A DAY IN THE LIFE

好きなゴルフと古いLPやCDの棚卸しをしながらのJAZZの話題を中心に。

世代を超えたコラボレーション、これが伝統の伝承には不可欠かも・・・・

2014-05-25 | CONCORD


Cookin' on All Burners / The Tal Farlow Quartet

4口のガスコンロにすべて火がついている写真のジャケット。レコードのジャケットとしては珍しいデザインだ。そしてタイトルもその絵の意図を汲んでいる。プロデューサーのジェファーソンとしては、よほどこの4人の演奏の印象をアピールしたかったのだろう。

自分も時々は台所に立つことはある。学生時代一人暮らしをしたこともあり、昔はキャンプにも良く行ったので、料理は嫌いな方ではない。しかし、普段やり慣れている訳でもないので、けっして段取りは上手くいかない。ひとつずつコツコツと片づけていくので、同時進行でいくつかの料理を手際よくという訳にはいかない。コンロも料理の出来上がりをイメージしながらすべてを同時に駆使してという具合にはなかなかいかないものだ。

前回紹介したエロルガーナーのトリオはガーナーが主役。ドラムとベースはあくまでも脇役。無いと寂しいが決して表に出る事も無く、三人が丁々発止にやり合う訳でもない。あくまでもガーナーのピアノがメイン。ある種刺身と刺身のツマの関係だろう。
一方で、同じトリオでもビルエバンストリオは3人が対等に向き合う。それぞれが主役になるし脇役にもなる、そして三位一体のコラボレーションが新たなサウンドを引き出す。
さて、このタルファーロウはというと、デビュー当時はレッドノーボのグループの一員であった。その後は自らのトリオやカルテット、どうしてもファーロウのギターが主役の演奏に聴こえる。

ジャケットのイメージからはこのアルバムでは、そのファーロウが4人揃っての燃え盛る演奏を予見させるが。果たして、それまでの演奏とは何が違うのか?
実は、このアルバムのセールスポイントのひとつは、主役タルファーロウとピアノの新人ジェイムスウイリアムの共演だ。

コンコルドで復帰後のファーロウのアルバムは、自らのトリオ、カルテットの演奏ではレイブラウンや、ハンクジョーンズとの顔合わせも実現している。しかし彼らは主役ではなく脇役としても名プレーヤー達だ。しかし並の脇役ではない、ファーロウとのプレーでも名コラボを生んでいた。
コンコルドジャズフェスティバルでのライブセッションではレッドノーボとの再会も果たした
この新人ウィリアムスがベテランファーロウとどのような演奏をするかますます興味が湧く。

このウィリアムスはアートブレイキーのグループで世に知られるようになり、コンコルドでは自らのアルバムも制作されるようになっていた。そんな時期での共演だ。
ブレイキーのグループではあのウィントンマルサリスとも一緒にプレーをした。マルサリスといえば、ブレイキー御大の元で若手でありながら古き良き伝統を踏まえた演奏をし、新伝承派のリーダー格となっていった。彼らはブレイキーをはじめとしてベテランとの共演で多くを学びながらその後成長したのであろう。
世代間の伝統と技術の伝承は何の世界でも重要だと思う。とかく新しいことを推進しようとすると過去を否定し、新しい側面だけを前面に出そうとしがちだ。しかし、新しいと言っても一時の物珍しさで興味を惹いてもそのようなものは長続きしない。

今回の新人とベテランの共演は見事に噛み合っている。ウィリアムスのピアノもすでに新人の域を脱し、ベテランファーロウを相手にしても臆することなく彼のプレーの特徴が良く出ている。ファーロウの方も、このウィリアムのプレーに刺激されてか饒舌だ。
演奏する曲はスタンダードばかり、それも名曲といわれる曲が並ぶ。どの曲も他の名演・名唱が頭に浮かぶが、この2人の演奏も記憶に残る演奏に加わりそうなものが多い。

このような新旧の顔合わせの積み重ねによって伝統が伝承されていくのを新ためて実感する。それにつけても、今の世の中で新旧世代の交わりが少なくなっているのが気に掛かる。家族だけでなく世の中全体でも。同じ世代の仲間でつるむのもよいが、自分は機会あるごとに色々な世代と接点を持つように心がけている。この歳になっても先輩から多くを学ぶ事は多い、反対に若者にも何かを伝えなければとは思い説教はよくするが、なかなか・・・・。若者には変な親父と思われているかもしれない。



1. You'd Be So Nice to Come Home To          Cole Porter 3:29
2. If I Should Lose You         Ralph Rainger / Leo Robin 5:00
3. I Wished on the Moon       Dorothy Parker / Ralph Rainger 5:23
4. I've Got the World on a String      Harold Arlen / Ted Koehler 6:23
5. Love Letters             Edward Heyman / Victor Young 3:58
6. Why Shouldn't I?                    Cole Porter 3:09
7. Lullaby of the Leaves         Bernice Petkere / Joe Young 5:40
8. Just Friends              John Klenner / Sam M. Lewis 3:49
9. I Thought About You         James Van Heusen / Johnny Mercer 4:21

Tal Farlow (g)
James Williams (p)
Gary Mazzaroppi (b)
Vinnie Johnson (ds)

Produced by Carl Jefferson
Engineer : Ed Trabanco

Recorded at Soundmixers, New York, August 1982
Originally released on Concord CJ-204 (所有盤は東芝EMIの国内盤)


Cookin on All Burners
Tal Farlow
Concord Records
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