A DAY IN THE LIFE

好きなゴルフと古いLPやCDの棚卸しをしながらのJAZZの話題を中心に。

家のゴミと思った中にも宝物が・・・

2014-08-20 | Thad Jones & Mel Lewis & VJO
One More Time / Terry Gibbs’s Dream Band Vol.6


歴史を語る時に古文書の存在が大きい。歴史小説を読んでも、あるいは今流行りの官兵衛をみても、よく元になる史実が詳細に残っているものだと感心する。このような古文書はどこかに保管されていたのだろう。今でこそ博物館にあっても、それがあったのは寺や神社だけでなく、一般の家庭に先祖代々引き継がれているものの中から見つかることも多い。

一昨年親を亡くして家の整理もまだ終わっていないが、確かに思い出のある物も多く、中には家の歴史になるものもあるので簡単には捨てられない。
一方で、いま時代の価値観は「断捨離」。親や先祖のものだけではなく、自分自身の身の回りも何も無い方がスマートな暮らし方のようだ。確かに、その日を楽しく快適に過ごすだけであれば、それは理想だろう。しかし、それならば何も家を持たずにホテル暮しをすればいいのにと思ってしまう。
この「断捨離文化」が本来残さなければならない歴史と文化も捨て去ってしまっているように思えてならない。もう一回世代替わりをすると、歴史を持たない民族が生まれる。恐ろしいことだ。

こんなことを考えると、自分はどうもゴミ屋敷にならない程度に物に囲まれた生活が合っているようだ。これはどうやら一生変わることが無さそうなので、家の大整理は息子に引き継ぐことになるかもしれない。

ところが、天変地異が起こるとそうそう悠長な事は言っていられない。今日も大きな災害があったが、津波や火災で全てを失えば諦めもつくが、引越しをしなければならないとか、家を修理しなければならない事態に陥ると最小限の整理は必要になる。自分は、引越は何度もやったが結局一度も開けずのダンボールが行き来することも。

1994年1月17日(これも117だ)ロスアンジェルスで大地震が起こった。これで被害を受けたのはかなり広範囲に及んだそうだ。ロスといえばジャズプレーヤーも多く住んでいる所、被害を受けたミュージシャンも何人もいたと思うが、その一人がヴァイブ奏者のテリーギブスであった。
自宅が大きな被害を受け、修理のために荷物をすべて一旦家の外に出さなくてはならなくなった。8ヶ月後にすべての物を元の位置に戻したつもりになっていたのだが・・・。
2001年8月になって、クローゼットの中に見知らぬダンボールを発見。中身を改めると、何と録音済のオープンリールのテープが25箱。本人もすっかり存在を忘れていた30年以上前の録音の数々だった。

どこの家にも何かこのような宝物が出てくる可能性があるので、簡単に物を捨てられないということになる。

早速、聴いてみると何とそれらは、ギブスが華々しくドリームバンドを率いていた頃のライブの録音がザクザク。録音状態も非常に良く、それらの演奏がCD時代になってから陽の目を見ることになった。
それがこのアルバムだ。それまでも、自分が残した録音からアルバムを出してきたが、さらに新たなソースを発見したということになった。

新たな未発表録音やプライベート録音が続々見つかって世にはでてくるので、物珍しさから興味を惹くが、名盤、名演というのにはなかなか当たらない。まあ宝探しの楽しみと思えば、好きなミュージシャンの思わぬ発掘品も見つかるものだ。

このギブスのドリームバンドの中身はいうと、当時の西海岸在住のオールスターバンド。
ウェストコーストジャズが下火になった中、地元でホットな演奏を繰り広げていたバンドの一つだ。
そのライブ録音となると少しは興味が沸く。ファンの歓迎を受けて、2枚目、3枚目・・と続いていたが、これが2002年になってVol.6となってリリースされた。

このアルバムには1959年3月と11月の2つのセットが収められ、メンバーも若干入れ替わっているがどちらもスインギーなプレー。またトップミュージシャンを起用に若手アレンジャーのスコアが提供されている。同じジャンプナンバーでも、同じヴァイブをリーダーとしたハンプトンのバンドと較べるとはるかに中身があるし、スマートな演奏だ。

ラストのジャンピングアットザウッドサイドではテナーバトルが素晴らしい。その後、アレンジャーとして活動がメインになったビルホルマンのホットなプレーが聴ける。
盛り上がったところで、ギブスの2本指のピアノプレーも。

おまけに、先日メイナードファーガソンで紹介したアイリーンクラールのボーカルが3曲。どうやら客席にいたのを引っ張り出しての飛び入り参加らしく、スコアが用意されていなかったようだ。
そこは、プロの集まり、彼女が曲とキーを言うとピアノがさりげなくイントロを務めると、ベースとドラムが加わる。様子を見ていたギブスも2コーラスから参加、最後はバンド全体で即興のアンサンブルも。ライブの楽しいところだ。


