Taking The Long Way Home / The Bud Shank Big Band
ビッグバンド育ちのミュージシャンは、いつかは自分のオーケストラを持つのが夢かもしれない。ペッパーアダムスは自分でも譜面も書いたが、自分のオーケストラを持つことはできなかった。やっと最後のレコーディングで、ビッグバンドをバックにしたアルバムを残せたのがせめてもの救いであった。
ソリストは日頃のプレーでもビッグバンドをバックに演奏する機会を得ることは簡単ではない。努力すれば多くのメンバーを集め、リハーサルを重ねて、演奏の質を上げていくリハーサルオーケストラを持つことは可能でも、日常的にそれを運営することは洋の東西を問わず、経済的な面で難しいのが現実だ。
その昔、ドンエリスがビッグバンドを立ち上げた時は、他に仕事を持っているミュージシャンを集めたとか。
スタンケントンの出身で、西海岸を中心に活躍してきたバドシャンクはパーカー派の流れを汲む名アルト奏者だ。50年代から活躍し、一時スタジオワークが中心であったが、その後ローリンドアルメイダなどと共にLA4に加わって活動した。さらに、ショーティーロジャースとともにジャズの第一線に復帰し、ライブもレコーディングも最後までジャズに拘った一人だ。
しかし、そのプレーは。スモールコンボでの演奏が中心であった。ビッグバンド育ちなので、いつかは自分のビッグバンドでと思うのは、彼も他のミュージシャンと同じであった。しかし、彼の場合は、自分で作曲はするが、オーケストラのアレンジをやらなかったので、自分の作品をやってみたいという想いは、他のアレンジをメインにしているミュージシャンよりは少なかったようだが。
そのようなバドシャンクに、ビッグバンドのリーダーになるチャンスが訪れた。
2005年ロスアンジェルスジャズインスティテュートが主催するスタンケントンネオフォニックオーケストラの40周年記念のコンサートに出演する機会が得られた。
この第一回のオリジナルのケントンのコンサートには、シャンクはメインソリストとして出演していたが、自らビッグバンドのリーダーとして参加するのは今回が初めての経験であった。早速譜面の用意が始まった。
約10年前、シャンクはフランクフルトのラジオ局からの依頼があってメンバーを集めたことがあったが、その時、アレンジをマイクバロン、ボブクーパー、マニーアルバムなどに依頼しそのスコアがあった。いつもコンボでやっている曲のアレンジをビッグバンド用に手直しもした。そして、75歳の誕生日を迎えた2001年、それを祝って作られたビッグバンドアレンジで、2回だけ演奏された曲もあった。
そして、このコンサートをジャズメディアレーベルのオーナー、グラハムガーターがライブ録音をすることになった。レコーディングとなると、準備には普通以上に力を入れざるを得ない。
バドシャンクがビッグバンドと向き合う基本はやはりスイングすること。シャンク流のノリへの拘りもあったようだ。ロスでいつも一緒にプレーしているメンバーを中心に本番に先立って入念にリハーサルが繰り返され、譜面への手直しも行われていった。いつもクインテットで演奏している曲のアレンジも完成した。ところがいつも相手を務めているピートクリストリーブが参加できなくなって相手を替えなければならなくなった。全編、テナーとの掛け合いが売りだけに呼吸合わせも大事だった。
そして、本番を迎える。会場はロスのホテルが会場。
全曲、バドシャンクがフィーチャーされている。ソリスト冥利に尽きるコンサートがスタートする。
フルートも得意なシャンクであるが、今回はアルト一本。自らMCを務め、順調にスタートする。シャンクが軽くメロディーを吹いて始まると、続いてオーケストラが炸裂する。如何にもウェストコーストのビッグバンドといった感じのスマートな演奏だ。
エバンスのワルツフォーデビーのビッグバンド版というのも珍しい。ここではボブクーパーのアレンジだが、シャンク自身は1996年にエバンスの曲を集めたアルバムでも演奏している。シャンクはよく演奏する曲だそうだ。
Lime Awayはライムハウスブルースをベースにしたスインギーな曲。ドックセベリンセンのオーケストラに提供したアレンジに手を加えたが、ここではトランペットのカールサンダースのソロが先行する。
スインギーな曲が続くが、最後の20分近くの大作Taking The Long Way Homeはがらりと雰囲気が変る。アレンジャーのボブフローレンスも駆けつけてくれて、自らピアノを担当した。
この曲が終わり、最後にメンバー紹介があってコンサートは幕を閉じるが、シャンクの80歳にして初めて経験したビッグバンドのリーダー&メインソリストの大役を終えた嬉しそうな顔が目に浮かぶ。
1. Rosebud
2. Waltz for Debby
3. Greasiness Is Happening
4. Night and Day
5. The Night Has a Thousand Eyes
6. The Starduster
7. Limes Away
8. Taking the Long Way Home
The Bud Shank Big Band
Bud Shank (as)
Ron Stout (tp)
Dennis Farias (tp)
Carl Saunders (tp)
Roger Ingram (tp)
Mike Barone (tb.arr)
Andy Martin (tb)
Craig Gosnell (tb)
Charlie Morillas (tb)
Doug Webb (ts)
Keith Bishop (as)
Brian Williams (ts)
Lanny Morgan(as)
Jack Nimitz (bs)
Bob Florence (p,arr)
Christian Jacob (p)
Joel Hamilton (b)
Kevin Kanner (ds)
Produced by Graham Carter
Tim Pinch : Engineer
Manny Albam Arranger
Bob Cooper Arranger
