A DAY IN THE LIFE

好きなゴルフと古いLPやCDの棚卸しをしながらのJAZZの話題を中心に。

有能な新人達に囲まれて、ファーマーのプレーも一段と力が入っているような・・・

2014-08-30 | CONCORD
Warm Valley / Art Farmer Quartet

先日、Otonowaというグループを率いて、東北の支援のコンサートを行うためにAkira Tanaという日系のドラマーが来日した。あまり有名ではないと思うが、なかなかの実力者である。彼らのアルバムとライブの模様は先日紹介した。

「ピアノの詩人」として最近人気が出ているフレッドハーシュというバラードプレーの上手いピアニストがいる。今年来日したので、そのピアノの魅力を生で聴いた方も多いと思う。

友達づきあいをしていると、決して先頭に立って活動することもなく、あまり目立たないがどこにでも顔を出してしかるべき役割をきちんと果たすタイプの人物に出会うことがある。ベースのレイドラモンドはそんなタイプのプレーヤーかもしれない。

このアルバムのリズム隊はこの3人。今考えると異色の組み合わせかもしれないが、まだ、彼らがデビューしたばかりのニューヨーク、1982年9月、今から32年前のセッションだ
そしてリーダーは、古いジャズファンであれば知らぬ人はいないと思うが、トランペットのアートファーマー。

ファーマーは40年代から活動を始めたが、クインシージョーンズやクリフォードブラウンなどと一緒にライオネルハンプトンのバンドに加わった頃から頭角を表し、ハードバップ全盛期はホレスシルバーやベニーゴルソンとのジャズデットでなくてはならない存在であった。
その後ジェリーマリガンのグループに加わったり、ジムホールとコンビを組んだり、決して自らが主役ではないがメインストリームを歩み続けた。

そして、このアートファーマーもアメリカでの活動に見切りをつけて、ヨーロッパに渡った一人だ。68年にウィーンに拠点を移したが、ヨーロッパの滞在は長く続いた。70年代はアルバムこそアメリカで作った(実は日本で監修したもの多かったように思う)ものの、拠点はあくまでもヨーロッパだった。
そのファーマーが、80年代に入るとアメリカで再び頻繁に活動するようになる。自分を育ててくれた母国に何か恩返しをと思ったのかもしれない。

Concordのアルバムはそのような時の録音だ。前作のWork of Artに続いての2作目になるが、「再びアメリカでやるぞ」という意気込みが感じられる。

その最大の理由が、よくある旧友達との再開セッションではなく、若手を登用したアルバム作りだった。
この時50歳を超えたファーマーに対して、他のメンバーはまだ20代。年回りからいえば親子の関係になるし、仕事の世界では、親分が自ら新人教育を行うようなものだ。
今からみれば後の実力者を抜擢したことになるが、当時では多くいる新人達の中からの抜擢、見る目があったということだろう。

このアルバムでは、ファーマーはすべてフリューゲルホーンでの演奏。というより、しばらく前からプレーはフリューゲルホーン一本に絞っていたので、ただでさえソフトなタッチのプレーは一層丸みを帯びている。しかし、演奏そのものは何故か鋭さを増しているような気がする。

それは、曲選びにも現れている。
まずは、一曲目のパーカーのMoose the Mooche。
若者たちに、「新しいことにチャレンジするのは大事だが、バップの伝統は忘れるな」と檄を飛ばしているようにも感じる。

かと思えば、次のハーシュのオリジナルAnd Now There's Youでは、ミュートプレーでのハーシュとのピアノとの絡み。「バラードというのはこう演奏するのだ」と言っているようだ。これがハーシュのバラードプレーの原点かもしれない。

ドラムのAkira TanaにはThree Little Wordsで、ドラムとの掛け合いの極意を伝授。
7曲それぞれに若者達には意味のある曲の選定と演奏だったように思える。

初めてこのアルバムを手にとった30年近く前、無名のサイドメンにはあまり注意を払うことはなかった。ベテラン達の復活の場と思われていたConcordが、実はニューヨーク録音のアルバムではベテランの力を借りて着実に新人の発掘役を果たしていたことの証である。同じコンコルドでマルサリスやジェームスウイリアムスを育てたアートブレーキーのジャズメッセンジャーズがお手本になったのかもしれない。
そう思って聴くと、決して名盤ではなくとも愛着が沸くものだ。

この時からすでに30年以上が経って世の中はすっかり代替わりした。当時若手だった3人はすでに60歳を過ぎた大ベテラン、ファーマーからの教えを若手に引き継いでいることだろう。



1. Moose the Mooche          Charlie Parker 4:31
2. And Now There's You          Fred Hersch 5:09
3. Three Little Words     Bert Kalmar / Harry Ruby 4:49
4. Eclypso               Tommy Flanagan 5:28
5. Sad to Say            Benny Golson 5:34
6. Upper Manhattan Medical Group   Billy Strayhorn 5:41
7. Warm Valley             Duke Ellington 7:52

Art Farmer (flh)
Fred Hersch (p)
Ray Drummond (b)
Akira Tana (ds)

Produced by Carl Jefferson
Recording Engineer : Ed Trabanco
Recorded in New York, September 1982

Orijiginally released on Concord CJ-212




Warm Valley
Art Farmer
Concord Jazz
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