このアルバムをリリースするにあたって、テリーギブスはドリームバンドに貢献した特に3人にこのアルバムを捧げたいと言っている。

一人は盟友コンテカンドリ。素晴らしいトランペットプレーヤーであるだけでなく、無二の親友で兄弟のような関係。いつも一緒にいてくれただけでなく、素晴らしいプレーを随所で聴かせてくれる。
素晴らしいリーダーには優れた女房役が必要。ギブスにとってはカンドリがその役割であったようだ。

そして次がメルルイス。
バディリッチとは対局を為すドラミングだが、2人はバンドをスイングさせる名手だと褒め上げている。ギブスはメルを”The Tailor”と呼んでいた。スインギーな演奏のタイムキーピング役だけでなく、ソロやアンサンブルを実にうまく縫い合わせていってくれる、ドリームバンドに不可欠な存在であった。

西海岸で活躍していたメルルイスが、東海岸に活動拠点を移したのはジェリーマリガンのコンサートジャズバンドに加わったのがきっかけという。この59年から60年にかけてメルルイスが参加したアルバムは非常に多い。どうやら、この辺りが西海岸での最後のプレーになってくる。
メルルイスにとって、ビッグバンドのドラミングはケントンで鍛えられたと思っていたが、サドメルのドラミングの原点はこのドリームバンドの演奏にあるのかもしれない。

最後に、この素晴らしい録音をしてくれたWally Heider.。
やけにいい音だと思ったらやはりハイダーであった。ギブスが言うように、40年後に「昨日録った録音」といってもいい程のクオリティーだ。さすが、ライブレコーディングの魔術師。このアルバムの価値を高めるのに一役かっている。

このテリーギブスが亡くなったという話はまだ聞いていない。流石に現役は退いたとは思うが・・・。
晩年になって、ファンから「ドリームバンドはまたレコーディングしないのか?」という問いかけは良く出るが、返事はいつも「やらない」であった。

ギブスにとっては、59年から61年にかけてのこのバンドが「ドリームバンド」。まさに、この録音そのものが。
メンバーの何人かは残っていても、このメンバーでなくては駄目だということのようだ。ベニーグッドマンのバンドといえば、ジーンクルーパ、テディウィルソン、そしてハンプトンがいなければダメなのと同じようにと例えている。ライブはやっても、それはメモリアルドリームバンドなのだろう。

確かに、これまでの人生を振り返ると、誰もが自分にとってドリームチームといえるメンバーとやった仕事(遊び)は一生忘れることができないものだ。これがその人にとっての宝物だ。



1. The Fuz                    Al Cohn 4:20
2. The Subtle Sermon              Sy Johnson 9:13
3. Opus On Sid                 Garris / Sy Oliver 9:03
4. Smoke Gets in Your Eye       Otto Harbach / Jerome Kern 3:26
5. Slittin' Sam (The Shaychet Man)            Al Epstein 3:18
6. Prelude to a Kis   Duke Ellington / Irving Gordon / Irving Mills 2:58
7. Flying Home   Benny Goodman / Lionel Hampton / Sydney Robin 11:27
8. I Remember You      Johnny Mercer / Victor Schertzinger 2:41
9. The Fat Man T                  erry Gibbs 7:16
10. Just Plain Meyer              Bob Brookmeyer 4:01
11. Sometimes I'm Happy  Clifford Grey / Leo Robin / Vincent Youmans 3:07
12. Moonlight in Vermont     John Blackburn / Karl Suessdorf 3:12
13. Lover, Come Back to Me Oscar Hammerstein II / Sigmund Romberg 2:07
14. Jumpin' at the Woodside              Count Basie 10:53

Terry Gibbs Producer, Vibraphone

#1,3,4,8,10,and 14

Al Porcino (tp)
Conte Candoli (tp)
Ray Triscari (tp)
Stu Williamson (tp)

Bob Enevoldsen (tb)
Vern Friley (tb)
Joe Cadena (tb)

Joe Maini (as,ts)
Charlie Kennedy (as)
Med Flory (ts,arr)
Bill Holman (ts)
Jack Schwartz (bs)

Pete Jolly (p)
Max Bennett (b)
Mel Lewis (ds)

# 2,5,7,8,9,11,12,and 13

Conte Candoli (tp)
Stu Williamson (tp)
John Audino (tp)
Lee Katzman (tp)

Bill Smiley (tb)
Bob Burgess (tb)
Vern Friley (tb)

Joe Maini (as,ts)
Charlie Kennedy (as)
Bill Perkins (ts)
Med Flory (ts,arr)
Jack Schwartz (bs)
Benny Aronov (p)
Lou Levy (p)
Buddy Clark (b)
Mel Lewis (ds)

Irene Kral (Vocals)

Al Cohn Arranger
Manny Albam Arranger
Bob Brookmeyer Arranger
Wes Hensel Arranger
Sydney Johnson Arranger
Marty Paich Arranger

Wally Heider Engineer

Recorded live at the Seville and Sundown, Hollywood, March & November, 1959


One More Time 6
Terry Gibbs
Contemporary
コメント (1)
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