ビッグバンド育ちのミュージシャンは、いつかは自分のオーケストラを持つのが夢かもしれない。ペッパーアダムスは自分でも譜面も書いたが、自分のオーケストラを持つことはできなかった。やっと最後のレコーディングで、ビッグバンドをバックにしたアルバムを残せたのがせめてもの救いであった。
ソリストは日頃のプレーでもビッグバンドをバックに演奏する機会を得ることは簡単ではない。努力すれば多くのメンバーを集め、リハーサルを重ねて、演奏の質を上げていくリハーサルオーケストラを持つことは可能でも、日常的にそれを運営することは洋の東西を問わず、経済的な面で難しいのが現実だ。
その昔、ドンエリスがビッグバンドを立ち上げた時は、他に仕事を持っているミュージシャンを集めたとか。
スタンケントンの出身で、西海岸を中心に活躍してきたバドシャンクはパーカー派の流れを汲む名アルト奏者だ。50年代から活躍し、一時スタジオワークが中心であったが、その後ローリンドアルメイダなどと共にLA4に加わって活動した。さらに、ショーティーロジャースとともにジャズの第一線に復帰し、ライブもレコーディングも最後までジャズに拘った一人だ。
しかし、そのプレーは。スモールコンボでの演奏が中心であった。ビッグバンド育ちなので、いつかは自分のビッグバンドでと思うのは、彼も他のミュージシャンと同じであった。しかし、彼の場合は、自分で作曲はするが、オーケストラのアレンジをやらなかったので、自分の作品をやってみたいという想いは、他のアレンジをメインにしているミュージシャンよりは少なかったようだが。
そのようなバドシャンクに、ビッグバンドのリーダーになるチャンスが訪れた。
2005年ロスアンジェルスジャズインスティテュートが主催するスタンケントンネオフォニックオーケストラの40周年記念のコンサートに出演する機会が得られた。
この第一回のオリジナルのケントンのコンサートには、シャンクはメインソリストとして出演していたが、自らビッグバンドのリーダーとして参加するのは今回が初めての経験であった。早速譜面の用意が始まった。
約10年前、シャンクはフランクフルトのラジオ局からの依頼があってメンバーを集めたことがあったが、その時、アレンジをマイクバロン、ボブクーパー、マニーアルバムなどに依頼しそのスコアがあった。いつもコンボでやっている曲のアレンジをビッグバンド用に手直しもした。そして、75歳の誕生日を迎えた2001年、それを祝って作られたビッグバンドアレンジで、2回だけ演奏された曲もあった。
そして、このコンサートをジャズメディアレーベルのオーナー、グラハムガーターがライブ録音をすることになった。レコーディングとなると、準備には普通以上に力を入れざるを得ない。
バドシャンクがビッグバンドと向き合う基本はやはりスイングすること。シャンク流のノリへの拘りもあったようだ。ロスでいつも一緒にプレーしているメンバーを中心に本番に先立って入念にリハーサルが繰り返され、譜面への手直しも行われていった。いつもクインテットで演奏している曲のアレンジも完成した。ところがいつも相手を務めているピートクリストリーブが参加できなくなって相手を替えなければならなくなった。全編、テナーとの掛け合いが売りだけに呼吸合わせも大事だった。
そして、本番を迎える。会場はロスのホテルが会場。
全曲、バドシャンクがフィーチャーされている。ソリスト冥利に尽きるコンサートがスタートする。
フルートも得意なシャンクであるが、今回はアルト一本。自らMCを務め、順調にスタートする。シャンクが軽くメロディーを吹いて始まると、続いてオーケストラが炸裂する。如何にもウェストコーストのビッグバンドといった感じのスマートな演奏だ。
エバンスのワルツフォーデビーのビッグバンド版というのも珍しい。ここではボブクーパーのアレンジだが、シャンク自身は1996年にエバンスの曲を集めたアルバムでも演奏している。シャンクはよく演奏する曲だそうだ。
Lime Awayはライムハウスブルースをベースにしたスインギーな曲。ドックセベリンセンのオーケストラに提供したアレンジに手を加えたが、ここではトランペットのカールサンダースのソロが先行する。
スインギーな曲が続くが、最後の20分近くの大作Taking The Long Way Homeはがらりと雰囲気が変る。アレンジャーのボブフローレンスも駆けつけてくれて、自らピアノを担当した。
この曲が終わり、最後にメンバー紹介があってコンサートは幕を閉じるが、シャンクの80歳にして初めて経験したビッグバンドのリーダー&メインソリストの大役を終えた嬉しそうな顔が目に浮かぶ。
1. Rosebud
2. Waltz for Debby
3. Greasiness Is Happening
4. Night and Day
5. The Night Has a Thousand Eyes
6. The Starduster
7. Limes Away
8. Taking the Long Way Home
The Bud Shank Big Band
Bud Shank (as)
Ron Stout (tp)
Dennis Farias (tp)
Carl Saunders (tp)
Roger Ingram (tp)
Mike Barone (tb.arr)
Andy Martin (tb)
Craig Gosnell (tb)
Charlie Morillas (tb)
Doug Webb (ts)
Keith Bishop (as)
Brian Williams (ts)
Lanny Morgan(as)
Jack Nimitz (bs)
Bob Florence (p,arr)
Christian Jacob (p)
Joel Hamilton (b)
Kevin Kanner (ds)
Produced by Graham Carter
Tim Pinch : Engineer
Manny Albam Arranger
Bob Cooper Arranger
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