A DAY IN THE LIFE

好きなゴルフと古いLPやCDの棚卸しをしながらのJAZZの話題を中心に。

色々な分野で「相互乗り入れ」があるがジャズの世界でも・・・

2014-10-14 | CONCORD
Seven Stars / Eiji Kitamura

1980年代のジャズは元気だった記憶がある。有名企業がスポンサーになった大きなジャズフェスティバルが各地で開かれ、俄かジャズファンを含め多くの聴衆に賑わった。
海外のレーベルはメジャーだけでなく多くのマニアックなレーベルも生まれた。日本のレコード会社も日本のミュージシャンだけでなく、海外のミュージシャンのアルバム制作を数多く行った。そして日本のミュージシャンと海外ミュージシャンの顔合わせアルバム制作も頻繁に行われた、30年前はそんな時代であった。

コンコルドのカールジェファーソンも日本贔屓でメンバーを引き連れて何度も来日している。反対に日本のミュージシャンをコンコルドジャズフェスティバルに招き、日米相互の交流に一役かっていた。

1980年のコンコルドジャズフェスティバルに日本から招かれたのは北村英治。その時のステージの模様は”Woody Herman Presents”というアルバムに収められている。北村英治はモンタレージャズフェスティバルにはそれ以前から常連で出場していたが、これでアメリカのファンの前に登場する機会がさらに増えた。特に、コンコルドのファンは北村英治のプレーとは相性が良く温かい歓待を受けたという。
コンコルドフェスティバルの終了後、せっかくの共演の機会がフェスティバルだけではもったいないということで、ステージとは別にコンコルドのメンバー達とアルバムを作った。それが前作のアルバム”Swing Eiji”だった

モダンジャズの時代になって、クラリネット自体のプレーヤーが少なくなったが、その少ないプレーヤーも多くはサックスとの持ち替え、クラリネット一本で勝負するプレーヤーはトラッドジャズを除くと極わずかとなっていた。
北村英治はその中の一人。基本はグッドマンスタイルのスイング系であるが、モダン系のプレーヤーとの共演もこなす自分のスタイルを持つ第一人者、晩年はクラッシクの奏法も改めて学び直して、まさにオールラウンドプレヤーとなった。今でも自分のグループでの演奏に加え、よく大きなコンサートにもゲストで出演し元気で活躍しているのは素晴らしいことだ。

翌年1981年も北村英治はコンコルドジャズフェスティバルに招かれる。その渡米に合わせてジェファーソンの協力で同様なセッションがセットされた。プロデュースは北村英治自身、ジェファーソンは総合プロデューサーで一歩引いた形となった。
今回のセッションの目玉はなんといってピアノにデディーウィルソンの参加、そしてヴァイブにカルジェイダーが参加していること。

テディーウィルソンはコンコルドでの録音は無かったと思うので、このセッションの為に特にアサインされたのであろう。北村英治とは以前にも何度も共演があるので、久々の再会となる。それに、コンコルドではラテン系のプレーが多かったカルジェイダーの参加も嬉しい。
ジェイダーは翌年不幸にも他界してしまうので、結果的にこのセッションへの参加もジェイダーの何か思い出を残す形になってしまった。ウイルソンもこの頃はレコーディングの機会も少なく、晩年の数少ない録音であり北村英治とも最後の録音になってしまった。
という意味では、主役はあくまでも北村英治ではあるが、ウイルソンとジェイダーという2人の巨人を見送ったアルバムということにもなる。

グッドマンでお馴染みのアヴァロンに始まり、スタンダードのミスティーと続く、北村のオリジナル「オールドラッズ」を挟んで、スターダストと、皆それぞれが自分のプレーの集合体だが、何故か北村英治のクラリネットとウイルソンのピアノを中心に一体感がある。
B面に移るとトラッドジャズで良く演奏される「日の出を待っている」だが、これも英治節で料理、クラリネットの低音の魅力とベースをクローズアップしたエリントンナンバーに続き、サムワントューウォッチオーバーミーではアネスティンアンダーソンのボーカルが花を添える。

コンコルドには他にも日本のミュージシャンの為にセットされた何枚かのアルバムがあるが、コンコルドと日本での販売権を持っていた東芝EMIとの相互乗り入れのコラボの成果である。このアルバムも日本で先行して発売されたが、一年遅れでコンコルドの通常のカタログにもラインナップされた。

昨今の日本企業と海外との関係となると、アライアンスというより対立色が強い。ビジネス競争の中ではどうしても喰うか食われるかになるし、一見握手をしているように見えても、目先のお金が優先してしまう付き合いになる。お互いで何かを育てようという話にはなりにくいものだ。

今から30年前、このような形で文化交流の垣根はせっかく低くなったのに、その後はあまり進展がないようだ。それを支えるスポンサーが減ったのも原因だが、そもそも当時は音楽自体がライブにしてもレコードにしてもビジネスになっていた。
最近では音楽がビジネスにならないという。実は、こちらの方が問題なのかもしれない。ビジネスにならないからファンが少なくなったのか、ファンが少なくなったのでビジネスにならないのか?いずれにしても、お金が回らないと何も続かないという世の中は如何なものか?

1. Avalon                      Al Johnson 3:56
2. Misty                      Eroll Garner 4:55
3. Old Lads                    Eiji KItamura 5:20
4. Stardust          Hoagy Carmichael / Mitchell Parish 4:47
5. The World Is Waiting for the Sunrise        Ernest Seitz 3:32
6. Satin Doll    Duke Ellington / Johnny Mercer / Billy Strayhorn 6:35
7. Someone to Watch Over Me   George Gershwin / Ira Gershwin 5:13
8. I Wanna Go Home                   Al Cohn 3:55

Eiji Kitamura (cl)
Teddy Wilson (p)
Cal Tjader (vib)
Eddie Duran (g)
Bob Maize (b)
Jake Hanna (ds)
Ernestine Anderson (vol)

Produced by Eiji Kitamura & Yoishiro Kikuchi
Recording Engineer : Phil Edwards
Recorded at Coast Recorders, San Francisco, August 1981

Originally released by Toshiba EMI and released by Concord on Concord CJ-217

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