたとは考えにくい。

 ロ 本件各家屋への入居目的

 本件旧家屋は、請求人のいわゆる実家であるところ、請求人は、上記【事実】の(基礎事実)のロのとおり、本件配偶者との婚姻を機に本件旧家屋から転居し、その後、同ハのとおり、本件家族と生活をするために本件新家屋を新築して入居している。そして、上記イのEのとおり、請求人は、当審判所に対し、基本的に本件新家屋で身支度をして出勤し、本件新家屋で入浴や本件家族との食事をしていたなどと、本件譲渡までの生活状況について答述している上、上記(認定事実)のイのとおり、遅くとも本件譲渡の後は、本件配偶者および子2人と共に本件新家屋で生活している。これらのことからすると、請求人が、母の死亡後に本件旧家屋を使用することはあっても、上記(認定事実)のイのとおり、請求人と生計を一にする本件家族が生活する本件新家屋があるにもかかわらず、あえて同じ敷地に所在していた本件旧家屋を生活の拠点としてこれに入居する動機、あるいは入居しなければならない事情があったとは認められない。

 ハ 本件各家屋の構造および設備の状況

 本件旧家屋は、上記(認定事実)のハのAのとおり、台所および風呂を備えていたものの、同ロのCの(A)のとおり、26年3月にガスの供給が中止されており、台所の設備の一部や風呂の設備が利用できない状態であったと認められるから、本件旧家屋の構造および設備は、26年3月以降は日常生活を送るのに十分であったとは認められない。

 他方、本件新家屋は、上記(認定事実)のロのCの(B)および同ハの(B)のとおり、オール電化であり、台所および風呂を備え、請求人および本件家族が居住するのに問題のない広さと間取りを有していたことからすると、日常生活を送るのに十分な構造および設備があったと認められる。

 ニ 小括

 以上のとおり、請求人および本件家族の日常生活の状況、本件各家屋への入居目的、本件各家屋の構造および設備の状況等を総合的に考慮し、社会通念に従って判断すると、26年から本件譲渡までの間、請求人が、本件旧家屋を、真に居住の意思をもって客観的にもある程度の期間継続して生活の拠点として利用していたとは認められない。

 したがって、本件旧家屋は、本件特例に規定する「その居住の用に供している家屋」に該当するとは認められないから、本件譲渡について本件特例を適用することはできない。

(税のしるべ)

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相続税 贈与税の改正 ①

2023-06-05 11:15:12 | Weblog

相続税の2つの制度が変わります。

贈与税には2つの制度があります。

1つは「暦年課税制度」。
1年間に受けた贈与額が110万円を超えると
贈与税がかかります。
贈与者が亡くなると、相続開始前3年間の
贈与額は相続税の計算対象に含めます。

もう1つは「相続時精算課税制度」。
生前贈与への課税を相続時まで繰り延べる制度で、
一定要件のもと選択できます。
一旦選択すると暦年課税制度に戻すことはできません。
選択後の贈与額はすべて相続財産に加算されます。

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